「PIM」から「 コネクテッドコマース 」へ 売上とLTVを最大化する米国の新概念とは

Firework Japan株式会社でGlobal Revenue Operationを統括する瀧澤優作氏による全4回の寄稿シリーズ。本稿では、その第3回として、米国市場で急速に広がりつつある新たな概念、「コネクテッドコマース(Connected Commerce)」を取り上げる。
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Firework Japan株式会社の瀧澤優作です。連載第1回ではTikTok Shopの衝撃と共存の可能性について、第2回ではライブコマースの歴史的変遷について解説いたしました。第3回となる今回は、米国市場で急速に広がりつつある新たな概念、「コネクテッドコマース(Connected Commerce)」について掘り下げます。日本ではまだ耳慣れない言葉かもしれませんが、これは従来の「商品情報管理(PIM)」の概念を大きく拡張し、ECビジネスの収益構造を変える重要なキーワードです。なぜ今、米国でこの概念が注目されているのか。その背景と本質を紐解きます。
瀧澤 優作/Firework Japan株式会社 慶應大学在学中にシリコンバレーへ留学し、2017年、創業3カ月のFireworkに7人目のメンバーとして参画。2021年よりFireworkの日本事業立ち上げを指揮。2024年までカントリーマネージャーとして、統合型動画ソリューション「Firework」の日本市場立ち上げを推進。現在はFireworkのGlobal Revenue Operationを統括。
管理コスト削減から、売上創出のための「資産運用」へ
ECサイト、実店舗、ソーシャルメディア、マーケットプレイス――。顧客との接点が多様化する現代において、ブランドが直面している最大の課題は、「あらゆる接点で、一貫したリッチな顧客体験をいかに提供するか」という点にあります。この課題解決の手がかりとして、米国で台頭しているのが「コネクテッドコマース」です。1. コネクテッドコマースとは何か? PIMとの決定的な違い
コネクテッドコマースを理解するためには、その前身とも言えるPIM(Product Information Management:商品情報管理)との違いを知る必要があります。従来のPIM:目的は「利便性」と「コスト削減」これまで、PIMなどのツールは主に「管理工数の削減」を目的として導入されてきました。商品名、スペック、画像などの基本情報を一元管理し、各プラットフォームへ効率的に配信(シンク)する。これにより、運用担当者の手間を減らす「利便性」こそが最大の付加価値でした。コネクテッドコマース:目的は「レベニュー(売上)」と「LTV向上」一方、現在米国で起きている変化は、この商品情報の流通を単なる管理業務から、「売上(Revenue)や顧客生涯価値(LTV)を上げるための攻めの施策」へと昇華させる動きです。単なるスペック情報だけでなく、ショート動画、UGC(ユーザー生成コンテンツ)、レビュー、そして顧客の購買データといった「売上に直結するリッチな情報」を統合し、自社ECサイトだけでなく、卸先のリテーラーサイトやSNSなど、あらゆる販売チャネルに流通させる。これがコネクテッドコマースの本質です。2. なぜ今、米国でコネクテッドコマースが急拡大しているのか
米国市場において、この概念が急速に支持されている背景には、大きく4つの要因があります。 広告費の高騰と「ミッドファネル」への回帰Facebook広告やGoogle広告などのCPM(インプレッション単価)やCPA(獲得単価)が高騰し続けています。獲得効率が悪化するなかで、企業は「広告で集客して終わり」ではなく、サイトに来訪した顧客のコンバージョン率(CVR)やLTVを高めるミッドファネル施策に注力せざるを得なくなっています。リッチなコンテンツを各チャネルに配置し、購入率を高めることが死活問題となっているのです。 UGCと動画が「売れる」実績を作ったD2Cブランドを中心に、UGCや動画コンテンツを活用することで、ECの売上が向上することがデータとして証明されつつあります。自社D2CサイトでのPDCAによって「動画を入れたらCVRが上がった」という実績が出れば、ブランドはその成功体験(コンテンツ)を、自社サイトだけでなくAmazonや卸先の小売店サイト(リテーラー)にも展開したいと考えます。成功した施策の横展開ニーズが、コネクテッドコマースを後押ししています。 オムニチャネル化による「体験の分断」を防ぐ消費者は今、Amazon、D2Cサイト、百貨店のEC、実店舗と、あらゆる場所で商品を比較検討し、購入します。その際、チャネルによって情報量やブランド体験に差があると、顧客は違和感を覚え、離脱する場合があります。「どこで見ても、同じ熱量で商品の魅力が伝わる状態」を作ることが、ブランドへの信頼と購買に繋がります。 ブランド独自のAI資産の活用生成AIの普及も関わっています。ChatGPTやGoogle Geminiなどのプラットフォーム側が提供するAIだけでなく、ブランド側が育てたAI(商品知識や接客ノウハウを学習させたもの)を、自社サイトやほかのプラットフォームに流通させたいというニーズも、コネクテッドコマースの一環として生まれ始めています。
