Tシャツに野球帽、ハーフパンツを履いて手には最新iPhone…なぜ韓国で「ヨンポティ」は冷笑されるのか(写真はイメージです)

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 日本でも「若作り」はしばしば失笑の的になるが、韓国ではいま、とりわけ40代男性の“ある振る舞い”がやり玉に挙げられている。背景にあるのは、自分はまだ若いという当人たちのカンチガイだけではない。若い世代から敬遠されるのは、韓国社会ならではの事情もあるという。現地ジャーナリストのノ・ミンハ氏がレポートする。

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【画像】日本にもいる?「お腹がでたおじさん」がブランド服を身に着け、カフェでアイスカフェラテ…韓国の若者たちから疎まれる「ヨンポティ」像

 韓国ではいま、「ヨンポティ」という言葉が流行語として飛び交っている。ヨンポティとは、「若い」を意味する young と、40代を指す forty を組み合わせた造語。日本風にいうとヤングフォーティ。表面的には「比較的若々しい見た目やライフスタイルを保っている40代」になる。そろそろ40代にさしかかる東方神起のメンバーや、BoAあたりもその世代に入ってくる。

Tシャツに野球帽、ハーフパンツを履いて手には最新iPhone…なぜ韓国で「ヨンポティ」は冷笑されるのか(写真はイメージです)

 しかし、韓国でやり玉に挙げられている「ヨンポティ」には彼らのようなさわやかなイメージはない。若者にとっては、むしろ冷笑の対象になっている。

 きっかけは、イギリスの公共放送BBCが、ヨンポティを「現象」としてニュースで扱ったことだった。BBCが紹介した典型的な男性ヨンポティ像はこんなイメージだ。

 英字ロゴ入りのTシャツに野球帽、短めの青いハーフパンツ。片手にはナイキのバッグ、もう一方の手にはiPhone――。

 彼らは、こう解説されている。

「男性ヨンポティは、90年代から2000年代初頭、自分たちが20〜30代だった頃に流行していたファッションをいまも追い続け、40代になったいまでも、ファッションセンスもマインドも当時のまま。しかし現実は、少し出たお腹、丸みを帯びた顔、眼鏡、口元や頬に刻まれたシワ……誰が見ても、ごく典型的な40代の“オジサン”にすぎない」

 BBCは、昨年9月に発売されたiPhone 17にも触れ、「かつては若者文化の象徴だったiPhoneが、いつの間にかヨンポティの“ダサいトレードマーク”になってしまった」と分析している。

 この報道に、韓国の若い世代が同調。そのノリは「ヨンポティは自分はまだ若く、若い世代とも自然に溶け込める……と勘違いした40代のこと」といったもの。ヨンポティという言葉が含むのは、文字通りの「若い40代」でなく「若作りニキ」「勘違いおぢ」といった、彼らを小馬鹿にしたニュアンスだろうか。

“イタい”大人

 実際、SNS上には、AIで生成された韓国ヨンポティの画像が数多く出まわっている。男性だけでなく、「女性ヨンポティ」のイメージを描いた画像も存在する。

 若い女性に比べて下半身はやや太めなのに、窮屈そうなスキニージーンズを履き、高価な腕時計をはめ、首には微妙なスカーフ。片手にはスターバックスのコーヒー、バッグには年齢不相応なぬいぐるみをつけた40代女性──そんな画像だ。男性ヨンポティと女性ヨンポティが“夫婦”として合成されたAI画像も注目を集めているという。

 また、ヨンポティを風刺したYouTube動画も話題になっている。

──ヨンポティの彼は20〜30代が多く集まるランニングサークルに参加するため、朝から服装選びに余念がない。しばらく美容院にも行っていないような髪を洗ってドライヤーで整え、髭を剃り、ナイキのバッグにニューバランスのランニングシューズ、メジャーリーグのキャップに青いハーフパンツ、英字ロゴ入りのTシャツ。仕上げに最新型iPhoneとブランド財布を持って、意気揚々とサークルに顔を出す。彼は、「自分は若い40代だから、若者と十分に楽しくやれる」と思い込んでいる――。

 この種の画像や動画は、なぜ若者たちに刺さるのか。彼らにとって、ヨンポティは相当に「ウザイ」存在であるようだ。YouTube動画にはさまざまなコメントがあふれる。

《純粋に運動目的で参加している20代女性に、ヨンポティは言いよる。最新型iPhoneや高級ブランドの腕時計をチラ見せし、誰も聞いていないニューバランスの靴の値段を晒し出す》

