「感動立国Bizカンファレンス」レポート~地域創生リーグの可能性を探る
りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2026 IN NAGASAKIが開催された1月16日からの3日間、出島メッセ長崎で行われたB.LEAGUE ALL-STAR FES 2026は33,745人もの入場者を集め、本戦が行われたハピネスアリーナに負けない盛り上がりを見せました。
その出島メッセ長崎では、1月16日に「感動立国Bizカンファレンス」が開催されました。各クラブや自治体関係者を対象に、「スポーツビジネスが、地域を、まちを元気にする」をB.LEAGUEがどのように取り組み、実現しているかを3つのセッションで紹介しました。
セッション1では、B.LEAGUEの島田慎二チェアマンとともに、徳島ガンバロウズの藤田恭嗣代表、愛媛オレンジバイキングスの青野慶久会長が登壇しました。2人はいずれも愛媛、徳島と四国出身で、藤田会長は株式会社メディアドゥ、青野会長はサイボウズ株式会社を経営する起業家です。
藤田代表は、以前から愛媛県で地域創生のために起業家支援に力を入れていましたが、一方で老若男女を盛り上げるために徳島ガンバロウズを立ち上げてスポーツ事業に参入しました。「最初に徳島ガンバロウズという名前を発表した時には袋叩きに遭いました」と苦笑混じりで自己紹介をしますが、「今では徳島県の全員がガンバロウズを大好き、それぐらい名前が浸透しています」と胸を張ります。
「メディアドゥ単体でクラブを立ち上げることもできましたが、地域を盛り上げるには人を巻き込む必要があります。メディアドゥが3分の2の株式を持ち、残りは金融機関やメディア、企業や県バスケットボール協会など22社に加わってもらいました」と、クラブの運営企業となる株式会社がんばろう徳島の成り立ちを説明します。
地元メディアとの連携により、家族揃ってチームを応援する状況を作り上げ、設立2年目で黒字化を達成。「おじいちゃんおばあちゃんから赤ちゃんまで、頑張れ頑張れと声を出してくれます」とうれしそうに語る藤田代表自身も、「ホームゲームには全試合、アウェーも半分ぐらい行っています。誰よりも自分が応援している雰囲気を出さなきゃいけないと思っているので、一番前で誰よりも声を出しています」と、チームに魅了されています。
青野会長は昨年6月に愛媛オレンジバイキングスを子会社化したばかり。自身が生まれ育ち、サイボウズを創業した愛媛県のBクラブの経営を引き受けることになりました。それまでのチームはなかなか勝てない、観客もあまり入らない状況で、青野会長も最初に出資を求められた際には乗り気ではなかったそうです。
それでも青野会長は自身が生まれ育った今治市で、元サッカー日本代表監督の岡田武史が手掛けるFC今治の躍進を間近で見ていました。「岡田さんがまさにいろんな人を巻き込み、JFLに上がり、J3に上がり、なんとJ2に上がってスタジアムまで作っている。今はチケットが取れません。その10年間を見て、地方でもやれると感じました」
「そうしてB.LEAGUEの試合を見に行って驚いたのが、女性比率の高さ。これから地方で女性が流出すると困る、子供たちの育つ場所を作りたいと言うのであれば、地域に一つずつバスケットボールチームを育てていかないと、魅力のない町になってしまいます。ちゃんと経営を回せるのであればと、自分の中で勝ち筋が見えたのが大きかったです」
両チームとも単独で事業を行うのではなく、行政やメディア、金融機関など地域全体を巻き込むプラットフォームの構築を始めから重視しており、徳島は2期目で黒字化に成功しています。愛媛は昨シーズンの5勝55敗から、このカンファレンスの時点で20勝10敗と大きな躍進を遂げており、「まだ始まったばかりでノウハウは持っていませんが、今のところ良い手応えしか感じておりません」と青野会長は語ります。
2人に共通するのが、ファンのリアクションを直接感じられることの意義です。藤田代表は「当社は電子書籍の流通をやっているので、消費者の顔がなかなか見えづらい。それが現地で応援すると、人の笑顔、喜びや涙、感動があります。その感動を徳島県、そして日本中に広げていくために頑張ろうと思えます」と言います。
