値千金の同点弾を決めた吉田(Photo by PICSPORT/Photo kishimoto)

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ヨルダンの逃走劇は、エピローグを迎えつつあった。攻めても、攻めても、ゴールをこじ開けることができない。メインスタンドから見てバックスタンド右側を占めるヨルダンのサポーターは、いますぐにでも歓喜を爆発させようとしている。7度目のアジアカップ出場で、初の黒星スタートが目前まで迫っていた。

「こういうチームを相手にプレースピードが上がらないと、難しい試合になる」

試合後のザッケローニ監督は、落ち着きを取り戻した表情で振り返る。キックオフからテクニカルエリアでほとんどの時間を過ごしていたその顔つきには、険しさがべったりと貼り付いていた。内面のざわつきがにじみ出るかのように、腕を組み、唇を噛み、ポケットに手を突っ込んだ。岡田前監督やジーコ元監督のように、途中交代した選手に握手を求めることもなかった。落ち着きを取り戻したというのは、そういう意味である。

ザックだけではない。選手もまた、世界とアジアの違いを認識しただろう。アルゼンチンとの親善試合とは異なる難しさが、アジア相手の戦いには存在するのだ、と。

課題はいくつもある。前半の日本は71パーセントものボールポゼッションを記録したが、決定機はふたつしかない。ヨルダンにも同じ数しか与えていないが、先制点を献上してしまった。ポゼッションがスコアに反映されないのは、昨年4月のセルビア戦を思い起こさせる。

前後半トータルでも、ポゼッションは68パーセントで高止まりする。ところが、1トップのタッチ数は少ない。前田は16回、李忠成は10回にとどまる。彼らをおとりに使うことがあったとしても、物足りない数字だ。非効率なポゼッションだったことがうかがえる。

失点はアンラッキーな流れだった。シュートブロックを試みた吉田の左足に当たらなければ、川島の胸にすっぽりと収まるコースだった。

しかし、ペナルティエリアへ入ろうかという位置まで侵入され、なおかつフリーでシュートを打たせてしまったら、偶然という要素だって介入してくる。この試合のあとに行なわれたサウジアラビア対シリア戦の決勝点も、同じような流れから生まれていた。シリアの勝利は今大会最初のサプライズだが、サウジの守備陣がスキを見せたのは確かだった。