外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に6月の為替相場の行方をうかがった。 

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 新型コロナウイルスに対するワクチン接種が急速に進められるとしているが、それでも菅政権が目標とする1日100万件には遠く及ばない。7月には東京五輪が予定され、政府やIOCは現時点で開催に大きく動いている。そんな中で依然として緊急事態宣言が継続中で、コロナの感染状況も下げ止まり、今後はインド由来の変異種の蔓延が懸念される。日本のGDPも21年1−3月期は前期比年率で−5.1%となり、円は売られて「円安」が進んでいる。そんななかで6月の為替相場はどんな方向に振れるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に6月の為替相場の行方をうかがった。 

 ――米国経済はやや足踏み感がありましたが、6月はどうなるのでしょうか? 

 米国経済を最も端的に象徴すると言われる「雇用統計」を見ると、前回の4月は「非農業部門雇用者数」が100万人増えるという予想から、一転して26万6000人の増加に留まりました。失業率も5.8%の予想から6.1%に悪化。パンデミックの影響がいまだに残っていることを物語る結果となりました。

 とはいえ、この5月16日から22日の「新規失業保険申請件数」は、42万5000件の予想に対して40万6000件に減少。4週連続の減少となり、少なくとも米国経済の労働市場には回復の兆候が見られました。

 ワクチンの接種率も、人口全体で50%を超えるところまで来ており、米国経済の回復基調が見えるようになってきました。6月4日に発表が予定されている雇用統計でも、非農業部門雇用者数は66万3000人と予想されています。今回は、サプライズダウンの可能性は低いと考えていいと思います。

 欧米をはじめとする世界の先進国では、日本を除いてワクチン接種率が向上し、コロナ禍によるパンデミックはかなり落ち着いてきた状況といっていいと思います。問題は日本の感染状況が高止まりしていて、それに対応するかのように為替相場では「円売り」が進んでいることです。

 ――米国の労働市場が落ち着いても、インフレや金利上昇が気になりますが・・・? 

 6月15日−16日に実施される予定の米国の金融政策を決定する「FOMC(連邦公開市場委員会)」では、当然数多くの投資家が抱いている「インフレ」に対する懸念や「テーパリング(緩和縮小)」に対する姿勢について議題に上ると思いますが、「FRB(連邦制度準備理事会)」にとって重要なのはインフレと同様に「労働市場の正常化」を実現することです。

 労働市場の回復が確かなものかどうかを確かめるためには、最低でも2カ月程度の雇用統計を見る必要があると考えられます。つまり、6月と7月の雇用統計の結果を見て、何らかの方向性を出してくるのではないでしょうか。そう考えると、もう2〜3カ月は時間的な余裕があることになります。6月のFOMCでは、むろん何らかのタカ派的なメッセージがあるかもしれませんが、明確な方向性は出て来ないと思います。

 やはりみんなが予測するように8月の「ジャクソンホール」あたりで、何らかの方向性が出て来るかもしれません。最近になって、イエレン財務長官も「高水準のインフレ率は年末まで続くものの、依然として一時的なもの」との認識を示しました。

 ――日本はワクチン接種が遅れて、円が売られていますが・・・? 

 米国や欧州に比べて、ワクチン接種率がまだ10%にも達していない日本では、なかなか景気回復のシナリオが見えてきません。インフレどころか景気回復への道も遠く、テーパリングもまだまだ遠い話といっていいかもしれません。

 「日足」では雲抜けを完成させていますが、「月足」を見ると、厚い雲が横たわっており、これを抜け切るのはそう簡単ではありません。雲の上限は、現在112円75銭近辺にあり、ここから3円程のドル高が必要ということになります。仮に抜け切れば、上空を遮るものはなくなり、一段のドル高も想定されますが、それには米長期金利が2%に乗せるなどの支援材料が不可欠です。