『教場 Requiem』での”鬼気迫る凄み”に感じた、木村拓哉が「第二のミフネ」になる日
風間の視線を正面から受け止められず
木村拓哉(53)主演の映画『教場 Requiem』が2月20日に公開され、週末映画動員ランキングでは初登場で首位を獲得。3月1日には、早くも大ヒット御礼舞台挨拶を開催されるなど、木村が演じる風間公親に注目が集まっている。
今作は、テレビドラマ『教場』シリーズの集大成。前編『教場Reunion』は今年1月にNetflixで独占配信され、続く今作『教場 Requiem』が劇場公開されている。
「木村さん演じる風間は、白髪まじりで右目が義眼の警察学校の教官。しかも警察官として適性のない者には、容赦なく退校届けを突きつける冷徹なキャラクターをクールに演じています。映画化された今作では風間の冷徹さにもさらに磨きがかかり、眼鏡の奥に光る瞳の迫力は凄まじく、モニター越しに見ても”ゾクッとさせられた”とスタッフは話していました」(ワイドショー関係者)
そんな今作のクライマックスシーン。それが修羅場と化す卒業式の場面である。
以前、風間教場をクビになった平田和道(林遣都 35)が壇上で怒りをあらわにしてキレまくる。その姿を冷徹に睨みつける風間教官の迫力は、尋常ではなかった。
「林自身も演じながらプレッシャーを感じたようで『教場Reunion』の撮影時に対峙した際、『目があったら怖くなってセリフが飛びかけた』と告白しています。今作でも風間の視線を正面から受け止めることができず、視線が泳いでしまう。そのシーンは、隠れた名場面となりました」(制作会社ディレクター)
‛23年に公開された映画『レジェンド&バタフライ』で、木村拓哉は織田信長役を熱演。スチールカメラマンを務めた菊池修氏は当時を振り返り、
〈撮影中の木村さんは信長の魂が憑依していて、この人は信長の生まれ変わりなんだと何度も感じたことがありました。カメラ越しに魔王・信長に睨まれてとても怖かった〉(公式パンプレット)
とコメントしている。
これまで木村は検事や医師、美容師から総理大臣まで30種類以上の職業を演じてきている。
「当時“何をやってもキムタク”と揶揄された時期もありました。ところが近年の木村さんは一味もふた味も違う。信長役はもちろんのこと、『教場Requiem』でも風間公親その人がそこにいるとしか思えませんでした。もはや“何をやってもキムタク”という声は、まったく聞こえてきません」(制作会社プロデューサー)
はたして木村拓哉にいったい、何が起きていたのか。
次の三船敏郎は誰だ?
木村は‛16年のSMAP解散以来、‛19年『グランメゾン東京』(TBS系)をはじめ、‛22年『未来への10カウント』、‛24年『Believe―君にかける橋―』(共にテレビ朝日系)などでは“憧れのヒーロー像”を封印した。
逆風の中、挫折を乗り越え再起する主人公の姿を演じてきた。その姿はどこかSMAP解散の責を負い、禊(みそぎ)を行う行者のようでもあった。
「木村さんはより深く役と向き合うことで、その役を生きる術を身につけたのかもしれません。だからこそ日本の歴史上、もっとも大量殺戮を行ったといわれる織田信長を演じた時も、亡くなった方たちの無念さや残された者たちの怒りといった“業”のようなものを、覚悟を持って背負うことができたのかもしれません」(前出・ディレクター)
‛24年に公開された映画『グランメゾン・パリ』で木村は、本場のパリで世界最高の“三つ星”を獲得する、主人公のシェフ尾花夏樹を演じている。その折、興味深いコメントを残している。
〈僕たちが作ろうとしているものはフィクションかもしれないけど、ノンフィクションの体液を巡らせてもらった。撮影現場では、ノンフィクションの“ノン”を外すだけでフィクションはいくらでも作り出せる〉
『レジェンド&バタフライ』『グランメゾン・パリ』、さらに昨年公開された映画『TOKYOタクシー』を観る限り、木村拓哉は50代を迎え、俳優としてもう一段ギアを上げてきた。そう言っても間違いないだろう。
木村は、‛17年に公開された映画『無限の住人』に主演。その際『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』を手掛けた世界的なプロデューサーのジェレミー・トーマスから、投げかけられた言葉がある。
〈世界の映画ファンは、“次の三船敏郎は誰だ?”と、ずっと待っている。もしかしたら木村さんが、その役目を担う可能性は十分にあると思うよ〉
あれからまもなく10年。“第二のミフネ”へ、そろそろ機は熟したのかもしれない――。
取材・文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー)
