引退イベント、最後のスピーチをする内村航平【写真:高橋学】

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内村航平引退イベント

 体操男子個人総合で五輪連覇した33歳の内村航平(ジョイカル)の引退イベント「KOHEI UCHIMURA THE FINAL」が12日、東京体育館で行われた。五輪と世界選手権を合わせて8連覇を達成し、40連勝の金字塔を打ち立てた個人総合の全6種目を完遂。「美しい体操」にこだわったレジェンドが現役最後の演技をやり切った。

 内村が最後も魅せた。全体トップバッターで行った床運動は、難なくまとめて大きな拍手を受けた。どの種目でも他の選手たちから「ガンバ!」の声かけ。種目ごとに1枚の写真でこだわりのシーンを振り返ったが、納得のいかない内容には自らダメ出しを送った。「根っからの体操小僧なんですよ」。全盛期とは遠い演技には「だからTHE FINALなんです」と自虐的に笑った。

 平行棒では微動だにしない美しい倒立を披露した。最後は「親友になれた」と語る鉄棒。荘厳なBGMが流れる中、スポットライトの花道を歩いて向かった。数々の名場面を生んだ種目。拍手の中で精神統一すると、静寂に包まれた。冒頭に披露したのは極めてきたH難度の離れ技「ブレトシュナイダー」。悲鳴交じりの歓声が上がった。

 離れ技を決めると、最後の着地はやや後方に踏み出したが、美しくまとめて会場からは万雷の拍手だ。笑顔で仲間たちと順番にハイタッチ、ハグを交わした。選手らに胴上げされ、6度宙を舞った。会場では涙を流すファンも。最後のスピーチではこう語った。

「まずこれまで応援してくださった皆さん、本当に、本当にありがとうございました。体操を始めて30年、つらいことしかなかったなと。ですが、こうしてここにいる日本代表の仲間たちや自分自身で勝ち取ってきた結果、技を習得した時の喜びがそのつらさを凌駕してきました。それを知ってしまうと、ずっと体操をやっていたいと思っていた。だけど、東京五輪、昨年の世界選手権、そして今日もよくなかった。これが潮時かなと思って引退を決断しました。

 最後に泣かれている方もいますが、ここで終わりというかは新しい一歩を踏み出すので凄く前を向いています。体操競技は進化していきますし、日本の体操も前に進んでいかないといけない。僕が経験してきたこと、体も動くし、僕にしか伝えられないことがある。こういうイベントをやりながら、体操の普及、技術の向上、経験の伝承をやらないといけない。ここに立っている以上、ここまで体操を続けさせてくれた体に産んでくれた両親にこの場を借りて感謝したい。

 この会にお願いをして出演してくれたリオ五輪、東京五輪代表選手、スタッフの皆さん、僕を引き立ててくれてありがとうございました。会場に来ている皆さん、こんなにたくさんの方々が来てくれると思っていなかった。本当に僕は幸せだなと。幸せな体操人生を歩ませてもらった。僕の体操人生は終わらないので、こうして表に出る機会はあると思う。一人の人間、内村航平を応援して下さったら嬉しいなと思います。よろしくお願いします。

 スタッフの皆さん、協賛企業の皆さん、本当に感謝しきれません。いい舞台をつくってくださってありがとうございます。自分としては鉄棒をやり切りたかった。またこういう機会があればここにいる後輩たちの良い舞台をつくっていきたい。今後もご協力よろしくお願いします」

 山室光史、田中佑典、加藤凌平、白井健三さんと団体金メダルを獲得したリオ五輪メンバーのほか、橋本大輝、萱和磨、北園丈琉、谷川航、亀山耕平の東京五輪メンバーも集結。苦楽をともにした豪華な顔ぶれが内村のために集まり、白井さんが床運動と跳馬で自身の名のついた「シライ」を決めるなど引退に花を添えた。

(THE ANSWER編集部)