Photo : Kazumi Oda

2025年8月5日の記事を編集して再掲載しています。

バナナが鳴った──それは音楽体験の原点なのか。

J-waveのラジオ番組『GRAND MARQUEE』にゲスト出演したときのこと。

『ギズモード・ジャパン』総編集長の尾田和実が、伝説的な初回の『フジロック』を語る | NiEW(ニュー)

「ロックフェスに持っていきたいガジェット」というお題に応えるべく、編集長である私が持参したのは、「Synth-a-Sette(シンサセット)」という小さなシンセサイザーだった。

Photo : Kazumi Oda
Photo : Kazumi Oda

カセットテープと見紛う外見、むき出しの基板、そしてワニ口クリップが垂れ下がる異様なルックス。それは、いかにも“ギズモード的”なチョイスだったかもしれない。

試しに、スタジオにあったバナナにクリップを繋ぎ、そっと触れてみた。

すると、ブイーンという乾いたスクエア波の電子音が響き、スタジオは爆笑の渦に。けれどあの瞬間、笑いの奥に確かな驚きがあった。

「音楽って、こんな風に始まるのか」というプリミティブな感動。それこそがこのガジェットの真価だった。

image : Kazumi Oda
image : Kazumi Oda

このリアルな「体験」──つまり、自分の手で、日常の中の何気ないモノを通じて音を鳴らすという実感こそ、「Synth-a-Sette」の最大の魅力だ。

どれだけ仕様書やレビューを読み込んでも、実際にバナナを鳴らしてみないとわからないことがある。それは、音と遊ぶという感覚だ。 正確にいうとバナナ自体が音を出しているわけではない。あくまでタッチセンサーとして機能しているということだが、その遊び感覚はバナナを楽器としている。つまり「バナナが鳴っている」ように感じているわけだ。

導電性があれば、なんでもセンサーになる

「Synth-a-Sette」は鍵盤を持たない。前面には13のタッチセンサーが並び、指で触れるだけでも音は鳴るが、本領を発揮するのはワニ口クリップを導電体に繋いだときだ。 鉛筆の芯、植物、金属、水、果物──そして人間の身体。触れたものがそのまま“鍵盤”になる。

image : Dirigent

たとえば片方のコードを誰かに握ってもらい、その人に触れると音が鳴る。“その人自身”がセンサーになるのだ。つまり、これは触れることで演奏する装置であり、インタラクティブな“音の出会い”を仕掛ける楽器でもある。

image : Dirigent

エンタメと教育、遊びと電子回路が絶妙なバランスで溶け合っている。

DTMでは得られない“ざらつき”と“遊び”のための設計

音は潔いほどにチープ。矩形波オンリー、フィルターもエンベロープもなし。

だがそのざらつきが、逆に音楽に輪郭を与えてくれる。ピッチとボリュームの調整ツマミ、そしてビブラートのスイッチもあり、アナログならではの微調整が効く。

レスポンスは意外なほど良好で、導電体のサイズや形に関わらず安定して反応する。しかも、内蔵スピーカーは小さくともパワフル。

image : Dirigent

ラインアウトやヘッドホン端子もあり、USB-C給電にも対応。もちろん単4電池2本でも駆動する。1分後には音が鳴って、5分後には誰かとセッションしている、そんな即効性がある。

精緻なDAW環境とは真逆にあるガジェットだが、だからこそ“音と遊ぶ”ことが主役になる。音楽制作において忘れがちな、「音を鳴らして笑う」という体験が、ここにはちゃんとある。

音楽は正しさじゃなく、触れる楽しさから始まる

これまで数多くのシンセや電子楽器に触れてきたが、「Synth-a-Sette」ほど音楽を“日常に引き戻す”ガジェットはなかなかない。

タッチ鍵盤があるので単体でも演奏できるが、ワニ口クリップで拡張することで逆に世界がすべてインターフェイスになる──それは技術ではなく思想の話だ。

image : Dirigent

税込9,900円。机の上に置いても邪魔にならず、ポケットにも入るこの装置は、音楽の始まり方にひとつの“選択肢”を加えてくれる。

image : Dirigent

そして何より── “バナナが鳴る”という体験をした人間は、もう一度音楽を信じることができる。 そのキャッチーすぎる音をぜひ体感してみて欲しい。

Source : ディリゲント(Dirigent)

MicroKit Synth-a-Sete
9,900円
Amazonで見る
PR