アメリカで進む「加速主義」対話なき対立で過激化する政治暴力 トランプ再々襲撃事件に「トランプ氏は原因ではなく、今の社会が生んだ結果」

ホワイトハウス記者会が主催する夕食会で、トランプ大統領を狙った発砲事件が発生した。トランプ氏は過去2度の襲撃を受けているほか、2025年9月には、トランプ政権の立役者と言われた保守系の政治活動家、チャーリー・カーク氏が大学での講演中に銃撃され、死亡した。過激化する政治暴力に、どう応じればいいのか。『ABEMA Prime』ではその正体を専門家と考えた。
【映像】トランプ氏を銃撃しようとしたアレン容疑者(逮捕直後の様子)
■アメリカ内で進む「加速主義」

ストラテジーアドバイザーのトム・ローガン氏は、今回の事件の背景として、「一部のアメリカ国民にトランプ氏をやめさせられない事への不満がある」と指摘する。「アメリカ人としてビックリしたと同時に、ビックリしてもいない。政治的暴動は以前からあり、1968年にはロバート・ケネディ上院議員やマーティン・ルーサー・キング氏(キング牧師)が暗殺された。その後、長年静かになったが、最近政治への不満から、また始まり残念だ」。
アメリカ人のトランプ氏に対しての評価には「極端に支持する」「まあまあ支持する」「中立」「反対」「すごく反対」があるとして、「“すごく反対”は一番小さいが、裏では暴動を期待しているのだと思う。もし成功すれば、アメリカの街角には喜ぶ人が大勢出ても不思議ではない」と説明する。
そして「大統領でなくなることに対して、支持者がどうリアクションするかだ。最悪の事態を潜在的に希望している人もいれば、“トランプ疲れ”や諦めから『またか』と、何も感じない人もいる」とした。
『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』著者で、共同通信社編集委員の川北省吾氏は、その背景に「加速主義」があると推測する。「政治目的があった時に、プロセスを経て達成するのではなく、いきなり達成するために力を行使する。政敵とみなして殺害したり、社会を変えるためにインフラを攻撃したり。そうした加速主義がアメリカで広まっている」。
具体例として「アメリカ陸軍士官学校のテロ対策センターが、2023年に『2016〜22年に加速主義的動機に駆られ、白人至上主義者がエネルギーシステム襲撃を企てた計画が“劇的に増加した”』との報告書を出した。ここでは白人至上主義者だけでなく、極左やアナキスト的な犯行にも言及されており、もはや党派を問わない状況だ」と紹介する。
ローガン氏は「日本に長期間住むアメリカ人は、『安全が素晴らしい』と言う。アメリカでは銃乱射事件が日常茶飯事で、今までは一般市民が苦しんできたが、エリートにも暗殺未遂が起きた。ただ、国内ニュースでは銃の問題があまり出ず、根本的に変わらないと危ない」と危機感を募らせる。
川北氏は「よく『トランプ氏は原因か、結果か』と言われるが、まずアメリカ社会があり、それを反映したリーダーとしてトランプ氏がいる」と推測。イラン攻撃については「トランプ氏の心の中に『自分はイランに狙われている』という復讐心もあったのではないか。第1次トランプ政権でホワイトハウスの高い地位にいた人物が、取材でそう言っていた」とした。
■対話がなくなり、より暴力へ

カーク氏の射殺事件については「容疑者は性的少数者の権利を擁護する人物で、カーク氏の思想が気に入らなかった。家族に『話し合いでは解決できない憎しみもある』と言っている」と説明する。「トランプ氏が受けた3回の襲撃を見ても、明らかに皆が反トランプだ。右派より左派がやった可能性が高く、最近は保守派への政治暴力が目立っている」。
現状を「右派によるリベラル派への攻撃も、かなり目立ってきていて、ハードルが下がっているのではないか」と予想しつつ、「トランプ氏が撃たれる前の月に、全米で行われた世論調査では『トランプ復権を阻止するために暴力で止めてもいい』という人が10%いた。約1700万人がそういう考えを持ち、そのうち3割が銃を家に持っている。約500万人が危険な思想を持ちつつ、銃を持っていることになる」と語る。
ローガン氏は「アメリカも根本的な国民性が変わってきた。30〜50年前には、今と同じように銃があちこち出回っていたが、乱射事件は有り得なかった。7歳の私も、おじいさんの銃がどこにあるかわかっていたが、手を出さなかった」と振り返り、「自己管理と感情のコントロール、被害者意識などに問題が存在する。銃器プラス国民性で考えるべきだ」とした。
2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「安倍晋三総理が亡くなった時に、喜びを表明した人もいた。日本にも政治家に『死んでほしい』と思っている人はいるだろう。ただ、実力行使は銃社会では簡単だが、日本では難しい。アメリカでは大統領が暗殺されそうになることが多い。日本にもそうした動きがあっても、実行しづらいから起きにくいだけだ」と見る。
左右の対立については、「右はすぐ暴力に行き、左は対話しなくなったのが問題だ。僕はアメリカで4chanというサイトをやっているが、『自由に話すサイトがなくなれば、事件も生まれない』と考える左派の人が結構いる。僕はそんなわけないと思う」との見解を示した。「対話をしないと解決しない。『イスラム教とキリスト教、どちらが正しいか』は絶対に解決しないが、少なくとも対話しない限り、どんな問題も解決への道はない」。
(『ABEMA Prime』より)
