「娘の幼稚園のお友達がドラマに出ている!」…華やかな活躍の裏で、親は苦慮。4歳児の〈子役〉にかかるシビアな税金
生まれてから死ぬまで、それぞれのライフステージごとにさまざまな納税イベントが発生します。私たちは「いつ・どこで・どんな」税金を払っているのでしょうか。本記事では、木山泰嗣氏の著書『ストーリーでわかる 0歳からの税金』(青春出版社)から、意外と知らない「子どもにまつわる税金」のルールを、事例とともに紐解きます。
祝・七五三!お祝い金を受け取ってもまさか課税されないよね?
「しちごさん? なにそれ?」と、おおはしゃぎのAちゃんも3歳になりました。七五三は、日本独特のお祝いです。それぞれの両親も集まり、早い孫の成長に祖父母たちは目をほそめています。
Aちゃんは、ご近所にある大好きなレストランチェーン店の入口に飾ってある有名なキャラクターのケーキや千歳飴をもらい、ご満悦のようです。
Aちゃんの祖父母たちは、お祝いをくれました。宴がおわって封をあけると、けっこうな額が包まれていました。もちろん、お祝いの常識の範囲内の額ではありますが……。でも、これってたくさんもらってしまうと、贈与税がかかったりしないよね? Aちゃんのお母さんは、少し心配そうな顔をしています。
さて、お祝いでもらったお金には、税金がかかるのだろうか?
個人が個人から無償で受け取るお金には、「贈与税」がかかるのが原則だ。もっとも、会社から支給される給与とは異なり、個人間で源泉徴収のような天引きはできない。
だから、贈与税については、暦年課税とされていて、その個人が1年の間に個人からもらった贈与の額を集計し、翌年3月15日まで(土日の場合は翌月曜。以下同じ)に税務署に自分で確定申告する。そのときに税額が計算されるので、必要な贈与税を納めるという仕組みである。
こんな話を聞くと、でもみんな贈与税の申告なんてしているのか? 申告しないで税務署に知られたら「追徴税」とかがかかってしまうのだろうか……?と不安になるかもしれない(追徴税とは、本来払うべき税金に加えて、適正な申告をしなかったことに課される「加算税」や、期限までに納税しなかったことに課される「延滞税」など)。
贈与税には基礎控除があるうえ、七五三のお祝い金は「非課税」
実際には「1年間にこの額までなら、贈与を受けても贈与税はとりませんよ」という基礎控除がある。
で、基礎控除の額っていくらなの?と気になると思うが、なんと1年で110万円もある。ということは、多くの人が心配するような贈与の額など、ほとんどがこの基礎控除の枠内のはずで、贈与税はかからない。
これを聞いて安心した読者には、さらなる朗報がある。朗報といっても、昔から決まっていることだが、七五三のお祝い金などについては、国税庁の通達というものがあるのだ。
具体的には「社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い」という規定がある。国税庁ホームページで読める、この通達には「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする」と定められている(相続税法基本通達21の3−9)。
結論として、七五三のお祝いは、常識の範囲内の金額であるかぎり、個人が個人からもらった贈与でも課税はされない。
お友達が芸能人に!子役のギャラにかかる税金は誰が払う?
4月から幼稚園に通っています。たくさんのお友達ができて毎日楽しいけど、ひとりでやらないといけないことも多くて大変です。というのは、Aちゃん。
夜ごはんを食べながら家でテレビをみていたら、みたことのある子が画面に映っているのをみつけました。なんとGくんが、ドラマに出ている!
Gくんは、同じクラスの面白い子。びっくりしてお母さんに聞いてみたら「あの子は、子役で芸能のお仕事もしているの」と教えてくれました。
どうやったらそんなお仕事ができるのかわからないけど、わたしたちがいま準備しているお遊戯会のパン屋さんだって大変なのに、すごいなあ。
幼稚園に通うAの同級生のGは、早くも仕事をしている。子役の芸能活動をしているGが所属事務所から受け取るギャラにも、税金の支払いは必要なのか?
個人が得た所得には、所得税がかかるのが原則だ。4歳の子役となると、未成年者のため、そもそも仕事をして賃金をもらえるのかという疑問も起きるかもしれない。といっても、現実に子役で活躍している芸能人の顔が浮かぶ読者も多いだろう。ということは、法律で禁止されているわけではなさそうだ。
所得税が発生するラインは所得の種類によって異なる
労働基準法では、最低年齢の規定があり「使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない」とある(労働基準法56条1項)。
例外として、いくつかの職業では「児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なもの」であれば、行政官庁の許可を受けて、13歳以上の児童を学校の修学時間外であれば使用できる(同条2項前段)。
といっても、Gは4歳である。法律で禁止されているのではないか?
労働基準法では「映画の製作又は演劇の事業」の場合は、13歳未満の児童にも例外が適用される(同条2項後段)。ということで、法律面では手当を受け取るかぎり、子役の仕事は認められる。そうなると、所得税を納める必要があるのだろうか? 芸能事務所との契約が「雇用契約」なら、「給与所得」として課税される。つまり、給与が支払われる際には源泉徴収がされる。
これに対し、個人事業の扱いなら、「事業所得」として確定申告が必要だ。
給与所得か事業所得かの違いは、契約内容や労務提供の仕方などにより判断がわかれるので、内容次第だが、事業といえるにはそれなりの収入と継続性が必要だ。給与所得でなく事業所得ともいえない場合は「雑所得」にあたる。
もっとも、給与所得には「基礎控除」と「給与所得控除」があり、123万円までは原則として所得税は発生しない。1年間の収入次第だが、合計所得⾦額が132万円以下なら、基礎控除が増え、160万円までは所得税がかからない。
事業所得や雑所得の場合も、同じように基礎控除はあるが、給与所得控除はない。ただし、実際に払った経費を収入から引ける。
以上の話は、子役の所得は親の所得でないことを前提にしている。事業所得や雑所得にあたる場合、未成年の子役の親が親権者として代理人となり確定申告をする。
木山 泰嗣

