東京V戦で負傷交代のシュミット。怪我の状態が心配される。写真:鈴木颯太朗

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 天皇杯のラウンド16で、8月13日に味の素スタジアムで東京ヴェルディ対名古屋グランパスの一戦が行なわれた。

 名古屋は同スタジアムで2015年5月23日から10年以上も勝利しておらず、“鬼門突破”に燃えていた。そしてスタメンには、GKシュミット・ダニエルが名を連ねた。

 ご存じの通り、シュミットは今季から名古屋に加入。2019年夏以来のJリーグ復帰で、その活躍が注目されていた。

 しかしながら、1月の沖縄キャンプ中に右膝内側半月板を損傷。開幕に間に合わず、3月29日の横浜FC戦で復帰したものの、5月頭の練習中に右臀部を肉離れ。再び長期離脱を強いられた。

 そこから19歳のピサノ・アレクサンドレ幸冬堀尾が台頭。6月末にシュミットが戻ってきた時には絶対的な守護神に君臨していた。「Jリーグで再起を図り、2026年北中米ワールドカップの挑戦権を掴みたい」と考えていたはずのシュミットにとっては難しい状況だった。

 そのピサノが7月のE-1選手権に臨む日本代表に選ばれ、香港戦でデビューしたことで、シュミットの立場はより険しいものとなった。だからこそ、彼としてはゼロから実績を積み上げ、長谷川健太監督の信頼を得るしかない。
 
 7月16日の天皇杯3回戦のロアッソ熊本戦で約3か月ぶりの出場を果たし、勝利に貢献したところから足場固めを再開。今回の東京V戦で2度目のアピールの場を得ただけに、完封勝利を手にしたかった。

 だが、開始早々の12分、名古屋はいきなり新井悠太に先制点を奪われてしまう。対面に位置していた内田宅哉がかわされてシュートを決められた。

 それでも、シュミットは気持ちを切らさず、熊取谷一星の決定機を阻止すれば、平川怜のミドルシュートにも確実に反応してみせる。名古屋の攻撃陣も意地を見せ、内田が前半のうちに同点弾をゲット。1−1で後半に突入した。

 迎えた68分だ。野上結貴のバックパスを受け、左に展開したシュミットは左足を押さえてピッチにうずくまった。なかなか起き上がることができない。結局、プレー続行不可となり、本人は担架に乗せられて退場したが、両手で顔を覆う姿からは悔しさと失望感が色濃く見て取れた。

 名古屋はその後、森島司が奪ったPKを稲垣祥が決め、2−1で勝利して鬼門を突破。次のステージに進んだ。シュミットにとっては救いとなったはずだが、気になるのは怪我の具合だ。長谷川監督は「今は分からない。簡単には戻って来れそうにないという感じはします」と顔を曇らせており、予断を許さない状況なのは確かだ。
 
 ちょうど2年前の2023年夏、シント=トロイデンからフランス1部メスへの移籍話が破談になってから、シュミットの歯車が狂った。シント=トロイデンで3か月間、事実上の戦力外のような扱いを受け、24年1月に同じベルギー1部のヘントに新天地を見出したが、そこでもコンスタントな出場は叶わなかった。そして今季の名古屋では怪我続き。人間的に優しすぎるタイプのシュミットは、負の連鎖を受け止めきれないかもしれない。

 それでも、続いていくのがサッカー人生だ。左太もも裏をテーピングして帰路に着いたという情報もあり、怪我は想像より軽傷の可能性もある。名古屋は今後、J1と天皇杯を掛け持ちすることになるが、何とかシーズン中に間に合ってほしい。それは彼を取り巻く全ての人間が熱望することである。

「カタール・ワールドカップに行ったことは誇りに思うし、嬉しいし、『よくやったな』という気持ちはあります。でも、悔しかった。やっぱり試合に出ないと意味がない。次の2026年北中米ワールドカップに選ばれなかったら、カタールに行けた意味もない。とにかく成長して、3年半後の大舞台に立ちたいと強く思います」
 
 2年前の彼はこう話していたが、その目標がある限り、足を止めてはいけない。当時より道のりが険しくなったかもしれないが、今は前だけを見て、早期回復に努めるしかないのだ。

 幸いにして、シュミットの近くには楢崎正剛GKコーチがいる。楢崎コーチも長いキャリアの中で浮き沈みを味わい、幾度も怪我に苦しんできた。ジュビロ磐田の川島永嗣が、川口能活GKコーチと共闘することで力強く前進できているように、シュミットも楢崎GKコーチから得られるものは少なくないはずだ。

 そういった環境も味方につけ、シュミットはまず心身両面を整えることが肝要だ。メンタル的に難しいのは間違いないだろうが、何とか乗り越えて、力強く活路を見出してもらいたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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