画像提供:マイナビニュース

写真拡大

スシローが「お客様満足度の向上」と「店舗オペレーションの省力化」を目的にした『次世代型スシロー店舗』を大阪で26日にオープンさせた。当面は試験的に運用する形だが、今後は他店舗への展開も考えている。何がどう変わるのだろうか? その狙いは? メディア説明会に参加した。

○どんな技術が導入された?

今回、スシローでは既存のスシロー伊丹荒牧店を1カ月閉店した上で、新たな設備を投入してリニューアルオープンさせた。これにより実現したいことは、「お客様の快適性のさらなる向上」「継続的な旨さの担保」の2つだという。

例えば、新システムのひとつ「画像認識による自動皿会計システム」では、何色の皿を何枚取ったか、テーブルごとに画像認識して正確に数える。数え間違いのトラブルをなくすだけでなく、セルフレジの自動会計につなげることでレジの待ち時間も解消。もちろん客側だけでなく、店舗スタッフ側にも以下のようなメリットがある。

それは、レジ打ちの負担がなくなるということ。スタッフはその分、調理に専念できるだろう。つまりは、これにより「継続的な旨さの担保」につなげていきたい考え。スシローグローバルホールディングスの新居耕平氏は「従業員は、旨さに直結するマグロの切りつけのほか、炙り・皮引き・盛り付けといった調理に集中できます」とその効果に期待する。

テイクアウトに関してもテクノロジーを導入した。冷蔵庫とロッカーを組み合わせたような「自動土産ロッカー」を用意し、客が事前予約した寿司を好きなタイミングで受け取れるようにした。スマホの画面に表示されたQRコードをかざすことでロッカーが開く仕掛けだ。アプリ内で決済を済ませれば、レジに並ぶ必要もない。

このほか従来型の店舗では、ベルトコンベアーの設計上の問題から、寿司は必ず中央のレーンから流す必要があった。調理スタッフは寿司をもったままキッチン内を右へ左へと移動しなければならなかったが、新たに「キッチン内オートウェイター」を導入したことで、キッチンの4〜5箇所から適宜、寿司を流せるようになった。

スシロー伊丹荒牧店は本社に近く、このため実験的な取り組みを積極的に導入できる。これまでも同店舗では、軍艦巻きを作るロボットや、システム化された皿洗い機など、様々な技術をいち早く導入してきた経緯がある。一事が万事、そんなわけでスシロー自体、ITリテラシーが非常に高い。これは余談になるが、ビッグデータの活用により年間で17億件ものデータを取り扱っているというから、もはや外食チェーンなのかIT企業なのか分からない。

新居氏は「回転寿司業界のリーディングカンパニーとして、スシローではこれまで他社に先がけて革新的なシステムを導入してきました」と胸を張る。直近ではこの5月に「Googleアシスタント」に対応させた。例えば「OK Google, スシローで今から4名」などと話しかけるだけで、来店受付が可能になっている。

こうした取り組みの背景には、人手不足と雇用の問題があった。スシローでは高齢者や外国人労働者も積極的に雇用しているが、シャリの並べ方、角度まで教えている時間はない。そこで、オペレーションを簡易化する必要に迫られたというわけ。ボタンを操作するだけで、誰でも同じ品質の仕事ができたら――。そんなカタチを模索している。

寿司だけでなく、例えば揚げ物に関しても「オートフライヤー」を導入した。これにより投入場所さえ間違えなければ、高校生でもベテランのパートと同じクオリティの揚げ物を用意できる。数値目標について、同社では「システムにより3割の省人化を目指し、ひいては雇用スタッフの勤務時間の2割削減を実現したい」と説明している。

新居氏は「旨さの品質を維持しつつ、サービスを向上させるため、これからもテクノロジーを駆使していきます。『うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。』がスシローの経営理念。最高のスシロー体験を提供すべく、今後も努力を続けていきます」と意気込んだ。

○今後の展開は?

このあと新居氏は、質疑応答で記者団の質問に回答した。テイクアウトの需要について聞かれると「現在、持ち帰りのお客様は来店者の10%前後に過ぎません。しかし昨今、Uber Eatsなど食事の宅配サービスも人気です。そこで、需要の高まりに応じて対応していければ。ただ今回の自動土産ロッカーは、テイクアウトのニーズを満たすというよりは、お待たせしないことによるお客様満足度の向上に主眼を置いています。これにより来店のリピート率が上がれば」と回答した。

今後の展開について聞かれると「初の次世代型店舗となりました。まずはお客様にご意見をお聞きし、また実際の数字についても検証します」と慎重な姿勢を見せつつも「お客様満足とオペの省力化について、しっかり成果を出していきたい。他店舗の導入についてもアグレッシブに進めていきます」と話していた。