《友情も有料化?》自慢話に1時間1万円。友達にさえ気を遣う現代人が「レンタル彼女」を頼る切実な訳
「友達に自慢すると嫌われる、でも誰かに聞いてほしい」。そんな抑圧された現代人の駆け込み寺となっているのが、レンタル彼女のよもぎちゃんです。利用者の半分は、意外にも女性。「1時間1万円」を払ってまで、彼女たちが手に入れたいのは、気を遣わず本音を吐き出せる時間でした。
【写真】女性の依頼も多い!レンタル彼女の「知られざる」現場写真(7枚目/全10枚)
リアルな友達には気を遣って話せない「本音」
── これまで10年間で4000人以上の「彼女」を演じてきた「レンタル彼女」よもぎちゃん。そもそも「レンタル彼女」って、どんな存在なのでしょうか。
よもぎちゃん:ご依頼いただいた方の要望に合わせ、デートをしたり話を聞いたりします。ただ、「彼女」といっても私の場合ちょっと特殊で、実際に依頼いただくのは男女半々くらい。年代は18歳から60代までと幅広く、男性は30~60代、女性は私と同年代のアラサーの方が多いです。
料金は、最初の60分は自由料金にしています。「1円以上ならいくらでも、あなたが決めてください」というスタイルです。すごく迷われる方が多いので「迷ったら1時間1万円でお願いします」と目安はお伝えしています。1時間を超えたら30分5000円。デート代や食事代は依頼者さんに負担していただきます。
──「レンタル彼女」なので、依頼者は男性が大半だと思っていました。どのような依頼が多いのですか?
よもぎちゃん:男性も女性も、圧倒的に多いのが「話を聞いてほしい」というご依頼です。しかも、「この話を聞いてほしいからレンタルしたい」と具体的なトピックが決まっていることがほとんど。恋愛のこと、仕事のこと、親御さんとうまくいかない悩み、お子さんの悩み、嫁姑問題…と話題はさまざまです。
特に女性の方に多いのが「恋愛相談や自慢話、のろけ話を聞いてほしい」というご依頼ですね。「リアルの友達には気を遣って話せないことも、お金を払っているから気兼ねなく話せる」と言っていただくことが多いです。
男性の中には単なるデートではなく、恋愛やコミュニケーションが苦手な方や、女性に対して「怖い」と思っている方が練習に来てくださるケースも多いです。
あとは何かハンデを持っていらっしゃる方が、会話のリハビリとして利用してくださることもあります。
── まるでカウンセラーみたいですね。
よもぎちゃん:今の時代、気軽に話をする場や相手が不足しているのでしょうか。だから、カウンセラーの「ジェネリック」みたいな感覚で、「話を聞いてほしい」と、私のところに辿り着くのかなと思っています。
私は「話す」ことも好きですが、どちらかというと「聴き出す」ほうが得意なんです。相手が話したいことを引き出して、一緒に整理してまとめる。それが私の真骨頂だと思っています。質問をしていくうちに、依頼者さん自身も気づいていなかった本音を引き出せることがよくあって、そういうときは「よっしゃ!」とひそかにガッツポーズをしています。
相手の欠点を指摘するのは消費カロリーが高いから
── 依頼者から恋愛感情を抱かれたり、怖い目に遭わされたりすることはないのでしょうか。
よもぎちゃん:さいわい、今のところ怖い思いをしたことはないですね。依頼いただく方とは必ず人目のあるところでお会いしますし、性的なことはもちろん、私が嫌なことはしません。
SNSやYouTubeで「依頼者さんと恋愛関係になることはありません」と公言もしているので、それを理解したうえで依頼してくださる方がほとんど。むしろ「線引きがはっきりしているから利用しやすい」と言っていただくことが多いです。リアルで同じコミュニティの女性を食事などに誘うと、そこに「意味」が生まれてしまう可能性があるけれど、私ならその心配はないんですよね。
いかにもモテそうなタイプの方が「あと腐れなく、空き時間にサクっと飲みたい」という気分のときに利用してくださることもあります。
── ほかに、意外なニーズはありますか。
よもぎちゃん:これはコミュニケーションが苦手な男性に多いのですが、「一緒に洋服を買いに行ってほしい」というご依頼ですね。ひとりでは服を選べないし、店員さんに話しかけられるのもイヤ。試着をした服が気に入らなくても断れない。でも、私相手になら「これ、微妙」って本心を言えるんですよね。そして私が、代わりに店員さんとやりとりをする。いわば「コミュニケーションの代行者」ですね。
婚活サイトやマッチングアプリを利用している男性から、「デートの下見や練習をしたい」というご依頼をいただくこともよくあります。相手の女性からいきなりブロックされてしまうなど、なかなかうまくいかない男性からは「デートの採点をしてほしい」という要望も多いです。「ブロックされる理由を聞いて、納得したい」「悪いところを指摘してもらって、改善したい」と思われるようです。
そういう方には、「眉毛がボサボサ」とか「さすがにトークが長い」とか、正直に感想を伝えるとすごく喜ばれます。この間、「言いづらいんですけど、頭頂部が薄くなっていることに気づいていますか」と指摘をしたら、びっくりされていました。正面から鏡を見ているだけでは気づきにくいんですよね。
── よほど親しい間柄でないと、なかなか言えないことですね。
よもぎちゃん:人に言いづらいことを指摘するのって、すごくこちらの消費カロリーの高い行為ですよね。なので、私は通常のコースとは別に「デート採点レンタル」というオプションを用意しています。このオプションを申し込む時点で依頼者さんの覚悟が決まっているから、こちらも指摘しやすいですね。
所属している結婚相談所でも同様の仕事をしています。会員さんと模擬デートをして、気づいた点をフィードバックします。私とデートの練習をした方から、「うまくいきました」という報告をいただくと嬉しいですね。
自分の「得意」と時代の「ニーズ」が一致した
── 不特定多数の人の話を受け止めることで、ストレスがたまることはないですか。どのようにリフレッシュされているのでしょうか。
よもぎちゃん:私にとって、依頼者の話を聞くことはストレスではないですね。どの方のお話もおもしろがって聞いています。苦手な朝の時間帯は仕事を入れないようにしていますし、依頼者さんにもイヤなことはイヤとお伝えしているから、楽しくお仕事ができています。
趣味は、トイレのピクトグラムの写真を集めることぐらいで…。依頼者さんといろいろなお店へ行くので、その先々でピクトグラムの写真を撮っています。
──ご自分の仕事について、どう思われますか?
よもぎちゃん:私に求められているのは、「友達には話せない自慢話やのろけ話を聞いてほしい」「関係構築をカットして恋愛気分を楽しみたい」「デートのダメ出しをしてほしい」といった、人間関係の煩わしさを省いたコミュニケーションなのかもしれません。私にとっては、どれも楽しい時間です。「好きなことを仕事にする」って、まさに私のことだと思うんです。自分の好きで得意なことと、世の中のニーズが一致している私は運がいいですよね。
取材・文:林優子 写真:よもぎちゃん

