自民党総裁候補&歴代総理大臣の学歴と全然違う…日本人ノーベル受賞者の「出身高校・大学」の意外な共通点
■自民党総裁候補&歴代首相&ノーベル受賞者の「出身高校・大学」
今年もノーベル賞受賞者が発表される時期となった。日本人の受賞者が出るかが話題となるのは年中行事のようである。そういう時期に合わせ、今回は、過去の日本人ノーベル賞受賞者の出身高校・大学データから受賞者の特性を探ってみよう。
本題に入る前に、基本認識として、国別のノーベル賞受賞者数を振り返っておこう。
図表1にはノーベル賞受賞者の国別ランキングを掲げた。ここでは自然科学系3分野についてのランキングを掲げ、文学賞、平和賞、経済学賞は性格が異なるので対象から省いている。

ノーベル賞発足からの累計では、米国人が282人と総計653人の43.2%と4割以上を占め最も多い。特に戦後だけをとると米国人が264人であり、総計512人中51.6%と5割を超えているのが目立っている。
米国は日本の南部陽一郎博士、中村修二氏のように海外生まれだが米国籍を取得した多くの学者を擁しており、カウントが基本的に国籍ベースなので、その点からも獲得数が多くなっている。なお、ここでは日本人だけは国籍が米国でも日本に計上している。
第2位以下は、英国が87人、ドイツが73人、フランスが38人と続き、日本は25人で第5位となっている。
戦前はドイツが最も多く、英国、米国、フランスと続いていた。日本はゼロだった。
戦後の受賞者数では日本はフランスを上回る第4位である。
今世紀(2001年以降)に入ってからは、米国の87人に次ぐ19人と英国と並ぶ世界第2位であり、フランスの13人、ドイツの10人をかなり上回っている。少し前まで日本人の受賞実績が世界の中でも特に目立っていたことがうかがえる。2024年には2人の英国人が受賞したので、日本の順位はそれまでの単独2位ではなくなった。
■地方の県立高校出身者ばかりのノーベル賞受賞者
日本人のノーベル賞受賞者(国籍が海外を含む)の出身高校と出身大学を一覧表にした(図表2)。

出身高校を見ると、ほとんどが、地方の県立高校である。私立は江崎玲於奈(敬称略、以下同様)の私立同志社高校と野依良治の私立灘高校のみであり、東京は、驚いたことに、利根川進の都立日比谷高校のみである(注)。
(注)ただし、利根川進も父が地方の工場長だった関係で、小1から中1まで富山県上新川郡大沢野町(現在の富山市)で、中2までは愛媛県西宇和郡三瓶町(現在の西予市)で過ごしたという(ウィキペディア)。
しかも、早い時期には、東京でないまでも、大阪や京都も多かったが、近年では、それ以外が多くなっている。
近年では、東大合格者ランキングの上位に顔を出すような高校の出身者はまったくいない。都会ずれせず、地方で思いを凝らし続けた高校生でないとノーベル賞にまでは達しないようだ。
出身大学を見ると、これまた驚いたことに、私立大学出身者が一人もおらず、すべて、国立大学出身者である。国立大学の中でも、当初は、京都大、東京大が多かったが、近年では、地方の国立大学出身も増えている。ノーベル賞は、各界に多くの人材を輩出している慶應、早稲田といった有名私立大には無縁の世界となっている。
自然科学分野のみで京都大と東京大をカウントすると、京都大が8人、東京大が6人と京都大優位である。益川敏英、小林誠、山中伸弥の3氏は、それぞれ、元・京都大基礎物理学研究所長、元・京都大理学部助手、現・京都大iPS細胞研究所長なので、在籍したことがあるゆかりの者というレベルでは、京都大が11人と東京大を圧倒している。
受験競争に勝ち抜くというパターンからは、やや、ベクトルのずれた方向の先にノーベル賞があるようだ。
自然科学分野のノーベル賞受賞者を一人も出していない韓国では日本人の受賞者が発表されるのを複雑な気持ちで見守っている。韓国でも基礎研究にもっと力を入れるべきだという前向きな受け止め方ももちろんある。2019年の受賞者発表に際して韓国の主要新聞の1つである中央日報は社説で次のように論じている。
日本でも私立の受験校には似たような反省が必要なのかもしれない。日本でここ数年ノーベル賞受賞から遠ざかっているのは、日本も韓国に似てきているからと考えることもできよう。
関連して、今年の日本人ノーベル賞受賞者候補の出身高校と出身大学を見ておこう(図表3)。

