(※写真はイメージです/PIXTA)

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老後の住まいとして有料老人ホームを選ぶ人が増えています。食事や見守りサービスがあり、将来介護が必要になっても安心できる。そんな期待から、まとまった資金を投じて入居を決めるケースも少なくありません。しかし、契約内容を十分に理解していなかったことで、入居後に思わぬ問題に直面することもあります。

「ここで最期まで暮らそう」…夫婦が選んだ理想の住まい

誠さん(仮名・74歳)と妻の由紀子さん(仮名・72歳)は、5年前に都内近郊の高級介護付き有料老人ホームへ入居しました。

夫婦の年金収入は合わせて月28万円ほど。現役時代に蓄えた金融資産は約7,500万円あり、自宅を売却した資金も加えて、入居一時金を支払いました。

ホームにはレストランのような食堂があり、大浴場や図書室、フィットネススペースまで備わっています。

「子どもに迷惑をかけたくない」

「介護が必要になっても安心して暮らしたい」

そんな思いから選んだ住まいでした。

入居後の生活は快適でした。同年代の入居者と交流し、夫婦で旅行へ出かけることもあります。食事の支度や家の管理から解放され、まさに理想のセカンドライフでした。

長男夫婦も安心していました。

「ここなら安心だね」

面会に来るたびにそう話していたといいます。

ところが入居から4年ほど経った頃、誠さんに異変が現れます。転倒を繰り返すようになり、要介護認定を受けることになったのです。

当初は要支援程度でしたが、その後認知機能の低下も見られるようになり、要介護3と認定されました。

由紀子さんは元気でした。一人で買い物にも出かけられますし、趣味のサークル活動にも参加しています。そのため夫婦は当然、これまで通り同じ居室で暮らし続けられると思っていました。

しかし、その考えはある日突然覆されます。ホームから届いた一通の通知がきっかけでした。

そこには、運営方針変更に伴い、介護度の高い入居者を介護専用フロアへ順次移ってもらう方針が記載されていました。

誠さんも対象者でした。由紀子さんは通知を読み返し、思わず声を上げました。

「退去なんて聞いてない!」

施設そのものから追い出されるわけではありません。

しかし、夫婦が一緒に暮らしている一般居室からは移動しなければならず、場合によっては夫婦別々の生活になる可能性もあったのです。

入居契約書に明記…“見落としていた条件”

慌てた夫婦はホームへ説明を求めました。施設側は丁寧に対応しましたが、説明された内容は厳しいものでした。

入居契約書には、介護体制の変更や心身状態の変化に応じて居室変更を行う場合があることが明記されていたのです。

由紀子さんは言葉を失いました。

入居時にも説明は受けていたはずでした。しかし当時の二人は元気で、自分たちがその条件に当てはまる日が来るとは考えてもいなかったのです。

厚生労働省によると、介護付き有料老人ホームでは、契約内容に基づき居室変更や介護居室への住み替えが行われる場合があります。特に介護体制の維持や安全確保のため、一定の条件下で居室移動が認められているケースは珍しくありません。

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、高齢者のみ世帯の増加が続いていることが示されています。高齢期の住まい選びは今後ますます重要になりますが、その際には立地や設備だけでなく、将来的な介護対応や居室変更の条件まで確認しておく必要があります。

最終的に夫婦は、同じ施設内で暮らし続けることを選びました。誠さんは介護専用フロアへ移り、由紀子さんは一般居室に残ります。

以前のように四六時中一緒ではありませんが、それでも毎日顔を合わせ、一緒に食事をする時間を作っています。

「最初は納得できなかったけれど、今は仕方ないと思えるようになった」

由紀子さんはそう話します。

年齢を重ねれば身体状況も変わります。施設の運営方針や介護体制も変わることがあります。

だからこそ入居前には、「元気な今」だけではなく、「介護が必要になった後」を具体的に想像しながら契約内容を確認することが大切なのかもしれません。