青野会長も「藤田さんがおっしゃったように、人の心を動かす力があります」と手応えを語ります。「私たちはBtoBの企業で、生産性を上げるような提案をして実現していく商売をしていたのに、今はいろんな人に『チームを強くしてくれてありがとう』と言ってもらえて、スポンサー営業に行っても『愛媛のためにリスクを取ってくれてありがとう』と言われます。心を動かす力が圧倒的に強いと思います」
プラットフォームとしてのBクラブは、地域の様々なステークホルダーを束ねる力があると2人は感じています。それについて藤田代表はこう語ります。「徳島は金融機関とメディアと行政の皆さんが連携、連動して地域を盛り上げています。メディアと行政は時には逆の立場になる構造もありますが、ガンバロウズに関しては行政の皆さんとメディアの皆さんが非常に近しく、上手くやれていますし、それを通じて地域の皆さんと行政の皆さんを近付ける効果があります」
青野会長も「地方では企業同士が微妙に仲が悪かったりしがちですが、それを束ねる力がある」と感じています。「この愛媛には一つしかバスケチームがないわけで、これが良くなるのか悪くなるのかは皆さんに懸かっています、となれば、より高い視点に立っての『愛媛をどうしていくのか』の議論に皆さん乗ってきてくれます」
Bクラブを持つことで地元を動かし始めた2人は「このプラットフォームをどうビジネスに、どう経済価値に変えていけるか。そうするとぐるっと回ってみんなの成功体験になります」と語り、さらにその先を見据えています。「一県に一つのBクラブを持って、これをネットワークすることでさらに大きな価値にできる。そこが本当に素晴らしいところ。それを皆さんと一緒に進めることができたら幸せです」
セッション1で語られた「クラブ=地域のプラットフォーム」という考え方は、セッション2とセッション3でのまちづくりの議論にも強くかかわっていきます。
セッション2では長崎市の鈴木史郎市長、株式会社リージョナルクリエーション長崎の岩下英樹社長、民間都市開発推進機構で常務理事を務める渡邉浩司が登壇して、「オール長崎」での取り組みとなった長崎スタジアムシティについて「スポーツを核としたまちづくり」のテーマで議論がかわされました。
岩下社長は「感動とビジネスの両立は難しい。だからこそ両立させてロールモデルにしたい。失敗したら誰も真似しません」と、民設民営の長崎スタジアムシティの責任を語ります。これに対して鈴木市長は「各論で異論はあっても、人口減をどう乗り越えるかの気持ちは同じ。だからこそコミュニケーションが大事になります。『民』が場を作ったので、『官』はみんなを繋ぐ役割を果たす」と、長崎市としての役割を語りました。
またセッション3では日本財団の経営企画広報部長を務める長谷川隆治、茨城ロボッツの川粼篤之代表、佐賀バルーナーズの田畠寿太郎代表が登壇。「B.LEAGUEがまちをEN.TOWNする スポーツ×地域課題解決のまちづくり事業」と題して、茨城の水戸ど真ん中プロジェクトや、佐賀のウォーカブルなまちづくりが地域創生にどのように貢献しているか、Bクラブを今後どのようにまちづくりに活用していくかが語られました。
日本財団は様々な形でまちづくりへの支援を行っていますが、長谷川部長は「助成はトライするためのもので、その間に自走できる、社会貢献活動から事業に切り替えなければいけない」と言います。「これまで『公』がやってきたまちづくりが『民』に移ってきた今、スポーツクラブが果たせる役割は大きい。スポーツクラブは『民がやる』熱量を伝播させられます。地方にあるのがB.LEAGUEの強み」と川粼代表、田畠代表は語るとともに、「エンタメしながら稼ぐ」を形にする意欲を新たにしました。
「感動立国Bizカンファレンス」に参加したのは、各クラブや自治体の関係者など約250人。Bクラブがそれぞれの地域にできることで、様々な相乗効果が生まれること。地域にすでにあるBクラブをどのように活用していくか。その可能性を広げる学びの場となりました。
