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老後の生活基盤となる「年金制度」。将来的には制度が破綻するのではないかといった懐疑的な意見や、世代間で保険料の支払額と受給額の差が大きく不公平であるといった意見が飛び交い、何かと話題には事欠かない制度です。本稿では、企業年金制度と投資教育を専門として活動しているFPの山崎俊輔氏による著書『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集し、年金制度の批判でよく見る「払った分の保険料が戻ってこない」という主張の誤解について解説します。

「1,000万円の損」の話題も…“6年の長生き”で消えていく世代間の不公平

年金制度の批判において、よく主張されるのが「払った保険料分が、戻ってこない」というものです。世代間の不公平などでもこうしたロジックが主張されます。

実のところ、このテーマは問題設定自体にズレがあります。そもそも年金制度は「払った分回収する」ことが目的の制度ではないからです。

健康保険制度で「払った分、戻るか」を考える人はいません。払った保険料が戻るということは病気になっていることであり、私たちは「健康保険で損」したほうがいいからです。

年金保険制度だけなぜか損得の主張が広がりましたが、これは日本人の生存確率が高く多くの人が年金をもらえること、また長期にわたってもらうことが多いので収支計算が行えることによります。感覚的にも「払った分くらい、もらえるのか」という説明は響きます。

しかし、これも偏った主張です。たとえば、損得論では男性のデータを紹介していることがほとんどです。男女間には平均寿命の差が約6年ありますから、年金をもらう年数にも違いが出ます。同じデータでみると女性の世代間不公平はほとんどないのです。「損得するのは男性だけ。女性は損しません」とわざわざ言う破たん論者はいません。

男女で損得の差が出るということは、実は「1000万円の損」のような話題も、たった6年の長生きで不公平が消えていくということです。

長生きすれば元を取れる…年金制度で「払った分の回収」を考えるのは無意味なワケ

また、長生きすればたくさんもらえる、というメリットのほうはほとんど言及されません。

当たり前ですが公的年金は長生きすれば100歳でも110歳でも年金を支払ってくれます。この場合、払った保険料をはるかに上回る年金収入となります。しかし、年金のいい面は説明されません。

ズバッと言えば、年金制度において払った分を回収できるかは意味がないのです。

長生きをすれば誰でも元を取れるし、長生きできなかった場合も人生最期の日まで年金をもらえることで生活の基礎で困らないという安心があった、と考えるべきです。

年金額の損得論は無意味…ほとんどの人は「払った分の回収」が可能

物価上昇などの社会変化が生じるとき、金額ベースの損得を議論することも意味がありません。

「自分の現役時代の所定の保険料を納めれば、自分の老後の頃の物価上昇に見合った年金額がもらえる」そして「それはどんな長生きも保障する」ということを考えるべきなのです。

なお、「老後4000万円」の時代がやってくると、年金額は金額としては増えていきます。物価上昇に応じた引き上げがあるからです。

20〜30年前に払った保険料は当時の給与水準に応じて計算され、年金額は実際の老後のタイミングの物価水準に応じて計算します。

その差は広がっていきますので、物価上昇時代はほとんどの人は払った社会保険料分の回収ができる老後となるはずです(これもデフレ期の破たん論ではほとんど指摘されなかったことです)。

山崎 俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表

ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー