こんなはずでは…夢のマイホームが“限界ゴーストタウン”に。当時年収450万円・32歳会社員が30年後に突きつけられた「非情な現実」
若いファミリーが住み、休日には外からも多くの人が押し寄せる……そんな「夢の町」に一戸建てを購入した会社員。しかし30年後、思わぬ事態に直面。「ここを出たい。でも出れない」と頭を抱えています。その切実な理由とは?
ショッピングモールで活気づく町に夢のマイホーム購入
「当時は本当に『夢の地に建ったマイホーム』だったんです」
今から30年前、健一さんは32歳。地方都市の建築メーカーに勤める会社員で、年収は約450万円。パート勤めの妻と、4歳と1歳の子どもがいました。
家賃を払い続けるよりも自分の家を――。そんな思いから、当時「子育て世代の町」として注目されていた郊外の分譲住宅地に一戸建てを購入しました。価格は約3,600万円。 35年ローンを組み、毎月の返済は約11万円。世帯年収700万円足らずの健一さんにとっては、思い切った買い物です。
決め手となったのは、住宅地のすぐ近くに建設された大型ショッピングモールの存在でした。レストラン、衣料品店、スーパー、美容院、子どもが遊べるスペースに病院まで。休日には多くの人が訪れ、駐車場はいつも満車。
駅が近くにないことだけが気になりましたが、バスを使えば約20分。健一さん自身は車通勤ということもあり、「そもそも、この町から出なくても生活はほぼ完結する」と、考えたといいます。
ところが、30年経った今、町の様相はすっかり変わってしまいました。
町がゴーストタウン化
町の中心だったショッピングモールは、徐々に活気を失っていきます。経営母体の業績悪化、駅直結型のショッピングモールの台頭。テナントの撤退が相次ぎました。
現在、モールの建物は残っていますが、入っているのはスーパーやドラッグストアなど数店舗のみ。かつての賑わいは見る影もありません。モールを目当てにくる人たちでにぎわっていた商店街も、ほとんどシャッターが下りている状態です。
健一さんも、老後に車を手放すことを前提に、もっと便利なエリアに引っ越したいと考えています。ところが、不動産会社の査定額は約1,800万円。しかも、担当者はこう続けたといいます。
「この金額でも売れるかどうか……」
いまだに残っている町の住民の多くは高齢化。同じように「家を売りたい」と思う人がいる一方で、新しく買う人は少ない。つまり、売り物件だけが増えていく状態でした。
しかも、問題はそれだけではありません。健一さんの住宅ローンは35年返済。すでに30年が経過していますが、それでも残債は約400万円残っています。もし査定通り1,800万円で売れたとしても、まずローンの残りを完済しなければなりません。
さらに、不動産仲介手数料や引っ越し費用などを差し引けば、手元に残る資金は1,200万円前後になる見込みです。その金額で、駅に近いマンションを購入するのは現実的ではありません。
「こんなことになるなんて……。今となっては、スーパーやドラッグストアだけでも撤退しないよう祈るしかありません」
健一さんは項垂れます。
家を買うときに見逃しがちなポイント
住宅購入では、その時点では魅力的に見える条件が将来も続くとは限りません。見逃しがちなのは、次のようなポイントです。
●商業施設は「永遠」ではない
家を選ぶ際、「近くに大型ショッピングモールがある」ことを魅力に感じる人は少なくありません。しかし、商業施設は企業が運営するビジネスです。業績悪化や競争激化によって、閉店や縮小が起こる可能性は常にあります。
●同じ世代が集まる住宅地は「一斉に高齢化」する
分譲住宅地では、同じ時期に同じ世代の家族が入居するケースが多くあります。その結果、30年後には町全体が一斉に高齢化するという現象が起きることがあります。住民構成が偏ると、町の活気や住宅需要にも影響が出る可能性があります。
●車前提の町は、老後の生活が難しくなる
郊外の住宅地では、車があれば生活は便利です。しかし、高齢になると車を手放す可能性もあります。そのとき、駅や生活施設までの距離が大きな負担になることもあります。
魅力的に見える町も、時間とともに姿を変える可能性がある。そのため、住宅は「今の暮らし」だけでなく、「30年後の暮らし」まで見据えて選ぶ必要がある――そんな事実を、健一さんの事例は教えてくれます。

