イメージ画像

写真拡大

北朝鮮が、自国の医師を外国に違法な形で派遣している。医療空白地のニーズを埋める形で治療を行い、外貨稼ぎをしているのだが、北朝鮮国内も医療水準が低いうえ、医師も十分な教育を受けていない。このため、派遣現場で医療トラブルを起こすこともあるという。

北朝鮮専門サイト「NKニュース」は6日、ロシアのある医療機関が、伝統中国医学の医師としてキム・ミョンスという人物の写真を掲載していると伝えた。平壌の医学研究所で学び、北朝鮮で医師の資格を得ているという。

35年の経験があり、ハリや指圧、漢方薬を使って高血圧や心臓病を治療するとうたっていた。キルギスでも、北朝鮮出身の医師を確認したという。

北朝鮮の医師は東欧だけでなく、アフリカにも多く派遣されている。北朝鮮の不法活動を追跡し、YouTubeで公開している「NUTSKOREA」によれば、アフリカ全域ではなんと1500人にもなるという。特に中部のコンゴ民主共和国には多くの医師が活動している。

コンゴ民主共和国は、医療体制が崩壊している。世界保健機関(WHO)の資料によると、同国人口1万人あたりの医師数はわずか約2人。世界平均の約17人を大きく下回り、絶対的な医師不足状態に苦しんでいる。

北朝鮮政府はこうした医療ニーズに応えるという名目で、医療団を派遣し、現地で富裕層をターゲットにした「闇診療所」を運営している。

北朝鮮の医療施設は、現地政府に正式に登録されておらず、納税の義務すら果たしていない違法施設だ。現地の法律やルールも無視している。

「NUTSKOREA」によると、コンゴの首都キンシャサでは、北朝鮮の医師が、1ヶ月300ドルという高額な治療費で現地の富裕層をターゲットに外貨を稼いでいる。

実際にこれらの施設内に入った人によれば、医療環境は非衛生的であり、プラスチックのペットボトルに出所不明の薬物を入れて使用している現場も確認した。さらに、派遣された医療スタッフは現地の言語(コンゴの場合はフランス語)を十分理解できず、コミュニケーション不足による行き違いも生じていると現地住民は証言している。

8~9割は本国がピンハネ

医師たちが稼いだ収益の最大80~90%は大使館の運営資金や北朝鮮への上納金として搾取される構造になっており、貴重な専門人材が国家の集金マシーンとなっている。

そもそも北朝鮮によるこうした海外への医療陣の派遣と外貨獲得活動は、国連の対北朝鮮制裁に違反している疑いがある。2017年に採択された国連安全保障理事会決議第2397号では、すべての国連加盟国に対して、2019年までに自国内で働く北朝鮮労働者を本国へ送還することが義務付けられた。

前述の「NKニュース」も、専門家が「このような北朝鮮の高度人材の雇用は国連制裁違反にあたる可能性が高い」と警告している。

厳しい環境のアフリカで医療活動に当たっていること自体は意味がある。しかし最大の問題は、医療事故が発生した場合の無責任な対応だ。これらの施設は非正規のものであるため、医療ミスなどの問題が起きると、すぐに別の場所へと診療所を移転して逃亡し、責任を回避するという。被害者が出ないことを祈るばかりだ。

文/五味洋治 内外タイムス