RIZAPが「建設事業」に参入の衝撃…出店ラッシュのフィットネス事業から急展開した「真意」
「結果にコミットする」でフィットネス業界にゲームチェンジを起こしたRIZAPグループが、次々と「新たな一手」を打ち出している。
2022年のローンチから3年で連結黒字を達成、同グループの主力事業へと成長したコンビニジム「chocoZAP」を「第2章」として成長フェーズの移行を図る。また、子会社「RIZAP建設株式会社」を通じて店舗の内装工事などを請け負い、「ホワイトカラーから建設人材へのシフト」を実現するという。フィットネス業界から建設業界へ、完全な異業種への展開にはどのような狙いがあるのか。
「コンビニジム」から「社会の健康インフラ」へ
月額税込み3278円で通い放題、低価格の24時間営業コンビニジムというビジネスモデルを定着させた「chocoZAP」。2026年3月時点で国内1900店舗を超えるまでに拡大し、「普段着でちょこっと運動」できるジムとして、フィットネスに対する心理的ハードルを下げることに成功した。
あらゆるコストが高騰するなか、「chocoZAPの月額料金は据え置く」のがRIZAPの最大の強みであり、矜持だ。それを実現するためのコアになったのが「内製化」である。chocoZAPは入会から各店舗の入場に必要な会員証、ヘルスケアの記録までをスマホアプリから一括で行えるが、このアプリ開発も内製に努めてきた。店舗運営やマーケティング、AI活用に至るまで内製化を進め、低コストでスピーディーな出店体制を築いてきた。
同時に、セキュリティや店舗の空調などを遠隔で一括管理できるようにするほか、店舗の清掃、マシンのメンテナンスなどに協力する「フレンドリー会員」や「セルフメンテナンス会員」を募り、徹底した「省人化」「無人化」を図ってきた。人件費のコストカットは会費の据え置きという形で利用者に還元している。
2026年3月に打ち出された「第2章」では、女性専用店舗を設けるほか、フリーウエイトやダンベルなどよりステップアップした機材を配備した「ちょこガチゾーン」を一部店舗に導入、ワークスペースやカフェ機能を充実させた「サードプレイス」化を実証するなど、より多様な空間体験を得られるような試みを行っていく。
RIZAP執行役員の村橋和樹氏は言う。
「女性専用店舗は、女性ユーザーからのニーズが高かったマシンやサービスを重点的に導入しています。店舗数を拡大するうえで、同エリアに複数の店舗を出店するケースが増えてきました。女性専用店舗の導入は、そのような店舗に特色を設ける狙いもあります」
同グループは、5月14日に行われた2026年3月期決算発表の中でも、今期chocoZAP事業への150億円超の成長投資を行うことを宣言。chocoZAPを「スマートな健康の社会インフラ」へと進化させることを掲げている。努力や我慢をしてジムに通うのではなく、生活サイクルの流れの中にchocoZAPがあるーー。これまで以上に「コンビニ」感覚でchocoZAPを利用してもらうことが理想であるという。
課題解決型のFC展開
そのビジョンとリンクするのが、2025年12月より始まったchocoZAPのフランチャイズ(FC)展開だ。それ以前のchocoZAPはすべて直営だったが、今後はFCオーナーとも手を組み、より地域に根ざした形で店舗運営を行っていく。
会員は基本的に24時間、どの店舗も利用することができる。マシンの多寡やセルフエステ・セルフ脱毛などサービスのバリエーションの違いはあれど、均質化された店舗づくりが特徴だ。「第2章」やFC展開の動向から見るに、各地域の利用者層や特色にマッチした店舗がこれまで以上に増え、無人営業を維持しながらも「血の通った」サービス展開に注力していくと予測される。
一般的にFC展開というと、チェーンが加盟店に重いロイヤリティを課す、直営店との激しい競争など、ネガティブな要素も浮かぶ。だがchocoZAPは異なったFCのあり方を目指しているように映る。FCオーナーが第一に求めるのはブランドネームによる集客力かもしれないが、徹底した省人化によるローコストな運営ができるのは、他業種にはない魅力かもしれない。
chocoZAPは首都圏や都市部だけでなく、人口が比較的少ない地方やロードサイドにも出店実績が多数ある。地方でFC展開するにあたり、最大のネックはやはり人材難である。人件費などのコスト以前に、まず人手そのものが不足していることが、地域経済の活性化を妨げている。
その点でいえば、従来型の小売店や飲食店と違い、24時間の無人運営を可能にするchocoZAPのFC展開は、人材不足や未利用地の活用という点で、社会課題を解決する存在になる可能性がある。
