在宅医療、もしもの時の希望どう伝える?「アドバンス・ケア・プランニング」の進め方【医師解説】
近年、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という考え方が広まりつつあります。ACPとは「患者さんが将来の医療やケアについて前もって考え、家族や医療従事者と話し合い、希望を共有しておく取り組み」のこと。在宅医療の現場では、患者さんの希望に沿った最適なケアを提供するために、このACPが非常に重要な役割を果たします。そこで、在宅医療でACPはどのように進めればよいのかや切り出し方などについて、医療法人明医研 ハーモニークリニックの中井秀一先生に解説してもらいました。
監修医師:
中井 秀一(ハーモニークリニック)
福島県立医科大学医学部卒業。その後、自治医科大学附属さいたま医療センターで初期研修を受け、自治医科大学附属病院でプライマリ・ケアと家庭医療学を学ぶ。2020年、医療法人明医研 ハーモニークリニックの院長となる。日本プライマリ・ケア連合学会新・家庭医療専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本専門医機構認定総合診療専門医、日本専門医機構総合診療専門研修特任指導医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医。現在、日本プライマリ・ケア連合学会埼玉県支部支部長も務める。
編集部
ACPはどのように進めればよいですか?
中井先生
まずは患者さん自身が「どこで、どのような医療を受けたいか」を考え、家族や信頼している人と共有することが一歩目です。その後、主治医や訪問看護師、ケアマネジャーなどの専門職とも相談しながら具体的な方針を決めていきます。
編集部
本人みずから発信するケースが多いのでしょうか?
中井先生
そんなことはありません。やはり、「ちょっとした変化」や「不可逆的な衰え」などは、本人よりも、周りのご家族がキャッチしやすいのではないでしょうか。家族の側から切り出すことも大切だと思います。
編集部
どのタイミングで話を切り出したらよいですか?
中井先生
できるだけ早い段階、病状が安定しているうちに話し合いを始めるのが理想です。なぜなら、病状が進行すると、本人の意思を確認するのが難しくなることもあるからです。
編集部
そういった話は切り出しにくいです。
中井先生
ACPについて話すとなったとき、「死の話=縁起が悪い」というイメージを持つ人もいますし、その気持ちもよくわかります。しかし、できるだけ先延ばしせず、「もしもの時のために考えておきたい」と伝えたり、ニュースやお知り合いの事例などをきっかけに話題を出してみたりすると、自然に話しやすくなります。ACPという言葉は、わかりにくいかもしれないため、厚生労働省は「人生会議」という言葉を打ち出しています。とはいえ、終末期を話すことが稀であった日本の文化に合った形を模索するのも大事かな、と私は感じています。
編集部
「日本の文化に合った形」とはどのようなものでしょうか?
中井先生
日本の「察する」文化、以心伝心を大事にするという文化に沿ったACPができたらよいと考えています。何気ない会話やテレビを見たときにふとこぼした言葉の中にも、その人の人生観が表れることがあります。そうした言葉を家族や理解者、医療従事者と共有することで、はっきりと意思表示をしなくても「こんなことを言っていたね」と、その人の考えをくみ取ることができます。日本ならではの価値観や思いやりを大切にしたACPのあり方があると思います。
※この記事はメディカルドックにて<「死の質を高める」ため生前に決めておくべきこととは? 在宅医療医師が教える話し合いの進め方>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
