「日本各地でオーロラが見えた」太陽フレアにともなう磁気嵐の影響 通信障害の心配は? GPSの精度が下がる?
太陽フレアにともなう磁気嵐の影響で、おととい(12日)日本各地でオーロラが観測されました。昨夜(13日)も期待されましたが、国内で観測できたという情報は入っていません。
【写真を見る】コロラド州と北海道で撮影された「赤く美しいオーロラ」11/9に観測された「太陽フレア」【図解】なぜオーロラが?
いっぽう、通信障害など私たちの生活に影響はあるのでしょうか。
12日 北海道で「オーロラ」
おととい(12日)午後6時45分ごろ、北海道・安平町で撮影したオーロラです。
安平町は、北緯42.47度。ふだんはオーロラは見えません。
こちらは、日本時間のおととい(12日)12時半ごろ、コロラド州ボールダーで撮影されたオーロラ。
ボールダーは北緯40度で、日本では青森とほぼ同じ緯度。やはり、普段オーロラは見られない地域です。
今回は、さらに緯度が低いフロリダでもオーロラが観測されました。
なぜ「低緯度オーロラ」が?
低緯度オーロラを出現させているのは、太陽フレアという現象です。
天文学に詳しい山陽学園大学地域マネジメント学科講師の米田瑞生さんに聞きました。
──太陽フレアとはどのような現象なのでしょうか。
山陽学園大学 米田瑞生さん
「現在の太陽は、とても活発な状態です。
現在は、黒点の観測だけでなく、様々な観測で太陽の活動が監視されています。特に太陽を人工衛星からX線で観測すると、そのダイナミックな変化がよく分かります。
黒点周辺にエネルギーが蓄えられて、それが宇宙空間に放出される時、X線でその活動領域が明るく輝くのです。この現象を太陽フレアといいます」
Xクラス(最強クラス)の太陽フレアを観測
──今回観測された規模と地球への影響は?
山陽学園大学 米田瑞生さん
「11月9日から10日にかけて、Xクラス(最強クラス)のフレアが2回、地球の真正面で発生しました。11日にもフレアが発生し、Full_Halo型と呼ばれるCME(コロナ質量放出)が発生しました。
Full-Halo型は、太陽からフレアに伴って物質が大量に全方向に放たれたことを意味し、確実に地球に影響があるということです。
9日に発生したフレアの影響で、秒速約700kmの太陽風が地球に到達して発生したのが、12日の磁気嵐です。日本でも低緯度オーロラが見えました。
きのう(13日)は、収束傾向となりました」
磁気嵐の状況は?
──きのう(13日)も日本でオーロラが期待されていましたが…
山陽学園大学 米田瑞生さん
「フレアの第2, 3段で発生したCMEで放たれたプラズマが、順次到達しているのか、一旦収束に向かった磁場の擾乱・変化が、きのう(13日)また激しくなりつつある兆候がありました。
しかし、昨夜は北海道でもオーロラは見えなかったようです。『回復相』に入ったようです」
なぜ低緯度でもオーロラが見えた?
──大規模な太陽フレアが発生すると低緯度オーロラが見えるのはなぜ?
米田瑞生さん
「普段から、地球は太陽からのプラズマを浴びて、それが北極・南極上空に集まり、オーロラが発生していますが、太陽フレアに伴う大量・高エネルギーのプラズマが、地球に到達すると、非常に明るいオーロラが発生することがあります。
これを、オーロラブレークアップと言います。明るいオーロラが発生するだけでなく、普段はオーロラが見えないような、北極・南極から離れた、比較的低緯度の場所でも、オーロラがうっすら見えるようになります。
低緯度では、赤くぼんやり見えることがあります」
太陽フレアの影響で「大規模な通信障害」が起こることも
──通信障害の心配もあるのでしょうか?
米田瑞生さん
「フレアに伴って、太陽のプラズマ(水素のガスが電離して、水素イオンと電子に分かれた状態のもの)が宇宙空間に放出されます。これをCME(コロナ質量放出)と呼びます。
このCMEのプラズマが地球を直撃したとき、磁気嵐が起きます。磁気嵐が発生すると、地球の周囲には強力な電流が流れます。
この電流が磁場を作り出します。磁気嵐の規模は、オーロラの他、地上で磁場を計測することでも把握することができます。
磁気嵐の影響で、過去には大規模な停電や通信障害が起こったこともあります」
宇宙天気予報の地磁気擾乱のシミュレーションでは、12日から13日にかけて『猛烈に活発』でしたが、現在は『静穏』です。
GPSの精度が下がる影響も?
──以前は、磁気嵐でGPSの精度が下がるなどの影響があったようですが…?
米田瑞生さん
「GPS(衛星測位)は、人工衛星から送られた電波が地上の受信機に届くまでの時間を測り、その時間から距離を求めるしくみです。
この電波は宇宙空間・電離圏を通って地上に届きますが、電離圏では電波の速度がわずかに遅くなります。
太陽フレアが発生すると、電離圏の厚さや状態が大きく変化し、電波の遅れ方も普段とは異なってしまいます。
その結果、距離の計算に誤差が生じ、測位精度が悪化します。ただし、この電波の遅延量は、使用する周波数によって異なります。
そこで、GNSSでは複数の周波数の電波を同時に使い、その遅延の差を比較することで、電離圏による影響を補正できます。
この仕組みのおかげで、太陽フレアの影響があっても、通常通りの高い精度で位置を測ることができます」
飛鳥時代や江戸時代にもオーロラが観測された
米田瑞生さん
「飛鳥時代や江戸時代、磁気嵐発生時には『珍しいことに夜空に赤い光が見えた』といった、オーロラの目撃情報が記録されていますが、電気に依存した現代社会では、生活への影響も警戒する必要があります」
「とはいっても、普段は北極・南極圏でしか見られないオーロラを見たいと思うのが、本音ではないでしょうか。日本で見えるとすれば、北の空にうっすら、赤く見える可能性が高いです」
米田瑞生さんプロフィール
2002年4月 - 2006年3月 東北大学理学部宇宙地球物理学科
2013年6月 - 2017年6月 ハワイ大学天文学研究所客員研究員
2015年4月 - 2017年9月 東北大学大学院理学研究科客員研究者 (博士(理学))
2023年4月 - 現在 山陽学園大学地域マネジメント学科講師
主に太陽系内外の惑星・衛星の大気・磁気圏について、研究。特に木星の衛星イオの火山活動がどのように変動しているか、その詳細を調査。イオの火山の研究には、東北大学にいたころに、マウイ島にあるハワイ大学の施設内に設置した望遠鏡を使っている。
若い頃には高山病と闘いながら、チリ・アタカマ砂漠にある、東京大学アタカマ天文台での観測研究に従事。また、現職の山陽学園大学では情報関連の教育に従事する一方、特別な場所・施設でなくても、観測できる現象を調査すべく、「晴れの国」のメリットを活かして、低コストで流星を観測する方法を模索中。

