2022年注目の新作アニメはこれだ!【藤津亮太スペシャル対談】
年明けを迎えた最終回は2022年期待の新作アニメ、そして2021年の藤津さんの仕事を振り返ります。
藤津 まず第34回東京国際映画祭で先行公開された『犬王』と『グッバイ、ドン・グリーズ!』。これは剛速球の2作です。
『犬王』は湯浅政明監督の新作で、キャラクター原案は松本大洋、音楽が大友良英という布陣だけでもヤバさが伝わりますね。この作品に一番近い映画は『ボヘミアン・ラプソディ』だと思っていて。
編集長 ええっ、クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの伝記映画に、ですか? まだ拝見していないんですが、もしかして「ドンドンパッ」みたいな展開があったりするんですか。
藤津 実際そういうリズムがストレートに出てくるところもあります(笑)。『マインド・ゲーム』を彷彿させる音と映像の実験的な描写もあるし、キャストのアヴちゃんさん・森山未來さんも実にハマってて。これが山田尚子監督の『平家物語』と双子の企画だっていうのが本当に凄いです。
『ドン・グリーズ!』はまだあまり情報が出ていないんですが、『宇宙よりも遠い場所』を手がけたいしづかあつこ監督×キャラクターデザイン・吉松孝博さん×マッドハウスの新作です。
編集長 いろんな意味を想像させる、不思議なタイトルですよね。
藤津 訳がわからない方が多いと思いますが、それがいいんです。ジャンルで言うと、ロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』を彷彿させる青春ロードムービーですね。
▲映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』2022年2月18日(金)全国ロードショー 配給:KADOKAWA (C)Goodbye,DonGlees Partners今回いしづか監督が脚本を書いたこともあるのか、全体に「演出家の仕事」を感じられるんですよ。基本的に夜の場面が多かったり、出てくるキャラはほぼメインの3人というすごくミニマムな話のはずなのに、スケールの大きさを感じさせる不思議な作品でした。この2作は是非映画館で観て頂きたいですね。
編集長 個人的には、磯光雄監督久々の新作『地球外少年少女』も気になっています。
藤津 こちらも一足先に拝見しましたが、面白いです。治郎丸さんに分かりやすく言うと、令和版『おいら宇宙の探鉱夫』(笑)。宇宙・ロケットクラスタの皆さんには響く内容になっています。
▲オリジナルアニメ『地球外少年少女』2022年1月28日(金)前編、2月11日(金)後編、新宿ピカデリー他にて各2週限定劇場上映。 (C)MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会簡単にストーリーを話すと、月で生まれた子供たちと地球から来た子供たちが商業ステーションで出会うんですが、彗星の衝突事故に巻き込まれて宇宙でサバイバルしなきゃいけなくなる、という内容で、磯監督らしいAIの要素も見どころです。全6話がNetFlixで1月から配信されて、1〜3話までを前編、4〜6話までを後編とした劇場版も限定公開されます。
(編集部注)『おいら宇宙の探鉱夫』:1994〜1995年に発表されたオリジナルビデオアニメ。人類が宇宙に進出した未来を舞台に描かれる飯田馬之介監督のジュブナイルSFアニメで、リアリティあふれる宇宙描写が話題となるも、全6話予定のシリーズは2話で打ち切りとなった。
編集長 他にも新海誠監督の新作『すずめの戸締り』、荒木哲郎監督の新作『バブル』など、2022年も刺激的な作品がズラリと並ぶ予感がありますね。
藤津 これから情報公開される作品もあるでしょうから、今後も楽しみが増えそうです。
編集長 では、最後に藤津さんの2021年のお仕事も振り返りましょうか。
藤津 ありがとうございます、まず今年は2年ぶりに2冊本を出すことができました。
1つは様々なアニメ作品で描かれてきた戦争の系譜を追いながら、作り手はそれをどのように描き、観客はどのように受け止めたのかを論考した『アニメと戦争』。『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』がブームの頃に「好戦的じゃないか」という声が上がる中、自分の中には「そうじゃない」という思いと、主人公の勝利がヒロイズムの一種であることを否定できない思いが混じり合っていたわけです。その迷いと向かい合って、ちゃんと書けたのは良かったです。
もう1冊は雑誌『ユリイカ』に掲載された評論を中心にまとめた『アニメの輪郭』。これは時評とは違って、アニメとはどういうものなのかを「主題」「作家」「手法」という3つの視点で考えた内容です。
編集長 こちらは、ワンテーマでまとめた『アニメと戦争』とは一味違うバラエティに富んだ評論集になっていますね。掲載内容で、ご自身で手応えがあった原稿などありますか。
藤津 手応えがあったのは、ファンタジーがアニメにとって向いているメディアかどうかを論じた『アニメに適さない題材、ファンタジー』と『岡田麿里、アニメーション監督は誰でもできるのか』、あと、僕はあまり音楽は強くないんですが、菅野よう子さんの音楽の使い方について資料を集めて書いた『菅野よう子、最も身近な批評と呼ばれる音楽』は気に入っています。
あと、昨年の4月から静岡のSBSでラジオのレギュラー番組に週一で出演しています。『TOROアニメーション総研』というタイトルで、毎週テーマやお題を決めてリスナーのハガキを募って、それを踏まえてアニメの話をしていく番組です。
メンバーはアニメーションが好きな二十代の男性アナウンサー・原口大輝さんと、地元の声優学校に通ってる19歳の女の子・大村のあさん。僕は解説おじさんみたいな感じで、毎週静岡に通って収録しているんです。リスナーから来るハガキを読むのがすごく楽しくて、大きな刺激になっています。
編集長 そうなんですか、静岡のアニメファンの反応はいかがですか。
藤津 今人気の話題作をチェックしている男性ファンからの投書が多い印象ですね。逆に言えば、そこまでマニアックな内容や渋いタイトルについての投書は来ないんですよ。ならば、こちらとしてはそういう部分をしっかり紹介する立場で臨みたいなと。
編集長 そういったファンの目線が感じることで、藤津さん自身の目線も変わってくるところがあったりするんじゃないでしょうか。
藤津 はい。自分がTwitterのタイムラインやSNSで見かけるアニメファンの発言って、ゴリゴリに濃い内容が多くなりがちなんですけれど、番組のファンは「〇〇話の作画が〇〇さんだ!」みたいな細いことを気にせず、もっと自然な姿勢で楽しんでいる感じがするんですね。
そういうアニメ好きの人の話を聞くことが自分にとって原点に戻る――まではいかなくとも、「アニメを好きになる」ってこういうことだよな、という立ち位置を確認できる場所となっていて、とても新鮮な気持ちを味わえています。
>>>2022年期待の新作アニメのビジュアル・場面カットを見る(写真11点)
藤津亮太(ふじつ・りょうた)1968年生まれ。アニメ評論家。新聞記者、週刊誌編集部を経てフリーライターに。アニメ・マンガ雑誌を中心に執筆活動を行う。近著は『アニメと戦争』(日本評論社)、『アニメの輪郭 主題・作家・手法をめぐって』(青土社)。
治郎丸慎也(じろまる・しんや)
1968年生まれ。1991年徳間書店に入社、月刊誌・週刊誌の編集部などを経て、2020年よりアニメージュプラス編集長に。
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