《出会ってまだ1時間ほどしか経っていないのに、「オッパ(お兄さん)って呼んで」といいつつ連絡先交換を求めてくる》

 さらに「ランニング後のメンバーでの食事風景」もリアルに再現される。

《本来は割り勘だが、ヨンポティは「俺が全部払うよ」と言い出す。お金のない20〜30代にとってはありがたい話。「ごちそうさまです」と、拍手やお世辞で彼をもちあげる。気をよくしたヨンポティは、誰も興味のないビジネスや彼の人生、政治、趣味について延々と語り出す。誰ひとり、会話に入る隙はない。ついには自分の華やかな恋愛遍歴までをも語りだすが、“盛った自慢話”にしか聞こえない。食事を終えて解散。酒量は減ったが、40代に入ってめっきり酒に弱くなったヨンポティは、ふらつきながら帰路につく。そして心の中で、「今日も俺、若いやつらにカッコよく見えたよな……」と満足げに微笑む》

 食事を終えた若者たちは、そっと別の店へ河岸を変える。その席で話題になるのは、「今日一日のヨンポティへの悪口」の大合唱だ――。

おぢアタックから豹変

 現実とかけ離れた「俺ワールド」に閉じこもるヨンポティ。彼らは、なぜ生まれ、なぜ冷笑されるのか。

 日本と同様、韓国の40代は、80年代後半から2000年代にかけて、経済・文化・産業が成長した。ヨンポティはその時代に青春時代を過ごした世代だ。ひとつ上の50〜60代が若かった70〜80年代とはまた異なり、ヨンポティはコンピューターやインターネットの普及の恩恵を受け、洗練された文化に親しんできた。有名ブランドも比較的容易に購入でき、スマートフォンの普及によって情報や流行にも敏感な世代なのだ。

 だが実態は、若者に疎まれる“オジサン”と大差ない。筆者の後輩である30代の女性記者は、「年齢に見合わない振る舞いが、かえって反感を招くのでは」という。

「同じ教会に、ヨンポティっぽい40代男性がいるんです。昨夏、ピチピチのTシャツにサングラス、そして高価なグッチのバッグを持って教会に来たときは、正直かなりきつかった。ヨンポティは同年代や50代は相手にせず、20〜30代の中にグイグイ入ろうとするから、断ったこともある」と振り返る。

 ヨンポティが若い女性を恋愛対象として近づいたり、幼稚な振る舞いを見せるたびに距離を置きたくなり、偏見が強まる……そんな女性は多い。

 しかもヨンポティは突然“40代にありがちな”不遜な態度をとることもあり、「やっぱりヨンポティとは絶対に仲よくなれない」と確信してしまうのだそう。

 昨年12月、韓国最大手の結婚情報会社「デュオ」が、25〜34歳の未婚女性1,000人を対象に行ったアンケートでは、57%が「ヨンポティ男性との交際は厳しい」と回答している。

 理由として挙げられたのは、

・若さを無理に誇示し、年齢を否定する態度(33%)
・会話や共感が難しい世代差(30%)
・権威的な雰囲気(25%)
・若いふりをしても隠し切れない、年相応の外見と空気感(35%)

 また、44%が「ヨンポティ男性は概して権威的だ」と感じ、40%が「世代差を強く感じる」と答えている(複数回答)。

政治的にも「合わない」

 現在の韓国の40〜50代は政治的に左派傾向が非常に強い。昨年行われた第21代大統領選挙の出口調査では、40代有権者の72.7%が左派候補の李在明(イ・ジェミョン)大統領を支持した。一方、保守候補は22.2%にとどまった。

 対照的に、20〜30代は比較的、保守的な政治志向を強めている。同選挙で20代男性の36.9%は保守候補に投票し、李在明大統領への投票は24%にすぎなかった。

 こうした政治的なズレも、ヨンポティと20〜30代の若者が「いまいち噛み合わない」要因のひとつといわれている。

 李在明大統領と彼が所属する政党「共に民主党」は、日本の左派政党に相当する。韓国では「左派」という言葉よりも「進歩」という言葉が主に使われ、彼らは自らを「進歩世代」と呼んでいる。だから彼らは考えが明るく前向きで、20代から30代の思想と大きく変わらないと思っているのだ。

 1979年生まれで李在明大統領を支持するひとりのヨンポティはこういう。

「私は若い人たちとなじんでいる。スマホにも慣れているし、最近の芸能人や音楽、流行の食べ物をすべてわかる。また、オープンな性格で話も通じる。でも最近の若い人たちには不満もある。礼儀がなく、ちょっと仕事を頼んでも大変だと不満や言い訳ばかり」

自分が前向きで開放的だから若者たちと仲良くやれるといいつつ、若い世代に対する不満もしっかりと隠しもっている。オジサンたちのこのようなダブルスタンダードを若者らが受け入れるはずがない……。

 筆者の会社に入社したばかりの20代後半の男性社員は、こう語る。

「問題は外見や若づくりではなく、行動や自己管理。無理に若作りしようとしなくても、きちんとしていれば自然と若々しく、カッコよく見えると思う。僕もいずれ40代になりますが、40代らしく振る舞いたい。20〜30代に向かって“自分は若い”と誇示するような生き方はしたくありませんね」

ノ・ミンハ(現地ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部