先月、高校の時のある同級生が一人っ子を交通事故で亡くし、悲しさのあまり自殺を図った。そのことがきっかけになり筆者は中国の「失独者(一人っ子(中国語で「独生子」という)を亡くした者)」たちのことを考え始めた。

 百度百科(中国版ウィキペディア)の解釈によると、「失独者」とは一人っ子を亡くした親のことで、彼(彼女)らの多くは50歳以上で、もう子供を生むことはできない。中国でこの「失独」した家庭の数は毎年7.6万戸ずつ増えており、膨大な数になりつつある。

 彼らの多くは50歳代で、20数年間、一人っ子の子供と楽しく過ごしてきた。ちょうど彼らが子供にマンションを買い、結婚の準備をしてやろうとした時に、不慮の事故でその子供の若い命が奪われてしまったのだ。

 「失独者」たちはややもすると年老いて子を亡くしたせいで想像以上の苦しみに陥りがちだ。彼らはもうかなりの年で、もう一度子供を生むことは不可能に近い。家族団らんや祝祭日になると、かれらは不幸なことを思い出したくないが故に、いつも親戚や友人と会うのを避けているが、亡くなった子供の様子がいつまでも目の前に現れ、彼らは毎日のように涙を流している。彼らは自称「失独者」である。

 統計局が発表したデータによると、2011年の全国総人口は約13億4735万人、その前のサンプリング調査によると、2009年の15〜19歳までの人は全人口の約7.17%を占め、20〜24歳までは全人口の約7.52%、25〜29歳までは全人口の約6.48%を占めるという。

 衛生部が発表した『2010中国衛生統計年鑑』による当該年齢層人口の疾病死亡率から推算すると、15歳〜30歳までの年齢層の死亡率は少なくとも40人/10万人となる。これによって推測できることは、現在中国で毎年15歳〜30歳までの一人っ子の死亡者数は7.6万人、それによって毎年約7.6万の家庭が「崩壊」することになる。

 専門家の推算では、1975〜2010年までの間に生まれた2.18億人の一人っ子の中、1000万人を越える人が25歳未満で死亡しているという。これは2000万人もの中高年の親が一人っ子を失い、孤独な「失独」老人になることを意味する。

 ネットユーザー「倩影」さんが3年前から全国失独者グループのためにQQ群(SkypeやMSN同様、テンセントQQのグループ機能)を設け、3年後の今、そのQQ群が一つから三つに変わり、また登録メンバーも1000人を超えたという。「倩影」さんによると、現在、群メンバーの共通の願いは、失独者グループ専用の老人ホームを作ることである。一般の老人ホームには、子女が保護者として保証してやらないと入所手続きができず、入れないからだ。

 失独者たちは一切の集いを拒む。春節(旧正月)になると、これらの人たちは人と会うのを避け、人里を離れたレジャー施設などで休みを過ごし、親戚や友人にいくら誘われても出て来ない。まして結婚式や誕生パーティ、出生祝いとなると、かれらはお祝い金は出すが、一切参加しない。昔のことを思い出したくないからだ。彼らは自称精神的障碍者で、生涯治らないという。

 多くの失独者たちは一人っ子を失った後、世俗の名利や金銭を気にしなくなるが、しかし内心憂えが深まるばかり。彼らは、彼ら自身が死ぬ時誰がそばにいてくれるか、誰にいてもらえるか、如何に尊厳ある死を遂げられるか想像できない。

 当時、億単位の中国の両親は政府の計画出産の呼びかけに応じ、一人っ子を産み、全ての希望をその子に託した。しかし、1000万人を超える一人っ子が何らかの原因で死んでいき、2000万人もの親たちは失独者になっている。

 ある「失独者」は、中国の庶民は子供のためにだけ生きているのだ、という。子供がいなくなってしまうと、全てが無くなってしまう。彼らが年老いて体が衰え、子供の助けが必要な時、彼らは孤立無援で老人ホームにさえ入れない。彼らの老後の人生、どこに頼ったらいいのだろうか。

 2012年6月5日午後、80人あまりの「失独者」たちは、国家人口・計画生育委員会の陳情受付所に赴き、計画生育委員会の職員や警察と一時間対峙した後、その内の5人が代表として、国家計画生育委員会副主任の王培安氏らと計画生育委員会の8階の会議室で座談会を行った。

 その座談会で「失独者」たちは自分たちの要求を訴えた。彼らは経済的な補償を求め、また政府に「失独者」たちのための公営住宅団地の提供を求めた。最も強く求めたのは関係部門が「失独者」を救済するための法律や制度を整備し、「失独者」たちのための相談窓口を設けることだった。

 一人っ子を失ったその悲しみは一般の人には想像できない。子供に先立たれる悲しみよりも、その悲しみがずっとその人の残りの人生に付きまとうことのほうが深刻である。他の人が楽しく一家団らんしている時、彼らは思い出の中で心を痛めている。更に深刻なのは、誰にも頼れない農村のお年寄りや社会保障の受けられない都市部の低所得者たちが、悲しさに耐えるだけではなく、彼らの生存自体が困難を極めている。

 「失独者」たちの多くはかなりの年配者なので一からやり直すことは到底不可能である。このような結果をもたらしのはすべて「計画生育」政策に原因がある。国にとって、いかに善意を持ってこれらの「失独者」たちの面倒を見てやるかが避けて通れない問題になっている。

 「失独者」問題は家庭問題であると同時に、社会問題でもある。なぜなら、彼らが今のこのような状況になったのは国の政策を支持するために犠牲を払ったからだ。しかし、現状では、「失独者」についての研究も、「失独者」のための政策も空白のままである。(編集担当:祝斌)