育児に失敗し我が子を遠ざけるようになった父。それでも息子は彼と向き合おうとするが…家族とは何かを問いかける物語【書評】

【漫画】本編を読む
『僕はお父さんが好きじゃない』(まるたおかめ/KADOKAWA)は、父親との距離に悩む少年の視点から、家族のすれ違いを描いた物語だ。
物語は「僕はお父さんが好きじゃない」という言葉から始まる。主人公のなつは小さな頃から、父親のさとると遊んだ記憶がほとんどない。子どもにとって父親とは頼りになる存在のはずだが、さとるは違う。父親は自分のしたいことや趣味を優先し、子どもに遊びをせがまれるとクローゼットに隠れてやり過ごそうとする。なつが勇気を出して手を繋ごうとしても拒まれ、スマホばかり見ている。そんな父親の姿を見て、なつは「お父さんも僕のことが嫌いなんだ」と考え、次第に心を閉ざしていく。
とはいえ本作は、さとるを単なる「悪人」として描いてはいない。実は、さとるはかつては育児に前向きだった時期があった。しかし、初めての子育てで直面した失敗や挫折が、彼の自信を奪ってしまったのだ。うまくできない現実と向き合うことができず、さとるは少しずつ育児から距離を置くようになってしまったのだ。このまま父と子は分かり合えないままなのか。物語は緊張感をはらみながら進んでいく。
親との関係に悩んだ経験がある人はもちろん、子育て中の親にも考えさせられる作品だ。特別な出来事ではなくても、家族のなかで生じたすれ違いは子どもの心に深く残る。本作はその事実を伝えながら、家族とは何かをあらためて問いかけてくる物語である。
文=つぼ子
