高市首相(4月30日午後、首相官邸で)=米山要撮影

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 高市首相が2日にベトナムで行う外交演説案の全容が判明した。

 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の進化に向け、重要物資のサプライチェーン(供給網)強化や安全保障での連携など三つの重要分野での協力策を表明する。経済安全保障上の重要性が増す海底ケーブルの整備支援などによる「FOIPデジタル回廊構想」も提唱する。

 首相は1日、ベトナム、オーストラリア歴訪に向けて出発する。外交演説はハノイの大学で行う予定だ。

 演説案によると、2016年に安倍晋三首相(当時)が提唱したFOIPについて、高市首相は「(国際)環境は大きく変わったが、FOIPの妥当性は揺らがない」と強調する。自由や開放性、法の支配に基づく国際秩序構築などのため、日本の役割を「今まで以上に主体的に果たしていく」と決意を示す。

 その上で、〈1〉エネルギー・重要物資の供給網強化など「AI(人工知能)・データ時代の経済エコシステムの構築」〈2〉「官民一体での経済フロンティアの共創」と「ルールの共有」〈3〉地域の平和と安定のための「安全保障分野での連携」の拡充――を重点分野に掲げる。

 演説案では、緊迫するイラン情勢を「FOIP実現に向けた日本の覚悟を試す出来事」だと位置づける。具体策として、医療品などの重要物資を生産する各国の供給体制を維持するため、総額約100億ドル(約1・6兆円)の金融支援の枠組みに基づき、エネルギー分野の連携強化を訴える。日本の技術力を生かした海底ケーブルや衛星通信など通信インフラ(社会基盤)の整備支援も表明する。現地語によるAIの共同開発などAIの開発・利活用の競争に勝ち抜くための対策にも言及する。

 「ルールに基づく経済秩序の維持・拡大が不可欠だ」として、日英豪など12か国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)に関し、インドネシア、フィリピンなど「戦略的に重要」な国々の加入手続きの早期開始を目指す方針も示す。

 レアアース(希土類)などを武器に各国に経済的威圧をかける中国を念頭に、重要物資の供給を特定国に過度に依存しないため、価格だけに基づかない「公平な競争条件の確保」の重要性を訴える。

 安保面では、海上交通路(シーレーン)の安全確保などに向けた政府安全保障能力強化支援(OSA)の対象国や事業規模を拡大する方針を打ち出す。政府開発援助(ODA)を活用した港湾や空港などのインフラ整備、海上保安能力面の支援拡充を図る考えを示す。