社員からのクリスマス・プレゼント ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペ 特別な手作り 後編
同時期のベントレーに並ぶ動力性能
ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペが、ウーズレー・スーパーシックス・サルーン用のオーバーヘッド・バルブ直列6気筒エンジンを搭載し、排気量が3485ccであることは事実。最高出力は109psと、1937年としては強力といえた。
【画像】手作りのプレゼント ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペ 同年代のクラシックと比較 全104枚
シャシーは短縮され、ルーフが切断され、25 ドロップヘッド・クーペの車重は1720kgと、スーパーシックス・サルーンより軽く仕上がっていた。パワフルなコンバーチブルが誕生しても、当然といえた。

ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)
AUTOCARは1938年4月に、3日間をかけて1600kmの長距離試乗へ挑んでいる。その結果によれば、0-400m加速で144km/hに到達。0-97km/h加速時間は19.1秒と、優秀な数字を残している。同時期のベントレーに並ぶ動力性能といえた。
補強用のクロスメンバーが前後に組まれ、シャシー剛性も試乗では高く評価されている。ただし、カーブではボディロールが小さくなかったようだ。
ナフィールド爵へ贈られた25 ドロップヘッド・クーペを試乗していたなら、違う印象を受けていただろう。リアアクスルのレシオは、量産車の4.2:1ではなく3.8:1に設定され、加速はより鋭いはず。リアのダンパーも2本ではなく、4本が組まれていた。
実際、筆者が2023年に運転してみても、車重が軽いとはいえないセパレートフレーム構造ながら、ボディロールはしっかり抑えられている。戦前のモデルでありながら。
10年間ほど愛用したナフィールド
ほかにも、量産仕様と異なる部分は多い。ボンネットを開くと、クロームメッキされた部品が多用されている。カムカバーやブラケットまで、光り輝いている。エンジンにはツインSUキャブレターでガソリンが送られ、エアフィルターも巨大だ。
ボンネットの後方から、リアのホイールアーチに向けて滑らかに弧を描く、小柄ながら優雅なスチール製ボディは量産版と変わらない。ラジエーターグリルの両サイドには、巨大なP100ヘッドライトが睨みをきかせる。トランペットホーンも目立つ。

ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)
フロントグリルの上部には、バックライト付きのウーズレー・エンブレムが据えられている。追い越しする際、ヘッドライトを消しフォグライトを点けるという、ナイトパスと呼ばれるシステムも備わる。
インテリアも、量産仕様と概ね共通。クリーム色のレザー内装とブラウンのウールカーペットで、上質に仕立てられている。ただしナフィールドのクルマの場合、ドアの内張りが専用品。荷室を開くと、丁寧な仕事によるスーツケースが3個収まっていた。
社員からクリスマスプレゼントを受け取ったナフィールドは敬意を示し、10年間ほど愛用したそうだ。モーリス・モーターズの工場へ訪れる際は、ブラックの25 ドロップヘッド・クーペが定番だった。走行距離は約8000kmへ伸ばした。
塗装や内装など殆どが86年前のまま
1947年に70歳を迎えた彼は、ステアリングホイールが重いこのクルマから、軽く回せるウーズレー・エイトに乗り換えている。手放された25 ドロップヘッド・クーペは、DON 642のナンバーのまま、ウーズレーの工場で保管されることになった。
1963年にナフィールドは逝去。グレートブリテン島の中部、ミーシャムに存在したミッドランド自動車博物館へ寄贈された後、1966年からは南部のモンタギュー自動車博物館、現在の国立自動車博物館の所蔵となった。

ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)
その後、約4万8000kmの距離を刻んだ状態で、2003年にボナムズ・オークションへ出品。カーコレクターでカーディーラーを営む、アイヴァン・ダットン氏が落札した。
アイヴァンはボンネットを交換し、トランスミッションをリビルド。ブレーキのオーバーホールを施し、2006年に再びオークションへ。複数のオーナーを介して、2018年からはジョン・ワース氏が面倒を見ている。
誕生から86年を経た25 ドロップヘッド・クーペは、驚くほどのオリジナル状態を保っている。漆黒の塗装は1937年に塗られたまま。熱の影響を受けやすいボンネットや消耗品を除いて、ボディトリムやカーペットなど、殆どの部品が当時のものだという。
リアヒンジのドアを開くと、クッションの分厚いシートが出迎えてくれる。ステアリングホイールは大径で、4本のスポークが支えている。ダッシュボードはマホガニー材で仕立てられ、6枚のメーターが美しくレイアウトされている。
流れが速い郊外の幹線道路でも問題ない
ドライビングポジションは高め。スカットルも高く、ボンネットの先端で陽光を反射する、W型のマスコットが車線内を維持する目印になる。ステアリングホイールは低速域で特に重く、反応はスローだ。高齢のナフィールドには、力仕事だったはず。
スピードが乗ってくると、ステアリングも軽くなる。しかし、交差点では忙しく腕を動かす必要がある。

ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)
ウーズレーの直列6気筒は洗練されていて、静かに充分なパワーを生み出す。エンジンルームとキャビンの間には、バルクヘッドが2重にある。トルクは太く、シフトチェンジは最小限で済む。
トランスミッションは4速。正確な感触を伴ってゲートへ滑り、高めのギア比でリラックスした運転に浸れる。現代の交通に紛れても25 ドロップヘッド・クーペは堂々と進み、舗装の剥がれた穴はリーフスプリングが余裕でいなす。
流れが速い郊外の幹線道路でも、問題ないことに驚く。オーナーのジョンは、ロンドンの北から西部のウェールズ地方まで、約400kmの道のりを110km/h前後の巡航で最近走ったという。
この黒く輝く2ドア・コンバーチブルを運転していると、自分が無敵になったような感覚に陥る。普通の25 ドロップヘッド・クーペとは、少し違う体験ではないかと思う。約4000名の社員に支えられているという、バックボーンがあるからに違いない。
協力:ジョン・ワース氏、クライブ・ボタン氏、ウーズレー・レジスター
ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1938〜1939年/英国仕様)のスペック
英国価格:498ポンド(新車時)/8万ポンド(約1288万円)以下(現在)
販売台数:153台
全長:4369mm
全幅:1702mm
全高:1676mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:19.1秒
燃費:5.7-6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1720kg
パワートレイン:直列6気筒3485cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:109ps/3600rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル
