半導体は好不況の振れ幅が大きい事業であり、企業そのものに大きな融資を付けるのは銀行にとってもリスクが大きい。だが、半導体業界の競争を生き残るには、不況の時でも投資し続けることが必要。

 その意味で、今回のスキームを活用することでキオクシアは設備を担保に資金調達ができ、SMBCは設備の価値をきちんと見ることで与信リスクを低減させることができるという形で両社にとってプラス。

 ただ、過去に前例のない取り組みだけに行内からは「本当に大丈夫か?」という懸念の声が上がった他、3社の実務上の枠組み構築やキオクシアとの契約など、作業は容易ではなかった。

 関係部署を説得し、銀行の自己査定上の担保として見ることができるように行内ルールを整備するといった作業も行った。

 この先はキオクシアとも合弁を組む米ウエスタンデジタルや、最先端半導体の国産化を目指すラピダスなど、補助金を受けている他の半導体メーカーへの提案を視野に入れている。

 さらに、生成AIに必要な高性能半導体を大量に運用する「AIデータセンター」や、金額自体は大きくないが、建設機械や工作機械への活用も検討中。いかに設備の価値を評価するかがカギを握る。

 一般的に銀行は「石橋を叩いて渡らない」などとも言われるが、SMBCでは「業界初」など新たな取り組みが称賛される文化があり「できない理由を並べるのではなく、できる方法を考えよう」という風土がある。

 黎明期のプロジェクトファイナンスで頭角を表した経験を持つ前三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)社長の太田純氏(故人)を始め、現SMFG社長の中島達氏、SMBC頭取の福留朗裕氏など経営トップも、半導体関連の新たな取り組みを後押してきたことも大きい。

「日の丸半導体」復活に向け、銀行も知恵を絞り続けることが求められている。