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sponsored by ベントレー・モーターズ・ジャパンtext:Kenichi Sakurai(櫻井健一) photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

もくじ

ー ベンテイガV8はどんなクルマ?
ー ベンテイガ初搭載のV8 W12との違いは
ー V8とW12 内外装の違いはあるのか
ー W12との走り味の違いは?
ー V8とW12 どちらを選ぶべきか

ベンテイガV8はどんなクルマ?

思い返せばベントレー初のSUVとなったベンテイガは、2015年のデビュー。フランクフルト・ショーが、ワールドプレミアの場となった。

デビューから今に至るまで、ラグジュアリーブランドとして名高いベントレー初のSUVとしての注目は、これまでのベントレー・ユーザーはもちろんのこと、他ブランドの顧客からも熱いものであったことは間違いない。

事実、昨年ベンテイガを購入したユーザーの大半は、ベンテイガが「初めて所有するベントレーになった」というデータもあり、その数はベンテイガ・ユーザーの約60%にものぼるという。

かつてBMWのX5やポルシェ・カイエンが先鞭を付けた欧州プレミアムブランドのSUVブームは、現在ではジャガーやマセラティ、そしてアルファ・ロメオにまで波及。高級車メーカーにとってSUVは、もはやブームを越えてなくてはならないカテゴリーになったといってもいい。

しかしそうしたプレミアムブランドの上を行くラグジュアリーブランドでは、このベンテイガがいち早く登場したモデルだという事実も忘れてはならない。

先日ロールス・ロイスとしては初のSUVとなるカリナンがデビューし、今となっては、「ラグジュアリーブランド唯一の」という謳い文句を気軽に用いることはできないが、ラグジュアリーカーの証ともいえる12気筒エンジンを搭載した英国製SUVは、これまでベンテイガが唯一無二の存在であった。

そうした最高級ブランドの双璧を成す歴史あるブランドの新たなカテゴリー(=SUV)へのチャレンジが、冒頭の通りこれまでベントレーに縁遠かったユーザーの心をつかんだとしても決して不思議ではないだろう。

ちなみに12気筒エンジンを搭載する量産モデルといえるSUVは、ほかにフルモデルチェンジ前のメルセデス-AMGのG65や、さらに過去を振り返ればランボルギーニLM002、アウディQ7 V12 TDIが挙げられる。それでも、こうして指折り数えられるほどの数でしかない。

そんなところからもいかにベンテイガがSUVの中でも特別な存在であったのかが、わかろうというものだ。

ベンテイガ初搭載のV8 W12との違いは

ベンテイガがデビュー時に採用した6ℓのW12ツインターボというパワーユニットのプロフィールこそ、ほかのW12を搭載するベントレーと同じに見えるものの、しかしこのパワーユニットはベンテイガ用に新開発されたもので、最高出力は608ps、最大トルクが91.8kg-mという圧倒的なパワーを披露する。

対して今回追加されたV8エンジンは4ℓのツインターボで、最高出力が550ps、最大トルクが78.5kg-m。その差は58psである。

従来モデルがW12だけに気筒数やスペックシートに載る数値だけを見てしまえば見劣りは否めないが、世の現行SUVたちと単純にスペックだけを比較すれば、550psのパワーは見劣りするどころかトップクラスに位置するものと紹介できる。

総排気量3996ccという数値からもわかるように、このエンジンの出自は、同じフォルクスワーゲングループの有するの有する4ℓV8ツインターボである。同じパワーユニットを採用するポルシェのカイエン・ターボとは、パワースペックとZF製8段ATを搭載する点まで同一で、さらにいえば前後トルク配分が40:60となる4WDシステムを採用するも同様である。

こうした事実だけを見ると、カイエン・ターボと姉妹車ともいえるベンテイガV8だが、スポーツカーブランドのSUVと、ラグジュアリーブランドのSUVというクラスや立ち位置はもちろん、細部の作り、走り=パフォーマンス上の狙い、そして存在感そのものがこの両車では大きく異なっている。

V8とW12 内外装の違いはあるのか

先に明確化しなくてはならないのが、今回追加されたV8モデルは、ベンテイガの単なるエントリーモデルではないということである。そもそもご存知のようにベントレーは、ユーザーの好みを反映させるオプションを駆使したビスポークといってもいいオーダーシステムを採用している。

したがって新車時のオーダー車両は内外装のカラーリングや素材、装備に関し世界に2台とないベントレーというブランドに誰もが期待するクオリティのクルマが出来上がってくる。

もちろんベンテイガV8もこれは同様だ。ついW12とV8の関係を上位グレード/下位グレードと表現してしまいそうになるが、これはシンプルに「搭載エンジンによって異なるキャラクターを持っている」と理解するのが正しいだろう。

それでもストックの状態でW12とV8の識別点を探せば、ブラックアウトされたグリルと新しいデザインのアロイホイール(V8は20インチが標準サイズで、W12は21インチが標準サイズ)、楕円形でシルバーのフィニッシャーを採用したエグゾーストパイプなどに差異を見つけることができるが、これらは前述のとおりオーダー時にいかようにでも変えることが可能だ。

コンチネンタルGTでは、エンブレムにある「Bマーク」のカラーリングでW12とV8を識別可能だったが(W12が黒、V8が赤)、ベンテイガのエンブレムは黒に統一されている。

したがって外観上の特徴はもちろんのこと、装備などで両車を的確に言い当てることはかなり難易度の高い作業となる。日本仕様でいえば、W12ではHDDナビ+TVが標準装備であるの対して、V8ではオプション扱いになっている程度の違いしかない。

そのナビゲーションデータとも連動するアタマの良いACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やパークアシスト、ナイトビジョン、リアクロッシング・トラフィック・ウオーニングなどラグジュアリーカーに期待される運転支援システムもW12と同様に装備することができる。

W12との走り味の違いは?

