年末は、家計の支出が適切かどうかをチェックするいいタイミングだ。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「ある業者によれば、サブスクの“無料お試し”の約90%が解約されないそうです。契約を続けるか解除するか年末年始に見極めるといい。スマホの料金プランも2〜3年に1度は見直しをすることをおすすめします」という――。

※本稿は、『プレジデントFamily』2021年秋号・冬号の一部を再編集したものです。サービスの料金・試算は、取材当時のものです。

■「“万単位”のおトクになる」スマホは2年ごとに乗り換えるべし

「ウィズコロナの節約術」というテーマで、講演依頼をいただくことが増えてきました。実を言うと、コロナ禍の前と後で日本の平均的な家計の姿は激変しています。2000〜19年までの家計調査の結果と20年の家計調査の結果を比較してみると、明らかな変化を見て取ることができるのです。

たとえば、交際費や被服費は約2割も減少しています。コロナ禍によって外出機会が激減したことが背景にあるのは、容易に想像がつくと思います。

興味深いのが通信費。人との接触機会が減った分、SNSの利用や動画を閲覧する機会は増えたはずですが、これまで増加傾向だった通信費が3.5%減っているのです。

自宅のWi-Fiを使っているから、というのも理由のひとつでしょうが、リモートワークで生じた余剰時間を利用して格安SIMへの乗り換えやプランの見直しを行った人が多かったことが、要因ではないかと私はにらんでいます。

大手通信会社の回線を借用することで格安な通信ができるSIMカードは、すでにたくさんの会社が発行しており、現在使っているスマホのSIMカードと差し替えるだけで、利用料金を大幅に引き下げることができます。

出典=『プレジデントFamily』2021年秋号

さらにここ最近大手の通信会社が格安プランサービスを開始しました。

たとえば、この2021年3月にドコモが「新プラン」と銘打って販売を始めたahamoの場合、月額利用料が2970円の1プランしかありません(データ通信量の上限は月に20GB)。

20GBあれば長時間動画を見る人でなければ十分ですし、5分以内の国内通話は無料です。5分を超えると30秒ごとに22円の通話料がかかりますが、かけ放題のオプション(1100円)をつけても総額で4070円。大手通信会社の利用料が6000〜9000円程度であることを考えれば、半額以下に利用料を圧縮できるのです。

既存の格安SIMでも新プランを出したり、料金改定を出したりしています。動画や音楽の配信サービスを多用する人向けにおすすめなのはBIGLOBEモバイルの「エンタメフリー」(月額308円)というオプションサービス。指定のサービス(YouTube、Spotifyなど)ならば、いくら視聴してもデータ通信量が消費されません。

格安SIMにはさまざまなタイプがありますが、価格.comなどの比較サイトに自身の利用状況に合わせて条件を入力すれば、どのプランが自分に合うのか、簡単に知ることができます。

続々と新しい料金プランが出てきますし、個人のスマホの利用状況も変わってきますので、2〜3年に1度は見直しをして、最も安いプランに切り替えることをおすすめします。切り替えのハードルになるのは、手続きがかなり面倒だということ。大手通信会社の格安プランは、インターネットからの申し込みが基本です。

■「サブスク」は毎月の支払い額をチェックすると、びっくり

サブスクについて取材を受ける機会も増えてきました。ご存じの通り、サブスクとはサブスクリプションの略で、定期購読や予約購読意味します。毎月(あるいは毎年)一定額を支払うとサービスが使い放題になる仕組みで、動画配信サービスのネットフリックス、雑誌の読み放題サービスのdマガジンなどが代表的な例でしょう。

コロナ禍で外出機会が減ったことが利用件数の増加に拍車をかけています。たくさん利用しても一定額で済み、いつでも利用できるといった便利な面がある一方で、サブスクには家計にとって危険な落とし穴があることは、知っておいたほうがいいでしょう。

第一の落とし穴は、支払いの痛みが少ないことです。家計はやりくり費(食費、交際費など)と固定費(光熱費、通信費、保険料など)に大別できますが、やりくり費の支払いには痛みが伴います。支払いのつど、実際にお財布からお金が出ていくからですが、その痛みが浪費を予防するブレーキの役割を果たすことにもなります。

一方、固定費は銀行の引き落としやクレジットカード払いのような定期支払いが多く、見えないところで支払いが行われるので痛みが少ない。サブスクの支払いも定期支払いが主で、さらに契約料金の月額が1000円未満の少額のものが多いため、軽い気持ちで契約をしてしまいやすいのです。

出典=『プレジデントFamily』2021年冬号

第二の落とし穴は、自分がどんな契約をしているのか把握しにくいこと。サブスクの多くは数カ月間無料といった「お試しサービス」を設けていますが、無料だからと気軽に申し込みをして、そのまま申し込んだことを忘れてしまう人が非常に多い。

ある業者によれば、無料のお試しを申し込んだ人の約90%が解約せずにそのまま有料契約に移行してしまうというのです。ある日、銀行口座やクレジットカードの利用明細を見て、無自覚のうちに料金を支払っていたと気づく人も多いでしょう。

いくつものサービスを契約して、サブスクの支出が月数万円に膨れ上がっている家計も少なくありません。

では、こうしたサブスク特有の落とし穴にはどう対処すべきでしょうか。基本は銀行口座やクレジットカードの利用明細を毎月チェックすることです。家計簿アプリを活用するのもひとつの手です。

たとえば「Zaim」というアプリには、銀行口座やクレジットカードの情報を連携しておけば、支出の中からサブスクの情報だけを自動的に洗い出してくれる機能があり、利用状況を簡単に把握することができます。

わが家の場合は、年末年始にサブスクの“大掃除”をしています。契約したものの、使っていない家族全員分のサブスクの契約解除を、えいやっと一気にやってしまうのです。ちりも積もれば山となる。まさにサブスクのためにあるような言葉です。

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藤川 太(ふじかわ・ふとし)
ファイナンシャルプランナー
生活デザイン代表取締役社長。2001年に家計の見直し相談センターを設立以来、2万世帯を超える家計診断を行ってきた。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』など著書多数。
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(ファイナンシャルプランナー 藤川 太 構成=山田清機)