徹底した内製化やDXの推進により、chocoZAPは驚異的な出店ペースを保ちながら低コストの「24時間無人運営」を確立するまでに至った。これが同グループの新たな「武器」である。約4年間で1900店舗以上を立ち上げたという実績と独自の店舗開発スキームが、新事業「RIZAP建設」の礎にあるのだ。
建設業界の「3K」のイメージを変える
RIZAP建設は、店舗の内装工事を主な事業内容に掲げる。chocoZAPのスピード出店で培ったノウハウをもとに、通常費用から25~30%削減、通常工期の約2倍速で施工を提供するという。施工だけでなく、運営に必要な物品調達やオープン告知の広告運用、保守メンテナンスのアフターサービスまでを一気通貫で担う。「安い、早い、ちょうどいい」サービスの提供を追求する、と瀬戸健社長は言う。
同社はchocoZAPを急展開するうえで、「物価高騰」「人材不足」「多重下請構造」という、建設業界が抱える大きな問題に直面した。これを解決するために、RIZAP建設では「3つの『直』」、すなわち製造工場との「直取引」、人材を社内で育成する「直雇用」、中間マージンを排除する「直接分離発注」に取り組む。瀬戸社長はこれを「ネットワーク型SPAモデル」と位置づけた。
RIZAP建設はすでに動き出しており、2025年10月〜2026年3月までの半年間で外部施工実績186件、約30億円の受注売上を達成している。RIZAPグループの「結果にコミットする」力が、建設業界でも期待されていることの証だろう。
RIZAP建設のビジネスの核は、端的に言ってしまえば「スキームの外販」である。だが特筆すべきは、先述の「3つの『直』」でいえば2番目、「直雇用」に向けたドラスティックな取り組みだ。建設業界の深刻な人手不足や雇用のミスマッチに対応すべく、RIZAPグループの社員の約1割にあたる500人を、2026年度中に建設人材へとリスキリングする計画を表明している。
500人もの人材をリスキリングするという決断に至った背景には、グループ全体で進めてきた業務効率化がある。余剰リソースをRIZAP建設に投入し、次なる成長戦略として見込む。
だが、いわゆる「ホワイトカラー」から「ブルーカラー」へと「ジョブチェン」を図るのは、そう簡単なことではない。
建設業界のみならず、製造業・運送業など広義の「現場」での慢性的な人手不足や、AIの台頭を理由に「ホワイトカラー不要論」が巻き起っているのはたしかだ。海外では高技能を武器に受注売上を増やし、「ブルーカラービリオネア」と呼ばれる人々まで誕生しているという。足下の日本では、ホワイトカラーからブルーカラーへの転職はまだ途上段階だ。
「ブルーカラーの『3K』のイメージを変えたい」。瀬戸社長は4月14日の記者会見でそのように語った。「きつい・汚い・危険」から、「健康・快活・給与アップ」へと「労働の再定義」を図るのがRIZAP建設の方針だ。
なおRIZAP建設の代表に就任した幕田純氏は、RIZAPのパーソナルトレーニング事業立ち上げ時に、トレーナー育成プログラムの確立に携わった人物。建設業界経験者ではなく、初心者からプロを育てるスペシャリストが代表を務めることで、「『人は変われる。』を証明する」RIZAPグループの理念に基づき、グループ社員のジョブシフトを支援していく考えだ。
迫る「2040年問題」に楔を打ち込めるか
ブルーカラーに対するバイアスを払拭するーー。高いハードルだが、実現すれば建設業界のみならず、日本の経済構造そのものを大きく変えるチャレンジと言えるだろう。
日本の建設業界は、「2040年問題」と呼ばれる大きな壁が徐々に迫ってきている。高齢化と人口減少がピークに達し、大工など現場で活躍する技能者が圧倒的に不足するおそれがあるのだ。
構造転換が図られることないまま2040年を迎えると、日本のインフラが老朽化し、修繕もできないような事態に陥ってしまう。技能者のノウハウ継承が途絶えれば、日本は自力でインフラを立て直すことすらできなくなってしまう。
RIZAP建設の真のゴールは、単に「コスパの良い施工」を提供するだけではなく、建設人材の育成ノウハウを確立し、社会構造の変化に耐えうるリソースを作ることにあるのだと考えられる。「2040年問題」に楔を打ち込む存在となれば、同グループの企業価値もまた新たなものへと変化を遂げるだろう。
未来を創造するインフラおよび人(材)を作るという意味では、翻ってchocoZAPの事業にも通じるものがある。「トレーニング」と「建設」、異なる領域に共通点が見えてきた。
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