農業・空き家問題・電力事業まで!? J1昇格を果たした水戸ホーリーホックが挑む地元まるごと改革
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水戸が挑む地元まるごと改革
Jリーグ各クラブの経営トップを招き、日本サッカーの未来を探るシリーズ企画「リーダーズボイス」
今回のゲストは今シーズン初のJ1に挑む水戸ホーリーホック社長の小島耕氏だ。
親企業を持たない地方クラブとして、地域密着型の経営戦略と独自の地域課題への取り組みから目が離せない。

水戸ホーリーホックの2025年度の営業収益は約15億円強の見込み。これは小島社長就任以降、右肩上がりで伸ばしてきた結果だ。
しかし、J2クラブの平均収益は約20億円、J1クラブに至っては58億円と、その差は歴然。当時のJ1最下位だった湘南ベルマーレでさえ水戸の約2倍の収益規模を誇る。
「我々は特定の責任企業、親会社を持たないクラブで地方市民クラブ型です。いきなり15億から50億になることはないので、多くの応援していただく方を増やしながら、トップチームの成績も安定させながら経営していく難しさがあります」と小島社長は現実を語る。

親企業を持たない地方クラブにとって、経営の生命線はスポンサー営業だ。
小島社長は就任以来、この分野に注力。2020年に着任した頃は2億円台だったスポンサー収入は、2025シーズンでは12~13億円を目標にしているという。
「各クラブ50~55%がスポンサー収入と言われています。12~13億円いくと、25~26億円の売上が見えてきて、選手人件費もそれに比例する形になってきます」
この営業努力について小島社長は「クラブの成長にかけてくださいとか、クラブの思いに共感してくださいというビジネスなので、どのお客様に対しても同じパターンというのはありません。これは僕の気合と根性と肝臓の勝負です」と笑顔で語った。

入場料収入も経営の重要な柱だ。小島社長はこの分野で大胆な改革を実施。2020年のコロナ禍をきっかけに、それまで行っていた無料チケットの大量配布をやめたのだ。
「2019年に着任して試合を見ていると、無料券で来るお客様が後半30分くらいになると帰り始めるんです。試合が一番いいところで帰ってしまったりして、興行として正しくないと感じました。
2019年は過去最高の入場者数でしたが、客単価は一人当たり880円。映画が2000円くらいする中で、その半分以下というのは選手たちに失礼だなと」
この決断と地道なホームタウン活動の結果、客単価は昨シーズン1450円にまで上昇。小島社長はJ1昇格で2300~2400円になることを目指している。

入場料収入増加のカギは選手と地域との絆づくり。水戸が行う「ホームタウンPR大使」は特に盛り上がりを見せる施策だ。15あるホームタウン市町村が、ドラフト形式で選手たちを担当に選ぶというユニークな取り組みだ。
「各市町村の担当者が選手たちをドラフトで選ぶんです。最後まで残っちゃう選手がいたり、何回もくじ引いても当たらない市町村があったりしますが、これによって選手と市町村の関係が深まります」
選手たちも熱心に地域PRに取り組み、常陸太田市では選手たちがバンジージャンプに挑戦する姿も。
小島社長は「飛んだ直後にハットトリックしたり、とんでもないゴールを決めたりという縁起物にもなっています」と笑う。
選手たちも自ら「逆指名」を始め、特産物を目当てに特定の市町村を指名してほしいとSNSでアピールするなど、想定以上の盛り上がりを見せているという。

水戸ホーリーホックの地域との関わりは、サッカーの枠を大きく超えている。北海道に次ぐ農業生産量を誇る茨城県では、農家の高齢化や耕作放棄地の増加が課題。
クラブは2021年「グラスルーツファーム」を立ち上げ、選手やスタッフ、サポーターが一緒になって農業に取り組んでいる。
にんにくから始まった取り組みは、現在では玉ねぎ、にんじん、大根など品目を拡大。道の駅での販売まで実現した。
さらに最近では耕作放棄地を活用した「ソーラーシェアリング」にも挑戦。農地の上に太陽光パネルを設置して農業と発電を両立させ、地域の道の駅などに電力を供給する取り組みも始めている。
そして昨年から力を入れているのが、全国的に問題化している空き家の相談窓口だ。茨城県内の空き家は約20万戸、総住宅数の15%に達するという。
小島社長は「空き家が増えると犯罪リスクや火災拡大の危険性など社会不安が起きる。パートナー企業と一緒に、啓蒙活動として空き家問題の存在をアピールしています」と説明する。
小島社長はこれらの取り組みについて「Jリーグクラブは社会課題と地域課題、この二つの課題に取り組むべき。
Jリーグの全60クラブのホームタウンを足していくと、全国土の85%ほどをカバーする。Jリーグはそれだけ横の連携が広がれば、社会を変えられる存在だと思います」と語る。

初のJ1昇格を果たした水戸ホーリーホックだが、スタジアム問題という大きな壁も立ちはだかる。
昨シーズンまでのホームスタジアムはJ1基準を満たしておらず、3年以内の計画書提出と5年以内の完成・使用が求められている。
「今岐路に立たされています」と語る小島社長。「クラブとして、サッカー人としては当然、選手がプレーして、ファンサポーターが感動・熱狂を受ける環境は作ってあげたい。
ただ茨城はどんどん過疎化が進んでいて、本当に200~250億円のアセットへの投資が正しいかどうかは地域で考えなければなりません」
最後に小島社長は自身の信念についてこう語った。
「サッカー業界で働く人たちの未来が明るくなければならないと思います。ホーリーホックで働いている、Jクラブで働いているというスタッフたちがすごく認められるような、サッカー業界で働く人たち全体の社会的地位が上がることが私のミッションです」
水戸ホーリーホックは親会社を持たない地方クラブとして、サッカーを通じて地域の様々な課題に挑戦し続けている。J1での戦いはまだ始まったばかりだが、その独自の取り組みに今後も目が離せない。
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