【素朴な疑問】MT車、変速しなかったらどうなる?

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ほぼすべての車にはトランスミッション(変速機)が備わっていて、MT車やAT車の場合は基本的にローギア(1速)で発進しますよね。ベルトで無段変速するCVT車の場合は“仮想ローギア”といえる状態で発進します。

で、通常は速度に応じて2速、3速とギアを上げていく(CVT車の場合は無段階で変速していく)わけですが、仮に変速しなかったらどうなるのでしょうか?

たとえば、高速道路をローギアのまま走り続けたらどうなる……?そんな素朴な疑問の答えを探ってみました。

高速道路をローギアのまま走り続けたら?

ローギアで高速道路を走り続けたらどうなるのか。結論からいうと、車が故障するか、事故を起こす可能性が高いと考えられます。

というのも、ローギアで出せる速度には限界があり、無理な高速走行はエンジン故障、または追突事故の原因となるからです。

■ローギアで出せる速度の限界

車で出せる速度は「エンジン回転数÷変速比÷最終減速比×(タイヤ外径×3.14÷1000)×60÷1000」で算出できます。

この計算式にトヨタ GR86(SZグレード・MT車)の数値を当てはめたところ、1速でレッドゾーン入り口(7,500rpm)までエンジンを回したときの速度は約59.4km/h(理論値)となりました。

また、日産 GT-Rの各ギアの最高速度を検証した動画によると、1速で出せる速度は60km/h程度のようです。日本車最速クラスのGT-Rでこの速度ですから、ほとんどの車は1速では高速走行に適した速度を出せないと考えてよいでしょう。

なお、AT車やCVT車のローギア(Lレンジ)は、MT車の1速より広い速度域をカバーする場合があります。モデルによってはLレンジで70km/h程度まで出せるかもしれません。

ローギア高速走行で起こる故障とは?

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ローギアで高速道路を走り続けると、走行速度が遅すぎて、後続車に追突される可能性があります。追突されなかったとしても、低すぎるギアでの走行により、車に何らかの故障が起きかねません。

滋賀県で自動車整備業を営むRさんによると、「ローギアで速度を出して走り続けるとエンジンがオーバーヒートするかもしれない。そこまでならなかったとしても、高温と高負荷によってオイルが傷んでしまうでしょうね」とのこと。

オーバーヒート(過熱)の状態で走り続けると、エンジンが焼き付いてしまい、走行不能になる可能性があります。高速道路で車が動かなくなると大変危険ですし、レッカー移動や修理に多額の費用を要することになります。

また、Rさんによると「エンジンに異常な負荷をかけたら早めにオイル交換したほうがいい」そうです。ローギアで高速道路を走っても、いいことは1つもなさそうですね。

高速道路で誤ってローギアに入れたらどうなる?

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ローギアでの高速道路の走行は避けたほうが賢明。ただ、高速走行中に誤ってローギアに入れてしまうこともあるかもしれません。

たとえば、小排気量のMT車で登り坂に差し掛かり、速度維持のため5速から一気に3速に落とそうとして1速に入れてしまう、なんてことは起こり得ます。

また、マニュアルモード付きのAT車やCVT車で再加速しようとして、シフトダウンパドルを押し過ぎて1速まで下げてしまう……なんて操作ミスもあり得るでしょう。こうしたミスをすると、車はどうなってしまうのでしょうか?

■MT車はシフト操作に要注意

近年のAT車やCVT車はトランスミッションが電子制御されているため、イレギュラーな操作はコンピュータによりキャンセルされます。もし高速道路で誤ってローギアに入れても、シフトチェンジはされないと考えてよいでしょう(車種によります)。

一方、MT車の場合は注意が必要。高速走行中に1速に入れると、エンジン回転数の急激な上昇とともに、強力なエンジンブレーキが発生します。

これにより車体がスピンして制御不能になりかねませんし、後続車に追突されるかもしれません。また、エンジンやトランスミッションが過大な負荷を受けて故障する可能性もあります。

高速道路で1速に入れるようなシフトミスは滅多に起こらないでしょう。とはいえ、万が一のこともあります。もし高速走行中に誤って1速に入れてしまったら、落ち着いてクラッチを切り、高めのギアに戻してください。

なお、公道での実験的な運転操作は危険を伴うので絶対NGです。だだっ広く安全な私有地をお持ちの方以外は、思考実験にとどめておくことをおすすめします。