IoTによる「店舗の改善」で「破格の月会費」にコミットする…chocoZAPのテック戦略

写真拡大 (全5枚)

RIZAPグループが展開するコンビニジム「chocoZAP」は全国に1800店舗以上にまで急拡大を遂げ、日本に「コンビニジム」という形態を定着させた。chocoZAP事業発足から約3年でグループ連結黒字化を達成し、先行投資も早期に回収を完了。経営面でも「結果にコミット」し、今後はさらなるサービス改善に取り組んでいく方針だ。

chocoZAP最大の特徴である「24時間、無人営業」を実現しているのは、店舗運営やクオリティ改善、アプリ開発などにおけるテックの力が大きい。リーズナブルな月会費を維持しつつ、利用者の満足度を高めるためにどのような策を講じているのか。RIZAPテクノロジーズ株式会社DX推進本部IoT統括部の山田考浩部長に話を聞いた。

店舗の空調を自動で管理

――chocoZAPの登場、そして急拡大は市場に大きなインパクトを与えました。chocoZAPのDXやIoTを統括するセクションとして、念頭に置いていることはなんでしょうか。

無人の店舗運営を実現する以上、「人がいなくても回る」ことを当然のものにしなければいけません。店舗への入退館はもちろん、chocoZAPへの入会手続きもアプリで完結できるように開発を行ってきました。

chocoZAPのアプリについては、クオリティを担保することが第一です。アプリのQRコードを読み取って入退館していただいていますが、新店舗にQRコードリーダーを設置してもちゃんと動かなかったり、不具合が出たりする店舗もあります。アプリ経由で取得したデータをしっかりと分析して、現場と連携しながら改善を図っています。

――店舗環境の改善について、今取り組んでいることを教えて下さい。

2025年から導入しているのが、各店舗の空調を遠隔かつ自動で制御するシステムです。店舗に備え付けのセンサーを通じて温度などを把握し、お客さまに快適に過ごしていただけるよう調整しています。

chocoZAPの圧倒的多数がテナントであり、施設によって坪数も、窓の大きさや数も、クーラーのメーカーもすべて違います。そうしたばらつきがあることも考慮しつつ、季節や混雑率に合わせ自動で制御できるようにしました。これはもちろん、お客さまの満足度の向上が第一ですが、節電になり収益性の改善につながっています。

また、各店舗が入るビルの防災設備とは別に、独自の防災システムを導入、運用しています。窃盗などの対策のための防犯カメラもそうですが、お客さまにより安心してご利用いただきたいとの思いから、目に見えない改善を図っているところです。

「なぜ壊れるか」をマシンが自動で⋯?

――無人営業のネックとして、店舗の清掃が挙げられます。気持ちよく利用できる環境維持をどうやって行っているのでしょうか。

chocoZAPは現在、フレンドリー会員制度を導入し、一部の会員の方に店舗の清掃協力をいただいています。ただ、店舗がどれくらい汚れているか、清掃を必要とするかは、人の判断に委ねられ、フレンドリー会員の方にも非効率な作業をお願いすることになります。

構想段階ではありますが、どこがどれくらい汚れていて清掃を必要としているか、清掃でどれだけきれいになったかをAI搭載の店内カメラで検知するような仕組みを検討しています。店舗の状況を具体的なスコアや評価に落とし込み、自動で判断共有できるようにして、より効率的にクリーンな環境を保てるようにしたいと考えています。

――店舗の清掃とともに、マシンのメンテナンスも無人営業の課題です。どのようにして解決していくのでしょうか。

マシンの故障はしばしば起こっており、大きな課題です。現状では利用者のみなさまから報告をいただき、都度対応していますが、今後はIoTを活用してマシン故障を把握できるような仕組みを検討中です。

chocoZAPにあるマシンは他社メーカーが製造したものを設置しているわけですが、その保守や修理をメーカー任せにするのではなく、「なぜ壊れるのか」を自分たちで突き止めて、改善できる仕組みを構想しているところです。

