劇場で売っているドリンクは割高なことが多いが…(wavebreakmedia/PIXTA)

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5月上旬、映画館への飲み物の持ち込みをめぐり、Xで議論が起こった。

「館内で販売されている飲料が体質に合わず、水筒を持ち込まざるを得ない」という趣旨の投稿に対し、映画館が公式サイトなどで飲食物の持ち込みを禁止していることなどを挙げながら、批判する声が相次いだのだ。

また、多くの映画館では、本編上映前の劇場マナーCMで「スマホの電源を切る」「前の席を蹴らない」などと並べて「館外から飲食物を持ち込まない」と呼びかけている。

しかし、たとえマナーであるとしても、映画館が客の行動を制限・禁止することに法的な根拠はあるのだろうか。

事前に明示されていれば「持ち込み禁止」ルールは合法だが…

民法に詳しい杉山大介弁護士によると、「飲食物の持ち込み禁止」というルールの法的な根拠は「契約自由の原則」と「場の管理権」であるという。

「『客がお金を払って、映画館は映画を見せる』という基本的な契約にどのようなルールを付随させるか、映画館という場所の利用にどんな条件を課すかは、サービスや場を提供する側である映画館の自由です。

公序良俗違反や、消費者契約法などの上位法規の違反によりルールが無効となる要素も、特にありません」(杉山弁護士

そして、チケットを購入する際に「飲食物の持ち込み禁止」があらかじめ明示されていたなら、客側には、映画館の定めたルールに従う義務が生じる。

ただし、もしネットなどを通じて映画館の外でチケットを購入した際にはルールが明示されておらず、劇場にある掲示や上映前のマナーCMの段階で初めて「飲食物の持ち込み禁止」であることを客が知ったというケースでは、杉山弁護士によると、法律的には微妙な判断になってくるという。

何度か映画館に通ったことがある人が飲食物の持ち込み禁止ルールを知らないという事態は考えづらいが、「初めて映画館に行った」という若者などの場合には、あり得るケースかもしれない。

ルール違反した客は追い出されるのか?

館外から飲食物を持ち込んだ客を、映画館の側が、ルール違反を理由にして追い出すことはできるのだろうか。

この点について弁護士JPニュース編集部は複数の映画館運営会社 に「ルールに反して飲み物を持ち込んだ観客に対し、どのような対応をしているか」「これまでに、飲食物の持ち込みに関して法的措置を取った事例があるか」と質問を送ったが、回答はなかった。

ただし、杉山弁護士によると、法律的には、「飲食物」に関するルールは「映画鑑賞」の契約という主となる部分に付随する、あくまで副次的な部分だ。したがって、映画館が飲食物に関するルール違反を理由に、チケットを購入した客が映画を鑑賞する権利を奪えるかどうかには、議論の余地があるという。

「法律的に整理すれば、『飲食物の持ち込み禁止ルール違反によって映画館が失った売上』(館内で販売しているドリンク・フードの売上など)を客側が損害賠償するにとどまる……という結論もあり得るかもしれません。

なお、もし客側に立ち退き義務が認められるのに、立ち退きを要請された客が映画館に居座ろうとした場合には、不退去罪(刑法130条、法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)が成立する可能性もあります。

しかし、そもそも客側に立ち退き義務が発生するかどうかという点には、上述してきた民法の議論が絡みます。改めて考えてみると、『映画館への飲食物の持ち込み』という身近な問題であっても、法律上の答えは意外とシンプルには出てこないのです」(杉山弁護士