出色のRLMショートホイールベース 毎日味わいたいトヨタGR86 意見を二分したマクラーレン・アルトゥーラ BBDC 2022(4)
出色のシャシーバランスや回頭性
RLMショートホイールベースの内側にあるシャシーやパワートレインは、完全にリビルドされているが、550マラネロのモノ。こちらも新車時にBBDC選手権へノミネートしているから、四半世紀を経て再評価されたといえる。
【画像】1番運転の楽しいクルマは? RLMショートWB トヨタGR86 マクラーレン・アルトゥーラ ほか 全135枚
「このクルマが誕生したことで、世界が前より良い場所になりましたね」。とはジェームス・ディスデイル。「トップクラスの最新モデルで競い合う選手権で、実力を示すとは想像していませんでした」。とはマット・ソーンダース。

RMLショートホイールベース(英国仕様)
リチャード・レーンも、「コーナーへの侵入ポイントを探り、フロントをエイペックス目掛けて切り込み、穏やかなテールスライドへ持ち込む。ドリフトアングルの深さは関係なしに、最高の体験です。すべてに恋へ落ちた感じです」。と熱く話す。
筆者のメモを読み返すと、まとまった言葉は記されていない。つまり、自然吸気のV型12気筒エンジンとマニュアル・トランスミッション、フロントエンジン・リアドライブというパッケージングが素晴らしかったということだ。
ショートホイールベースは、11台で最高のドライバーズカーというわけではない。それでも、シャシーバランスやアクセルペダルでの姿勢制御、不安感のない鋭い回頭性など、出色の完成度にあった。
一方で、ノミネート車両で1番安価なトヨタには敵わなかった。良心や社会性といった視点で勝者を決めるなら、間違いなくGR86が選ばれるはず。企業としても、RLM社とは真反対のポジションにある。
自然吸気エンジンにMT、FRのスポーツカーへ可能性を見出している点では共通するが。
毎日味わいたいと思えるトヨタGR86
11台のノミネート車両で、1番お手頃なトヨタGR86は5位。公道で一層しなやかな足まわりの動きを実現できていれば、得点はさらに伸びただろう。
「初代の86より乗り心地は明らかに硬い。グリップが高まり、よりシリアスな設定になったのが少し残念ですね。限界領域も高くなり、公道で自在に振り回すことが若干難しくなったようです」。とマット・ソーンダースが表現したが、筆者も同感だ。

トヨタGR86(英国仕様)
翻ってサーキットでは2代目の実力に納得。落ち着いた身のこなしと、ステアリングの感触に疑問はない。「冷えたサーキットとタイヤ、ESCオフの設定が最高。毎日味わいたいと思えますし、永遠に乗っていられそうです」。マット・プライヤーが称える。
こんなスポーツカーが、英国では完売状態。GR86の供給量が需要を遥かに下回っていることが、残念でならない。
4位は、マクラーレン・アルトゥーラ。われわれを存分に満たし、トップ3入りするのではという期待も高かった。しかし惜しくも、それに届かなかった。2022年のBBDC選手権の熾烈さを物語っている。
同時に、審査員5名の意見を二分したことも事実ではある。実際、2人は1位の得点をつけている。追ってご紹介する今年の優勝モデルも、1位とした審査員は2名だった。ところが、GR86より低い点数を付けた審査員もいたのだ。
アルトゥーラの仕上がり自体に不備はない。「従来のモデルとのつながりを感じる、マクラーレンらしいクルマですね。でも、どこか冷淡なんですよ」。ジェームス・ディスデイルが悩ましそうに口にする。
一般道でも最高のドライビング体験
マット・プライヤーは、「マクラーレンらしい特性が垣間見れます。クルマ任せにコーナーへ侵入すると、若干アンダーステア。コーナーの出口が近づいた頃に、オーバーステアに転じますね」。と印象をまとめる。
リチャード・レーンは気に入ったようだ。「フェラーリ296 GTBより、ドライバーに自信を抱かせてくれる感触があります。操縦系のチューニングが見事。前方視界は先代のマクラーレン同様に素晴らしい。サーキットでは輝きます」

マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
「心から感動し、畏敬の念すら感じたモデルが2022年には2台ありました。その1台がアルトゥーラです」。と、マット・ソーンダースが同調する。
ちなみに、1位の採点した審査員の1人が筆者だった。サーキットだけでなく、公道でも最高のドライビング体験を味わわせてくれたからだ。少々生真面目すぎると評する人もいたが、筆者はそうは思わない。
他の高性能モデルとは異なり、アルトゥーラはドライバーの意思に従順なのだ。クルマが反抗的な態度を示すことはない。サーキットでは、滑らかなライン取りで最速に走ることも、タイヤスモークを巻き上げて悪ふざけすることも、受け入れてくれる。
しかし、惜しくもマクラーレン・アルトゥーラはトップ3には入れなかった。残ったノミネート車両は2台のポルシェと、1台のフェラーリだ。つまらない忖度は一切ない。この結果を、筆者は予想していなかった。
果たして、2022年の英国ベスト・ドライバーズカーにはどれが選ばれるのか。まとめは、マット・ソーンダースにお願いしよう。
この続きは(5)にて。
