今や日本の国民食となったラーメン。人々の心を掴むにいたった理由はさまざまにあるが、おいしさを求めた先達の志が大きいのは言うまでもない。スープ、醤油ダレ、麺、具材……開店して10年以上に渡って食べ手の胃と心を掴み続けている店がある。ここからは編集スタッフが「醤油ならやっぱりここ!」な名店を集めてみた。

スープ、醤油、鶏油が織りなす至福の旨さ『ラーメン屋 トイ・ボックス』@三ノ輪

素材は水と鶏のみ。それが店主・山上さんのポリシーだ。比内地鶏や川俣シャモ、山水地鶏に淡海地鶏の丸鶏やガラを寸胴で合わせ、純度の高い水で沸騰する直前の94度を保ちながらじっくり7時間かけて炊き上げたスープは、身体にスッと沁み込むような、きれいな旨みに満ちていた。

醤油ラーメン1200円

『ラーメン屋 トイ・ボックス』醤油ラーメン 1200円 しっとりキメ細やかなチャーシューも抜群の旨さ。鶏油によって最後まで熱々だ

単一食材でありつつも、これだけ複雑な味わいを組み立てているのは醤油の力だろう。生揚げ醤油や生醤油など10種類を駆使したかえしで、キレや甘み、長く続く余韻までも表現している。そして表面を覆っている黄金色の層はスープをとる際に素材から抽出した鶏油。啜り心地の良い細ストレート麺を箸で持ち上げるたびに絡みつき、その香りと分厚いコクが小麦の甘みや風味を支えていた。

緻密に作り込まれた完成度の高さに思わずため息。こんな1杯が待っているのなら、行列だってなんのそのだ。

『ラーメン屋 トイ・ボックス』店主 山上貴典さん

店主:山上貴典さん「味玉やワンタントッピングもおすすめです」

『ラーメン屋 トイ・ボックス』

[住所]東京都荒川区東日暮里1-1-3
[電話]03-6458-3664
[営業時間]11時〜15時、18時〜21時※土・日・祝は昼のみ
[休日]月(祝は昼のみ営業、翌火休)、第2・4火
[交通]地下鉄日比谷線三ノ輪駅3番出口から徒歩3分

進化を続ける名店が作り上げた今の味『麺処ほん田』@秋葉原

その凛とした佇まいに思わず見惚れてしまった。2008年に若干21歳で店を立ち上げラーメン業界を沸かせた店主・本田さんが作る今の一杯だ。

“今の”というのも日々素材を追求し、味をブラッシュアップさせているから。変化を繰り返しながらも「日本一の醤油ラーメンを作りたい」という想いは創業当時のままだ。

醤油1200円

『麺処ほん田』醤油 1200円 麺は3種類の国産小麦粉をブレンドし、甘みや香りを表現する

スープは地鶏のガラや丸鶏にゲンコツで厚みを持たせた動物系に、魚介節のダシを合わせたWスープ。浮かべるのは、店内の工房で打った国産小麦粉の自家製麺。長めにこしらえたそれを勢いよくズバズバッとやれば、鰹節や煮干しの香りが鼻から抜けて、後からじわじわとやってきた鶏や豚のコクで頬の奥がキュッと引き締まる。

塩分も油分もおだやかで、クラシカルな中華そばの風情がありつつも、本田流のエッセンスを効かせたこの一杯に見事に心を絡め取られてしまった。

『麺処ほん田』料理長 高森隆太郎さん

料理長:高森隆太郎さん(※高は本来はしごだか)「肉めしや担々丼とセットでいかが?」

『麺処ほん田』

[住所]東京都千代田区神田花岡町1-19
[電話]070-7793-3979
[営業時間]11時半〜15時、18時〜21時LO
[休日]水、月の夜
[交通]JR山手線ほか秋葉原駅中央改札口から徒歩1分

今や常識の手鍋式スープはここから始まった『中華そば多賀野』@荏原中延

「荏原中延に、東京でもトップレベルの中華そばを出す店がある」

噂はずっと聞いていたが、今回が多賀野初体験。軽い気持ちで中華そばを啜ったが、そのおいしさに度肝を抜かれた。まずスープ。存在感はあるが決して嫌みのない煮干しの香り、真っすぐできれいな鶏の旨み、後からカツオの旨みも重なって、それらを醤油が優しくまとめていて…ただただ旨い。

中華そば950円

『中華そば多賀野』中華そば 950円 岩中豚を使ったチャーシューは脂のおいしさがガツン

聞けば手鍋に丸鶏や豚げんこつで摂った基本のスープを注ぎ、煮干しのダシを注ぐ。そこへ追いカツオ、追い煮干しをすることで香り良く深みのある味わいが生まれるのだそうだ。そして麺。自家製の啜り心地の良い麺は、へぎそばを参考に布海苔が練り込まれており、歯切れもパツンと気持ちよく、スープとの絡みも抜群だ。

完成度の高さに、創業が28年前と知ってまた驚かされた。「旨い」の噂は信じて吉。そう痛感した一杯だ。

『中華そば多賀野』店主 高野多賀子さん

店主:高野多賀子さん「比較的並びやすいのは平日のお昼過ぎです。休日は早目のご来店を!」

『中華そば多賀野』

[住所]東京都品川区中延2-15-10
[電話]03-3787-2100
[営業時間]11時半〜14時半(整理券制、並び次第で終了)
[休日]水
[交通]東急池上線荏原中延駅から徒歩2分

多くの素材を駆使した重層的な旨み『麺処 びぎ屋』@学芸大学

駅から伸びる商店街の奥に暖簾を出して今年で16年目。今じゃ3世代で来てくれるファンもできたとか。

開店当初からメニューは醤油に限定。かえしは濃口や甘露など4種類の醤油を合わせてから2週間寝かせて角を取り、鶏ガラに豚骨といった動物系と、煮干しに宗太などの魚介節を合わせたスープは、じわりと舌に染み入るような深みがある。

醤油らーめん半熟味付玉子入り1000円

『麺処 びぎ屋』醤油らーめん半熟味付玉子入り 1000円 煮豚のバラと焼豚の肩ロースがのる。啜れば魚介節を使った香味油の香りが広がる

これほど多くの素材を駆使しつつも、どれもが主張しすぎず、まん丸の円を描くように成り立った調和の妙に舌を巻く。

さらに全粒粉の星が浮かぶ細麺は、なめらかな肌の啜り心地が官能的でありながら奥歯でコリッと音鳴るコシで粋な風情。小麦の風味や甘みによってさらにスープの味わいが膨らんでいく。

サイドには店主の故郷、駿河湾直送の釜揚げしらすを乗せたご飯も用意しており、おだやかな磯の風味がこのスープのお供にぴったりだ。

『麺処 びぎ屋』店主 長良貴俊さん

店主:長良貴俊さん「醤油つけ麺もおすすめです!」

『麺処 びぎ屋』

[住所]東京都目黒区鷹番2-4-9
[電話]03-5722-1669
[営業時間]11時半〜14時45分、18時〜21時
[休日]不定休
[交通]東急東横線学芸大学駅東口から徒歩5分

撮影/西崎進也(トイ・ボックス)、小島昇(ほん田)、鵜澤明彦(多賀野)、浅沼ノア(びぎ屋)、取材/菜々山いく子(トイ・ボックス、ほん田、びぎ屋)、荒川友吾(編集部)(多賀野)

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