重厚感あふれる、それでいて2.5tの重量をものともしないW12の圧倒的なパフォーマンスを味わったあとでV8のステアリングを握れば、ボディは軽やかであり、よりスポーティな印象を抱くことになる。

鼻先の軽さは誰にでも体感可能であり、したがってステアリング操作に瞬時に反応するコーナリングが楽しめる。エンジン単体で50kgの重量差があると聞くが、その効果は伊達ではない。

同時にV8のエグゾーストサウンドが、かなり刺激的にキャビンへと届くことがわかる。ボリュームこそ絞られ洗練されてはいるものの、アメリカンV8もかくやという興奮を呼び起こすなエグゾーストノートだ。

これはエンジン音や排気系のノイズをほとんどシャットアウトしているW12との唯一にして最も大きな違いといえそうだ。遮音性のウインドウを採用するW12に対して一般的なウインドウを持つV8との構造的な差でもある。だからといって、必要以上に高級感が損なわれないのは、例え背が高くてもベンテイガV8がベントレーたる所以だろう。

敢えて違いを表現すれば、W12が質量を無視してどこまでも続くという怒濤の加速を見せるのに対して、V8ではシフトアップとエグゾーストノートにリンクした気持ちの良い加速を体感させてくれる。これはこれでかなり刺激的だ。

真紅のブレーキキャリパーに加え、V8で初めてカーボンセラミックブレーキを用意したのも、ベントレーがこのモデルをスポーティな位置づけとする証明である。

物理法則を無視したかのようにパワーでマスを移動させるW12か、スポーティな加速を楽しませるV8か。優劣ではなく、これは好みの範疇だといってもいい。なにせ、0-100km/h加速は0.4秒の差でしかないのだ。

サーキットでもあるまいし、現実世界においての0.4秒など誤差のようなものだ。両車で異なるのは、最高速到達までの加速時間ぐらいのものであろう。ちなみにW12は最高速度が301km/h、V8が290km/hというデータが掲げられている。

V8とW12 どちらを選ぶべきか

乗り比べれば、確かにW12とV8の加速フィールは異なっている。しかし、そこに善し悪しはない。違いはあるのかと聞かれたときに、「ある」と言えるだけの話だ。どちらもその体躯からは想像出来ないほど速く、パワフルだ。ETCゲートをくぐりフル加速を与えた時に背中がシートに押しつけられるようになる加速感は、どちらにも存在する。

当たり前だがボディサイズは同じであり、街中で取り回す限り重量差を感じるシーンはほぼ無いはずで、法定速度でのクルージングであれば、遮音性の差も気にならない。乗り心地は良くキャビンは静かで快適な、誰もがベントレーというブランドに期待する比類なきラグジュアリー感に包まれる。試しに目をつぶったまま乗車して、果たしてこれがW12なのかV8なのかと聞かれれば、正確にいい当てる自信など、到底ない。

共通するパワートレインを採用するとはいえ、スポーツカーメーカーの出自であるカイエン・ターボとベンテイガV8で購入を迷うユーザーがいるとは思えないが、W12とV8のどちらを選ぶべきかを考えることは不思議ではない。いかにパワーパックや4WDシステムが同じで、現行カイエンの内装から安っぽさが消えたとしても、ベンテイガとカイエンでは存在するクラスが大きく異なっている。

しかし、デザインにも(オプションで選ぶ自分好みに仕立てる)装備にも差がほとんどないW12とは、おおいに悩むだろう。価格差は約800万円(メーカー希望小売価格で791万4000円の差)だが、リーズナブルだからといってV8を勧めるような無粋もしたくはない。

何が何でも最高級のベントレーが欲しいのであれば迷わずW12である。しかし、500psオーバーのステージで58psの差などはないにも等しい。

W12の608psには及ばすとも、並みのスポーツカーを蹴散らす一級のパフォーマンスはもちろん、ひと目でベントレーだとわかる彫刻のようなエクステリアと精緻な造り込みのインテリアといった「ベントレーらしさ」もV8は合わせ持っている。

価格が魅力的なのは当然として、ベントレーを求める層には、ぜひ「V8のサウンドとスポーティなハンドリングが好みにマッチしたから」、とベンテイガV8の購入動機を語ってもらいたい。そして約800万円の価格差を好きなカラー・オプションに費やしてもいいだろう。

ベンテイガにとってV8は、決してW12の下位やエントリーモデルなどという薄っぺらな言葉で紹介できるような軽い存在ではないのである。