戸塚純貴にしかできない“3枚目”役 『SAKAMOTO DAYS』眞霜平助で光る緩急自在の芝居
“3枚目”を演じれば、彼の右に出る者はいない──。
参考:戸塚純貴、人気急増も実生活ではいまだ実感なし!? “実は人見知り”な撮影外のエピソードも
こんな書き出しを目にして、あなたはどの俳優を思い浮かべるだろうか。たしかに、日本には“3枚目”をうまく演じてみせる俳優が何人かいる。けれども決して多くはない。それも、“右に出る者はいない”ほどの実力者で、なおかつ若手世代に絞ってみるとどうだろう。やはり一番に挙げられるのは、戸塚純貴をおいてほかにいないのではないか。そんな彼の姿は、公開中の映画『SAKAMOTO DAYS』でも確認することができる。
この『SAKAMOTO DAYS』とは、『週刊少年ジャンプ』で連載中の同名人気マンガを、福田雄一監督が実写化したもの。かつて「史上最強」と謳われた殺し屋・坂本太郎(目黒蓮)の“引退後”の日常をコミカルに描き出す作品だ。
そんな本作で戸塚が演じる眞霜平助は、凄腕のスナイパーである。跳弾で敵を撃ち抜くほどの実力を持つ彼にとって、相手がどこに隠れていようと関係ない。坂本のことをライバル視しているようだが、窮地に陥った際には射撃で援護する。じつに頼もしい人物だ。しかしこれはコメディ作品とあって、戸塚は基本的におちゃらけたキャラクターを立ち上げている。そして同時に本作は、アクション映画でもある。個性的な面々が織り成す死闘のシーンでは、平助の声と表情はふとシリアスなものになる。と思ったのも束の間、再び彼はおちゃらけはじめる。戸塚の演技は緩急が自在。観ていて心地がいい。
戸塚といえば、福田組の常連俳優である。映画なら『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』(2016年)や『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年)、ドラマなら『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)や『親バカ青春白書』(2020年/日本テレビ系)などに好演を刻んできた。今作のキャスト陣の中でいえば、一部の俳優をのぞいて、彼は出演最多クラスの存在。彼のパフォーマンスに触れていると、コメディを基調とした福田雄一作品の中で為すべきことを、誰よりも深く理解しているのを強く感じる。本作における眞霜平助の役どころは、それ相応の経験を経てきた者にしか務まらないものだろう。
■戸塚純貴が成立させる、眞霜平助の“ひとり芝居” 戸塚の演技について、“緩急が自在”だと先述した。その自在さは今作において、間違いなくナンバーワンのレベルにある。誰かの助けを借りることなく、戸塚はたったひとりで、“ノリツッコミ”のようなことをやってのけている。なぜならほかの登場人物たちと違い、平助は単独行動を取るキャラクターだから(正確には、相棒のピー助という鳥がいるのだが)。彼にフォーカスするシーンでは、特定の誰かを相手にすることなく、ひとりだけでおかしみのある瞬間を生み出している。
登場人物同士のかけ合いは、やがてグルーヴ感を生み、それがそのシーンの個性になり、いつしか作品全体の印象に影響を与えるものだ。ところが戸塚の場合、これを基本的にひとりでやらなければならない。彼がかけ合いをする相手は自分自身であり、客席に座る私たち一人ひとりだ。自分の演技に対して観客がどう反応し、何を感じて何を思うのか。映画は演劇と違ってナマモノではなく記録芸術。パフォーマンスをしている時点ではもちろん、観客のリアクションは分からない。けれども戸塚の演技は観客を置いてけぼりにしない。ひとりで笑いを取ろうとしながら、それは独りよがりなものにはなっていない。まだ見ぬ観客との対話が、彼にはできるのだ。
平助は凄腕のスナイパーというイケてる一面があるわけだが、おっちょこちょいなところもある3枚目。戸塚がたったひとりでシーンを背負うポジションを任せられているのは、作り手たちからの高い信頼度がある証にほかならない。戸塚純貴が3枚目を演じれば、彼の右に出る者はいない。福田組常連の戸塚は『SAKAMOTO DAYS』において、安心と信頼の存在なのである。(文=折田侑駿)
