業界人が語る「最終回まで見る/もう見ない」春ドラマ6選。「ベタすぎる導入にガッカリ」の声も
◆実力派俳優の演技合戦に引き込まれる『田鎖ブラザーズ』
続いて、ドラマ制作会社で勤務する30代のディレクター・B氏にも本音を伺った。
「刑事役の兄・岡田将生と検視官役の弟・染谷将太がバディを組む『田鎖ブラザーズ』(TBS系、金曜午後10時〜)が面白いですね。
同作は、両親を殺害された兄弟が時効成立後も真犯人を追い続けるという完全オリジナルのクライムサスペンス。
凶悪事件に対峙しながら過去の事件にも迫っていくという構成がスリリングなうえに、スローテンポで話が進んでいくので映画のような緊張感がある。
何よりも、岡田さんと染谷さんの演技合戦が素晴らしい。二人の間に漂うヒリヒリとした緊張感と深い絆を感じさせる繊細な演技やセリフ回しは圧巻。あまり視聴率は芳しくない(初回5.4%)ですが、ジワジワと人気が出てくるでしょう」
同作はSNSでの考察も盛り上がってきており、今後大ハネする可能性がありそうだ。
◆ドキドキやワクワクが足りない『時すでにおスシ!?』
また、B氏は見たくない作品も率直に教えてくれた。
「永作博美さん主演で、松山ケンイチさんが共演する『時すでにおスシ!?』(TBS系、火曜午後10時〜)は期待外れでした。
子育てを終えた50歳の主婦が、第二の人生として『鮨アカデミー』に入学するというオリジナル脚本のドラマですが、鮨職人を目指したきっかけが唐突すぎて、ストーリーに入っていくことができなかった。
また、ときめくような展開や大きなトラブルも起きず、ゆったりと進むので火曜10時枠らしいドキドキやワクワクを味わえない。
脚本を担当する若手のホープ・兵藤るりさんらしい繊細なセリフが効果的に使われておらず、コメディとしてもヒューマンドラマとしても中途半端な印象を受けました。
もしかすると兵藤さんでない作家に任せたほうが良かったのかも……」
◆キャラクターが秀逸な『月夜行路 -答えは名作の中に-』
最後に、ラブストーリーを数多く手掛ける20代の女性脚本家・C氏にも見たいドラマ、見たくないドラマを聞いた。
「波瑠さんと麻生久美子さんがダブル主演を務める『月夜行路 -答えは名作の中に-』(日本テレビ系、水曜午後10時〜)を面白く見ています。
同作は、波瑠さん演じるトランスジェンダーの文学オタク・ルナと麻生久美子さん演じる平凡な専業主婦の涼子が、名作文学になぞらえた事件を解決していくというストーリー。
あくまで事件解決までのミステリー部分は軽快に描き、波瑠さんと麻生久美子さんの掛け合いや関係性の面白さに重点を置いており、ライトな視聴者も楽しめるように作っている。
さすが、数多くのヒット作を書いてきた清水友佳子さんの脚本だなと思いました。
特に波瑠さん演じるルナの文学オタクの振る舞いや口調の解像度が高く、『やらされている』感じがない。彼女にとってハマり役になるのでは?麻生さんも普通の主婦を自然体で演じているし、キャラクターの魅力が詰まった一作ですね」
◆エッジの利いた脚本になっていない『GIFT』
そんなC氏が「もう見たくない」と感じた春ドラマは?
「期待を裏切られたなと感じたのは、堤真一さん主演の日曜劇場『GIFT』(TBS系、日曜午後9時〜)ですね。
車いすラグビーを題材にしたオリジナル作品で、脚本はヒットドラマ『サンクチュアリ -聖域-』(Netflix)で話題を呼んだ金沢知樹さん。
放送前の期待値は高かったのですが、変わり者の学者がチームのコーチとして突然参加するという、ベタすぎる導入にガッカリしました。
現状、金沢さんの脚本らしいエッジの効いた面白さやリアルで苦々しい人間描写が感じられず、無難な群像劇になってしまっているところも残念。地上波のコンプライアンスの壁に阻まれて、持ち味が活かしきれていないのかもしれません。
車椅子生活を余儀なくされた選手の葛藤や過去を丁寧に描くことができれば勝機はあると思いますが、感動路線になりすぎても良くないし……。人気枠の難しさを痛感しています」
伝統ある日曜劇場の重みに縛られるあまり、王道のストーリーに落ち着いてしまっている点が評価を下げているようだ。
ここまで、現場の第一線で働く業界人が選ぶ「見たい・見たくない春ドラマ」を紹介してきた。しかし、まだ作品は序盤を終えたばかり――。
中盤話以降で意外な伏線回収や展開が大きく変わっていくドラマも必ずあるはずなので、飽きずに視聴することをおススメしたい。
<取材・文/木田トウセイ>
【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。
