国籍、性の違い、それに若手や年配といった世代の違い、また価値観や国・地域の違いもある。そういう違いや差がある中で、グループ一体経営をどう推進していくかという問題意識からの『D&I』政策である。

 Diversity(ダイバーシティ)は文字どおり、多様性を示す。Inclusion(インクルージョン)は相手の存在や考えを包み込む力、包容力といった意味。

「ダイバーシティとインクルージョンは、グループ一体経営を強化していく上で不可欠なものであるし、また世の中全体の大きな流れもそうだと思います」

 小宮氏は『D&I』ポリシーを取り上げた理由をこう述べ、次のように語る。

「この母国市場の東京海上日動について見ても、まだまだジェンダーギャップがあります。その改革に取り組んできてはいますけれども、まだまだスピードを上げていかなければならない所にあります」

 そこで、小宮氏は今年4月、〝チーフD&Iオフィサー〟を設置、そのポストに女性の執行役員、鍋嶋美佳さん(1991年6月入社)を任命。こうして多様性を活かす態勢づくりが進む。

安全・安心を拡大

 今は、まさに時代が大きく変わろうとする変革期。デジタルトランスフォーメーション(DX)が進行する一方、世界全体を見れば、政治的に米中対立、アフガンの混乱と混迷が続く。さらには中東各地域での内戦・内紛も頻発。また米FRBの金融政策のカジ取り一つで、株価が敏感に反応、通貨も揺れる。

 こうした世界の政治、経済の不安定要因に加えて、地球環境問題にどう対応するかという課題。異常気象による山火事、台風、水害による河川の氾濫、土砂崩れ、農作物の被害とリスクが高まる日々。これらのリスクとどう向き合っていくかという社会的課題である。

「やはり、リスクが増大している。だから、われわれが社会課題の解決に対して役に立つ領域というのは、もっともっと実は大きいはずだと。安全を提供して安心を広げる。それが保険だと言っていますが、保険というのは経済的補償に過ぎません。経済的補償自体はとても大事なことなんですが、『いざ』を支えるためには、いつも支えていないと、『いざ』は支えられないのではないかと。そのために、テクノロジーの活用もあるわけですが、要するに事故はない方がいい。あっても、ダメージが小さい方がいい。事故が起こりましたと。でも、それは二度と起こらない方がいい」

 社会課題の解決へ向かう時の本質論を小宮氏はこう語り、これからの保険(業)の役割と使命について、次のように深掘りする。



新しい保険の定義を!

「災害に対しての予防、つまり防災とか減災とか、あるいは健康増進とか未病という部分と、それに保険があって、その後はアフターケアですとか、再発防止ですとか、早期復旧、復興とか、こういったところの保険の前と後があります。保険を点から線に、線から面に広げていく。それで安全を提供できるというところに商品も拡大するし、場合によっては、そういう事業をしっかり構築していく」

 保険の前と後ろの事業領域を拡大、あるいは保険を〝点から線に〟、また〝線から面に〟という作業をしていく中で、ライバル企業との関係も変化していきそうだ。

「真ん中の保険はもしかしたら、他社にも入っているかもしれないけれども、予防とか防災とか、復旧・復興とか再発防止はうちの事業に入っていますというケースが出てくるかもしれません」