原油不足リスクはホルムズ海峡封鎖だけでない…続発!船舶事故「千葉でタンカー座礁」ドローン現場撮

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事故を起こしたタンカーは昨年も

石油化学コンビナートが立ち並ぶ千葉県市原市の沿岸部。一台のタンカーが、陸との境にある消波ブロックに乗り上げていた。傾いた船体は衝突時の衝撃の大きさを物語る。周囲にはタンカーを沖へ離岸させようとタグボートが行き交うが、何もできずに丸一日以上その場に放置されていた。

「市原市の千種海岸付近でタンカーが座礁したのは4月7日の夜10時半ごろ。東京湾にいかりを下ろして停泊中、強風で約600m流されて波消しブロックに衝突したと海上保安本部に救助要請が入りました。乗組員6人にケガはありませんでした」(全国紙社会部記者)

当日は風が強く、現場では最大瞬間風速18mが吹いていた。周辺に住む住民が話す。

「春先にかけては風が強い日が多いのですが、この日は夜も戸がバタついていてよく眠れないぐらいでした。しかし、このあたりで大きなタンカーが座礁したとは聞いたことはなく、びっくりしました」

座礁したタンカーは宝伸丸。総トン数498トン、長さ約64mのケミカルタンカーだ。船舶運航管理会社の広報担当者が語る。

「この日は千葉港でケミカル製品を荷揚げし、さらなる荷揚げをするために指定された場所で待機していました。17時35分にいかりを下ろしたのですが強風で流され、乗組員が手段を尽くしたものの座礁。いかりを下ろした状態では船が流されることを想定していないため、見張りは置いていなかったと聞いています。船は現在、すでに離岸しています」

不運な事故だが、実は宝伸丸は昨年も衝突事故を起こしている。原因は航海士の「居眠り」だった。

運輸安全委員会の調査報告書によると、’25年1月4日の午後2時10分ごろ、神奈川県横須賀市追浜地区の防波堤に宝伸丸が衝突して船体の一部を損傷した。このときの天気は晴れで風も弱く視界は良好。自動操舵で航行していたが航海士は事故当日、2時間程度しか寝ていなかったこともあり、操舵スタンドにもたれた状態で居眠りしてしまったという。

船には、居眠りを検知する警報装置が付いていたが作動しなかった。目が覚めた航海士が慌てて手動操舵に切り替えるも、対応しきれず衝突したのだ。

「深刻な人手不足」

2年続けて海難事故を起こしたことに宝伸丸のオーナー会社の担当者は、筆者の取材に「多くの方にご迷惑をおかけしていることを申し訳なく思っている」と話した。

貨物船の事故が相次いでいる。今年2月には三重県沖で貨物船と遊漁船が衝突し2人が死亡、10人がケガを負った。3月には青森県沖で貨物船と漁船が衝突し、転覆した漁船の乗組員4人が亡くなっている。こうした事故の背景には、人手不足やそれに伴う労働環境の悪化が関係しているとの見方もある。

海運会社のスタッフが説明する。

「この業界では深刻な人手不足が続き、有効求人倍率は4倍から5倍の超売り手市場。いまや乗組員の半数以上が50歳超です。慢性的な人手不足による労働環境の悪化から事故を起こすリスクが高まっているのです」

国際海運協会で最大規模を誇るBIMCO(ボルチック国際海運協議会)は報告書の中で、船舶運航の指揮監督を行う認定士官の数は世界で約9万人不足すると指摘するなど、今や船員不足の解消は世界的な課題だ。

100%近い原油を輸入に頼っている日本は他人事ではない。石油タンカーで人手不足による大事故が起きれば、深刻な原油不足や価格急騰に見舞われる。先行きの見通せない米国とイランの関係によっては、石油のさらなる供給リスクが懸念されるが、こうした不安要素はホルムズ海峡封鎖だけではないのだ。

取材・文・撮影:形山昌由(ジャーナリスト)