出身高校については、私立の2人を除くと、すべて、県立、都立、市立の公立高校となっている。過去実績と同じ傾向が見て取れる。
出身大学については、私立が2人であり、地方の国立大も多い。東大と京大については、相変わらず京大が圧倒している。
■イグノーベル賞でも多い県立高校出身受賞者
ノーベル賞のパロディーとして「人々を笑わせ考えさせた研究」に与えられる賞としてすっかりおなじみとなったイグノーベル賞には日本人研究者の受賞が多く、ノーベル賞に先立って発表されるのが通例となっている本年の受賞者は、兒嶋朋貴(農業・食品産業技術総合研究機構)らの「ウシにシマウマのような縞模様を描くことでアブに刺されるのを避けられるかを検証した実験」だった。日本人の受賞は2007年から19年連続となった。
ノーベル賞と同じように日本人受賞者の出身高校・大学を調べてみると、ノーベル賞よりは私立高校出身者も多く含まれるが、やはり県立高校出身者が多くなっている(図表4)。上で紹介した本年の受賞者の研究代表者の兒嶋氏も県立旭丘高校(愛知県)を経て京大卒業という学歴を有している。ノーベル賞と同じ理屈が働いていると言えよう。

■総理大臣には県立高校出身者はいるか?
現在、石破茂首相の辞任表明を受けて、自民党の総裁選が5人の候補者で行われている。ノーベル賞やイグノーベル賞と比較して県立高校出身者はどのくらいいるのであろうか。この点が気になったので調べてみた。
図表5には、石破現総理までの13人の総理大臣の出身高校・大学を掲げた。

最近では菅義偉元総理の県立湯沢高校など県立高校出身者の総理もかなりいるが、東京の私立高校や都立高校も多い。これは、世襲政治家の場合、親が東京にも住んでおり、子どもを東京の高校に通わせる場合が多いからである。
選挙区と高校の所在地が一致している場合は、地元での選挙で同級生などが強力な応援団を形成し、連続当選にとって有利であり、それが総理への道にもつながっているだろう。高校が地元でなくとも親の地盤を若い頃に引き継ぐ場合はその限りでない。いずれにせよ、当選回数の年功序列が自民党の組織体質なので連続多数回当選が総理への王道となっているである。
大学はノーベル賞受賞者と異なり、東大、京大は圧倒的に少ない(というか京大はゼロ)。表の中では鳩山由紀夫が東大出身だけである。鳩山氏以前の東大出身総理は第78代宮澤喜一、第71代中曽根康弘元総理まで遡る。中曽根元総理まで遡っても東大出身はいても京大出身総理は皆無である。この点、ノーベル賞受賞者で京大が多いのとは全く対照的である。
「羽鳥慎一モーニングショー」のレギュラーコメンテーター玉川徹氏はなかなかの理論家で人気もあるが、京大出身者なので政治家に転身したとしても総理大臣は無理だろう(これは冗談)。
また、出身大学が早稲田、慶應という総理が非常に多い。優秀さも適度でないと総理にはなれないのかもしれない。
最後に、現在、自民党総裁選を戦っており、このうちから総理大臣が生まれる可能性が高い5人の候補者の出身高校・大学を図表6に掲げた。

出身高校は県立高校が結構多い。私立は小泉候補と、小林候補のみであり、残りの3人は各選挙区の県立高校である。県立高校出身候補の国政選挙での当選回数の多さが目立っているが、これが党内の立場を強固なものにしている原動力となっている。
なお、東大かどうかという点、あるいは学業の優秀さは必ずしも総理大臣につながるものではないことは、上で述べた過去実績からも明らかである。

なお、現在の自公政権が国会で過半数を下回っているので、突拍子もない状況が連立政権の組み直しの中で生じ(社会党委員長の村山富市総理誕生のときのように)、野党の党首が総理大臣になる可能性がゼロではない。
そこでそうした可能性のある野党3党の党首の選挙区、出身高校、出身大学をそれぞれ挙げておくと、
立憲民主党・野田佳彦氏:千葉選挙区 県立船橋高→早稲田大
国民民主党・玉木雄一郎氏:香川選挙区 県立高松高→東大
参政党・神谷宗幣氏:福井選挙区 県立若狭高→関西大
である。いずれも県立高校出身者である。
何やかやで社会に大きな影響力をもっているのが各地方の県立高校と言えよう。
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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『統計で問い直す はずれ値だらけの日本人』(星海社新書)。
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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)
