口元が突き出る「口ゴボ」 “口呼吸”が顔立ちを変えてしまう? 放置NGの“リスク”を歯科医師が解説
口ゴボとは、唇を閉じた時、横から見て口元が鼻や下顎よりも前に突き出て見える状態を指します。豊洲センシティ矯正歯科(東京都江東区)理事長で歯科医師の石川宗理さんによると、口ゴボは複数の要素が関係して起きるといいます。そこで、口ゴボの原因や、なりやすい人の特徴、改善の必要性などについて、石川さんに聞きました。
【実際の写真】「えっ…!」 これが、横から見た「口ゴボ」の口元です
「機能的な問題」ある場合は改善した方がよい
Q.そもそも、どのような状態のときに「口ゴボ」と診断されるのでしょうか。
石川さん「『口ゴボ』とは、口元が前方に突出して見える状態を指す一般的な表現であり、医学的な正式名称ではありません。歯科・矯正歯科領域では、上顎前突や上下顎前突、あるいは前歯の傾斜や位置など、いくつかの要素が関係している状態として評価されます」
Q.「口ゴボ」の判断基準について、詳しく教えてください。
石川さん「側貌の評価では、横顔のバランスを確認するために複数の指標が用いられます。代表的なものとして、鼻先と顎先を結んだラインに対する唇の位置関係を見るEライン(エステティックライン)があり、口元の前後方向の位置関係の目安として広く用いられています。
ただし、実際の診断ではEラインのみで判断するのではなく、鼻と上唇のなす角度なども参考にしながら、顔全体のバランスを踏まえて総合的に評価されます。
口ゴボといわれる状態の見た目の特徴としては、『横顔で口元が前に出て見える』『唇を自然に閉じにくい』『口元に厚みがあるように見える』といった所見が挙げられますが、その程度や印象には個人差があります」
Q.なぜ口ゴボになるのでしょうか。なりやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。
石川さん「口ゴボは1つの原因で生じるものではなく、歯並びや骨格の状態に加えて、生活習慣なども含めた複数の要因が関与すると考えられています。まず、『どのような状態で口元が突出して見えるのか』という観点では、いくつかのパターンがあります。
例えば、上顎や下顎の骨自体の前方への成長が強かった場合や、前歯が前方に傾いている場合、あるいは歯が、歯の根を支える『歯槽骨』の中で前方寄りに位置している場合などが挙げられます。これらは上顎、下顎いずれにも起こり得ます。また、上顎の成長は標準的であっても、下顎の成長が弱く後方に位置していることで、相対的に口元が前に出て見えるケースもあります。
一方で、『なぜそのような状態になるのか』という原因については、歯や骨格の遺伝的な特徴が関与する可能性があるほか、『舌で歯を押す癖』『成長期の指しゃぶり』『口呼吸』『姿勢』といった習癖が影響することもあります。ただし、これらはいずれか1つだけで決まるものではなく、複数の要因が重なって現れることが多いと考えられています」
Q.医学的観点で、口ゴボは改善した方がよいのでしょうか。
石川さん「口ゴボは必ずしも治療が必要ではありませんが、機能面に影響が見られる場合には、改善した方がよいでしょう。
例えば、唇が閉じにくい状態(口唇閉鎖不全)や口呼吸が習慣化している場合、口腔(こうくう)内の乾燥を招きやすく、結果として虫歯や歯周病のリスクに関与する可能性が指摘されています。また、『前歯で食べ物をかみ切りにくい』『発音に影響がある』といった機能的な問題が見られる場合もあります。
一方で、これらの問題が認められず、見た目の印象のみが気になる場合には、医学的には必ず治療が必要とは言えません。そのため、治療の必要性は機能面と見た目の両方を踏まえて個別に判断されます」
Q.口ゴボの治療方法や予防方法はありますか。
石川さん「治療方法は、原因が歯にあるのか、それとも骨格にあるのかによって異なります。歯の傾斜や歯の位置が主な原因である場合は、矯正治療によって歯を後方へ移動させることで、口元の突出感を改善します。治療にはワイヤ矯正やマウスピース型矯正装置が用いられ、症例によってはスペースを確保するために抜歯が検討されることもあります。
一方で、骨格的な影響が関与している場合でも、前歯の傾きを調整することで口元の突出感をある程度改善することができます。しかし、骨格による問題が大きい場合や、骨の厚みの問題などで歯の移動量に限界がある場合には、歯の移動のみでは十分な改善が得られないと判断されることがあります。そのような場合には、外科的処置と矯正治療を組み合わせた外科矯正が選択肢となることもあります。
また、口回りの筋肉の機能バランスを整える目的で、口腔筋機能療法(口周りや舌のトレーニング)が補助的に行われる場合もありますが、この治療法のみで大きな骨格的改善が得られるわけではありません。予防や悪化の抑制という観点では、口呼吸を避けて鼻呼吸を意識すること、舌の位置や唇の使い方といった習癖に注意することが重要とされています。
ただし、これらはあくまで補助的な要素であり、すでに形成された歯列や骨格を大きく変化させるものではありません」
