「年収300万円でも、暮らしは選べました」資産3,000万円で地方移住した39歳女性、“家賃2.3万円生活”で見つけた〈小さな自由〉
早期リタイアやFIREという言葉が広がる一方で、「高収入の人だけの話」と感じる人も少なくありません。実際、まとまった資産を築くには時間も工夫も必要です。しかし、生活費を抑え、働き方や住む場所を見直すことで、会社に縛られすぎない暮らしを選ぶ人もいます。
「高収入じゃないと無理」と思っていた…選んだ地方移住
地方の小さな町で暮らす川瀬さん(仮名・39歳/女性)は、数年前まで都内の中小企業で事務職として働いていました。
年収は約300万円。決して高収入ではありませんでした。
「FIREなんて、自分には関係ないと思っていました」
それでも川瀬さんは20代後半から、少しずつ貯蓄と投資を続けていました。家賃の安い部屋に住み、外食を控え、ボーナスはほとんど使わない。派手な節約ではなく、固定費を下げることを意識していたといいます。
「我慢していたというより、お金を使う生活があまり自分に合わなかったんです」
転機は、30代半ばで体調を崩したことでした。
仕事量は増えているのに、給料は大きく上がらない。毎朝満員電車に乗り、帰宅後は疲れて何もできない。
「このまま定年まで働くのかな、と考えたら急に怖くなりました」
その頃、川瀬さんの金融資産は約3,000万円に達していました。
完全に働かなくてもよい金額ではありません。しかし、生活費を大きく下げれば、フルタイム勤務を続けなくても暮らせるのではないか。そう考えるようになったのです。
川瀬さんは会社を辞め、都内の賃貸を引き払い、地方へ移住しました。
現在の家賃は月2万3,000円。築年数は古いものの、日当たりがよく、近くには小さなスーパーと図書館があります。
「最初に家賃を見たとき、生活の負担が少し軽くなった気がしました」
総務省『家計調査(2025年)』でも、単身世帯では住居費が家計支出の大きな割合を占めています。収入を大きく増やすことが難しい場合でも、家賃などの固定費を抑えることは、暮らし方の選択肢を広げる一つの方法になります。
移住後、川瀬さんは月10万円前後で生活するようになりました。
食事は自炊中心。休日は近くの山道を歩き、図書館で本を借り、地元の直売所で野菜を買う。以前より使うお金は減りましたが、生活の満足度はむしろ上がったといいます。
「一生安心、とは思っていません」…家賃2.3万円生活の現実
川瀬さんは、「完全なFIRE」をしたわけではないと言います。現在も、在宅で月数万円ほどの事務サポートやライティングの仕事を受けているのです。
「働き方を自分で選びたかったんです」
会社員時代のように毎日決まった時間に出社する必要はありません。体調が悪い日は休み、繁忙期だけ少し多めに働く。そんな暮らしが、川瀬さんには合っていました。
一方で、不安がないわけではありません。
物価が上がれば生活費も増えます。資産運用が想定通りに進む保証もありません。病気になれば、働ける時間は限られます。
「3,000万円あるから一生安心、とは全然思っていません」
金融庁は、資産形成において長期・積立・分散の重要性を示していますが、将来の市場環境や生活費を完全に予測することはできません。若い年代で仕事量を減らす場合、医療費や住居、将来の年金額も含めて慎重に考える必要があります。
川瀬さんが地方移住後に意外だったのは、孤独感でした。都内では人間関係に疲れていたのに、地方では一日誰とも話さない日が増えました。
「最初は静かで最高だと思いました。でも、静かすぎる日もあるんです」
そのため、今は地域の朝市を手伝ったり、週に一度だけカフェで短時間働いたりしています。収入のためだけではなく、人と話す時間を持つためです。
「少し働くことで、生活にリズムができました」
川瀬さんは、FIREを“ゴール”とは考えていません。大切なのは、会社を辞めることでも、働かないことでもなく、自分が壊れない暮らし方を選べることだといいます。
「年収300万円だった自分でも、暮らし方を小さくすれば、選択肢は作れました」
もちろん、誰にでも同じ方法が合うわけではありません。
地方では車が必要な地域もあり、医療機関や人間関係の不安もあります。家賃が安いからといって、すべてが楽になるわけではありません。
それでも川瀬さんにとって、家賃2万3,000円の部屋で始めた暮らしは、人生を立て直すための大きな転機でした。
「少ないお金で満足できる自分を知れたことが、一番の収穫だったと思います」
大きく稼ぐことだけが、自由への道ではありません。
何にお金を使い、何を手放し、どこで暮らすのか。川瀬さんの選んだ生活は、年収や資産額だけでは測れない“自分に合った幸せ”を探す過程だったのです。