――2026年6月より、入会者特典のスターターキット(体組成計・ヘルスウォッチ)から、ヘルスウォッチの提供が終了になります。これはなにか理由があるのでしょうか。

スターターキットの体組成計はご利用いただいているお客様が多いのですが、それと比較するとヘルスウォッチはそうでないのが実情でした。というのも、歩数や心拍数などのライフログは、すでにお持ちのスマートフォンやウェアラブルデバイスで計測されている方が多かったんです。そこで、スターターキットとしてのヘルスウォッチ提供は一定の役割を終えたと判断しました。細かいデータを取るのに長けたデバイスやアプリの内製化にコストをかけるより、清掃など店舗の快適さにつながるところに投資を振り向けようと。

むしろ、みなさまがお持ちのデバイスとchocoZAPアプリのデータ連携を強化したほうが、お客さまにとってのメリットになると考え、「OS標準ヘルスケア連携」のサービスを開発・リリースしました。これにより、血圧や体温など、従来のヘルスウォッチよりも多くの項目を活用して、スマートな健康管理を構築していただけるかと思います。

「社会の健康インフラ」を目指して

――chocoZAPアプリについては、今後どのような展望を描いているのでしょうか。

アプリを「入退館証」や「(セルフエステなどの)予約アプリ」としてしか使われていない方も多いのが実情なのでは、と思います。実はchocoZAPアプリで管理、活用できるデータは多く、我々としても、chocoZAPアプリをフルで活用してもらうよう改善を重ねたいと考えています。

実際に店舗がある、運動および食事の記録アプリはそう多くないと思います。これは大きな強みで、より高度なデータの組み合わせを作り、ご自身の健康状況を判断していただきたいと考えています。

運動の記録は、正直に言えば「面倒くさい」。前回どれくらい運動したのか、その記録がないとモチベーションが上がりませんし、そもそも記録自体をやめてしまって悪循環に陥ってしまいます。それをなんとかして食い止めたいという思いがあります。

たとえば、マシンとアプリが連携して、chocoZAPで運動すると自動で運動回数の記録がアプリに送信されて、ライフログと並べながら健康管理できるといった環境が実現するのではないかと。chocoZAPは「健康の社会インフラ」を目指していますが、さしあたって運動を意識的に行うのではなく、気づいたら生活に運動が取り入れられていた、という自然な運動習慣を作りたいと考えています。

――継続しやすい健康習慣の構築のために、ソフト面とハード面それぞれに改良を進めていくのが当面の目標なんですね。

そうですね、ガラッと変えるというよりは、空調や防災設備など、見えないところの改善を積み重ね、みなさまの満足度を上げていくことが我々のミッションだと考えています。

chocoZAPの月会費はさまざまなサービスがコミコミで3278円(税込)ですが、この低価格帯を守ることをとても重要視しています。そのためには人的リソースの効率化やコスト構造の見直し、内製化は徹底的に行って行かなければならない。そのためにIoTを積極的に導入し、人がいなくても現場が回るような仕組みづくりを行っていく必要があります。

リーズナブルな月会費を維持するために

――低価格という「高いクオリティ」を提供するためのエンジニアリングですね。

「いいものを作りたい」って最初に必ず考えるのがエンジニアの思考ですよね。でも「いいもの」を作るには時間とリソースが必要ですし、逆に売れるとか、事業の持続性についてまでは考えていないケースがほとんどです。事業的に結果が出せなかったら失敗です、という意識を持って取り組むと、出てくるものが違ってくるのかなと思っています。

たとえば空調の自動制御を導入したらお客さまの継続率がこれだけ改善した、どれだけの利益につながったかは具体的な数字として表れます。この数字を社内のみんなで共有しながら次の計画を立てていく。どんな立場の人も常に数字と向き合っているところは、RIZAPグループの企業風土だと思いますね。

瀬戸健社長の方針でもありますが、「人に頼らない」ことを極力突き詰め、逆に絶対に人が必要なところ、特にお客さまと向き合うべきところに人とリソースを集中していきたいと考えています。

海外出店・FC展開の「勝算」は…「chocoZAP」事業黒字化のRIZAP・瀬戸健社長インタビュー