価値観や仕事の進め方、経験やプライドなど、様々な引っかかりが内包する「若者上司とおじさん部下」の構図。働き方の変化に伴い、どう接していいかわからないと悩む人が増えているようだ。

【映像】年下上司がイラッとしたおじさん部下の行動

 ニュース番組『わたしとニュース』では、年齢逆転の職場で起きるコミュニケーションのギャップやマネジメントの難しさについて、マネジメントトレーニング普及に取り組むEVeM VP of Impactの滝川麻衣子氏とともに考えた。

■大企業の約3割が「年下上司」…背景にある成果主義と役職定年

 サイボウズチームワーク総研の調査によると、直属の上司が年下の割合は大企業でおよそ3割に上るという。背景には、年功序列から成果主義へシフトしていることや、定年の延長によるシニア社員の増加などがある。今後さらにこの傾向は増えていくと考えられている。

 滝川氏は、この結果について「この20年くらいで日本の年功序列、勤務年数が長ければ給料が上がっていくスタイルが、人件費の抑制や、そもそも人口構造の中で年上の人が増えて年下が少ない状況の中で、かなり変わり始めている。ただ、大手企業ではもう3割になっているのは、改めて噛みしめる数字ではあった」と述べた。

 中小企業よりも大企業でこうした変化が起きている理由については、次のように解説した。

「まず大手企業において、そもそも年功序列がデフォルトとしてしっかりしていたのはあると思う。しかし、バブル崩壊後の経済低迷の中で、できるだけ人件費を抑制しなきゃいけない動きになったのも事実。なので、平等に上がっていくのではなく、成果を出した人を評価しましょう。成果が出ている人はもちろん評価するけれども、出ていない人はそれなりだということを明確にした」

「かつ、役職定年を取り入れる会社もすごく増えた。これは50代後半になると、部長職や課長職は1回外れてもらう。もちろん雇用は継続するので、ひどい制度ではないけれど、若手にもちゃんと道を開いて組織の新陳代謝を活発にさせようという動き。日本の大手企業は6割くらい取り入れているという調査もある。元々若い人が多いベンチャーとか、あるいはドラスティックな組織改編に挑んでいない中小企業よりも数万人規模の社員を抱えている大手企業の方が変革のインパクトも大きいから、どんどん成果主義だったり役職定年だったり、人件費抑制や新陳代謝の目的も含めて進めてきたことはある」

■年下上司の苦労「気を遣う」「言うことを聞いてもらえない」

 年下上司を対象とした調査では、年下上司が苦労したこととして「年上部下の固定化したやり方・考え方」「年上部下に気を遣い、伝え方が難しい」「年上部下と他のメンバーとの関係調整」という意見が上がった。

 実際に働く街の人たちからは、次のような声が聞かれた。

「約20人の規模で半分くらい年下。(言葉遣いは)敬語じゃないですか。残ってくれているのは職人でずっと長いので、そのキャリアとかスキルは大事に尊重して喋るみたいなところはあるかもしれない。(職場の雰囲気は)お互い和気あいあいとやっているのではないか」(“年下上司”の50代経営者)

「少しやりにくいところがある。(年下部下の方が)ベテランなのであまり言うことを聞いてもらえない。指示が出しにくい。自分のやり方があると言うことを聞いてくれないので、そういう時は違う人に頼むとか、それ以上のことは期待しないようにしている」(“年下上司”の50代会社員)

 一方、年下上司を持つ年上部下にも話を聞いた。

「(上司は)45歳くらいだったかな。敬語にするようにしている。そりゃ自分の方が上に立ちたいよね。気持ちとしては。男だから少し気にはなるんだけど、それが仕事だと思うから」(“年上部下”の60代会社員)

 年齢と仕事のモヤモヤは抱えつつ、認めざるを得ない部分もあるという。

「やっぱり回転は速いよね。気が付くところとか。資格もちゃんと取っているから知識は持っている」

 こうした意見について、滝川氏は「年上の人に対する日本人ならではの気遣いもあるし、そもそも世の中の上司は年齢が上ということが内在化していると思う。だから自分は年下なのに命令していいのかな、指示していいのかなみたいな気持ちになっていることの裏返しなのではないか」と分析。

「うまくいかせようと思ったら、できるだけプライドを傷つけないようにとか、不愉快な思いをさせてないかなとマネージメントしている側は当然考えなきゃいけないこと。より日本社会において特異な現象とまだ捉えられる時期においては、よりケアしなきゃという意識が働くのは普通だと思う」

 一方で「マネジメント自体は役割であって地位があるのではないということがちゃんと認識されていれば、相互に余計なストレスや気遣いなど過剰な反応をする必要はないのではないか」との見方を示した。

■ツールや環境の違いがもたらす「ギャップ」

 ジェイックがとりまとめた年上部下から見た年下上司についての実態調査によると、プラス面として「フットワークが軽い」「トラブル対応が早い」「組織運営・メンバーの意識向上が上手い」といった声がある一方、マイナス面として「メールやリモートなど非接触型のやり取りが多い」「雑談などのコミュニケーションはしない」「褒めることができない」「気を遣いすぎて仕事が回っていない」といった指摘が挙がっている。

 これに対し、滝川氏は「世代によってツールに対するの習熟度というか、どのツールが使いやすいかというコミュニケーションの取り方は結構差があると思う。この20年くらいで、デジタルネイティブ世代もいれば、若い時はほとんど紙だったという人もいるし、紙とデジタルの両生類と言われる人たちもいるし、SNSネイティブな人たちもいる。コミュニケーションの取り方が激変した時代に、それぞれを体験した人たちが1つの職場にいる時代」と指摘。

「大学でフルリモートだった世代が今社会人になってきているので、リアルで人と接すること自体に緊張感を持っている。大学もリモート、インターンもリモートだった人たちも相当いる。この人たちがリアルコミュニケーションに求める水準と、飲み会を繰り返して合コンしてみたいな4年間を送ったおじさん世代では、だいぶコミュニケーションの前提が違うだろう。お互い背景を理解して、かつ今効率的に使えるものはどんどん活用していくというすり合わせも必要だと思う」

(『わたしとニュース』より)