夢のなかで大天使に「頭に穴を開けられた」!?フランスの絶景モン・サン・ミシェル誕生にまつわる恐ろしい伝説【眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産】
10の基準で読み解く「一度は行きたい世界遺産」
10の登録基準に沿って代表的な世界遺産を紹介。景観だけではない、真の魅力が見えてきます。
【登録基準(vi)人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結び付く遺産】
「モン・サン・ミシェルとその湾」大天使のお告げが現実に!?
モン・サン・ミシェルは、フランス北西部の湾に浮かぶ修道院です。708年、アヴランシュの司教オベールが大天使ミカエルのお告げを受け、ケルト人の聖地「モン・トンプ」のあった場所に聖堂を築いたのが始まりとされます。その後、1204年にフランスがノルマンディー公国を征服すると、フランス王フィリップ2世の寄進を受け、モン・サン・ミシェルにも壮大なゴシック様式の建造物群が築かれました。
1339年に百年戦争が勃発すると、モン・サン・ミシェルは要塞としての役割を担います。切り立った岩山に築かれた堅牢な構造と周囲の激しい潮流が防壁となり、フランス各地が占領される中でも敵の侵攻を退けました。
また、モン・サン・ミシェルが建つ砂州は、ヨーロッパで最も干満差が大きいことで知られています。潮が引くと広い干潟が現れますが、満ち潮は驚くほどの速さで迫ります。かつて徒歩で砂洲を渡った巡礼者の中には、この潮にのまれて命を落とした人もいると伝えられます。19世紀後半には堤防が築かれ、アクセスは格段に良好になったものの、堤防が潮の流れを妨げることによる環境問題が浮上したことから、2015年から堤防は橋へと置き換えられました。
【THINK!】なぜこの景色は巡礼者だけでなく、多くの人を惹きつけるのだろう?
きっかけは司教が見た夢のお告げ
モン・サン・ミシェルはフランス語で「聖ミケルの山」を意味します。司教オベールの夢に大天使ミカエルが現れ、「モン・トンプの岩山に聖堂を建てよ」と告げました。最初は聞き流していたオベールですが、同じ夢を3度見ます。3度目に夢に現れたミカエルは、オベールの頭に指で穴を開け、オベールが目覚めると実際に頭に穴が開いていました。夢ではなかったと知ったオベールは、すぐに聖堂の建設に取りかかります。聖ミケルの姿は聖堂の最も高い尖塔の像など、いたるところで目にすることができます。
【巡礼路として】世界遺産に二重登録されている
モン・サン・ミシェルは、1979年に「モン・サン・ミシェルとその湾」として単独で世界遺産に登録されましたが、1998年には「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の構成資産にも含まれました。この2つは世界遺産の「顕著な普遍的価値(OUV)」が異なるため、前者では周囲の湾も含まれる一方、後者では巡礼路の要所として島の部分だけが登録されています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光 / イラスト:どくだみ三銃士
【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。
