個室が導入される東海道新幹線

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 ゴールデンウィーク、お盆、年末年始の帰省シーズンに、新幹線を利用する予定がある人は多いだろう。誰もが手軽に利用できる新幹線だが、そのぶん、車内でトラブルが頻発する。また、「座席を倒す時は一声かけるべきか、どうか」など、車内マナーの話題はSNSで常に議論になっている。【取材・文=宮原多可志】

【写真】せっかくお金を払ったのに“座席ガチャ”で失敗することも…賛否別れる新幹線のグリーン車

動画配信、写真撮影のマナー問題は多い

 東海道新幹線のグリーン車で、家族系YouTuberが騒動を起こし、謝罪に追い込まれたのは記憶に新しい。子供と弁当を食べながら動画を配信したところ、近くに座っていた男性から叱責されたという。ところが、あろうことかそのYouTuberは、下車後に男性を動画で罵倒したのである。迂闊にそんなことを言えば炎上するに決まっているのだが、予想通り炎上してしまった。

個室が導入される東海道新幹線

 動画配信者に限ったことではなく、鉄道の車内における写真や動画の撮影に嫌悪感を抱く人は少なくない。昨今は生成AIに写真が読み込まれ、フェイク画像が作成されるリスクを不安視する人も多く、気づかないうちにYouTubeやInstagramに顔が出ていたりすることを嫌がる人が増えているという。

 実際に、写真や動画撮影のトラブルは多いと指摘するのは、実際に新幹線に乗務したことがあるJRグループの現役社員である。家族系YouTuberの行動にも苦言を呈しつつ、このように話す。

「グリーン車の場合は静かに過ごしたいというお客様が非常に多いため、動画配信はできることなら、やめてほしいですね。車窓の風景を撮影するため、頻繁に座席を立って車内を歩き回る人もいますが、これも結構困ります。駅のホームでは自撮り棒を使った撮影をする人がいますが、新幹線の車両の近くで撮影し、架線に自撮り棒が当たると、最悪の場合は感電の事故に繋がる恐れがあります。

 鉄道ファンの写真撮影もトラブルが多いです。新幹線のホームドアから体を乗り出して撮影する人はたくさんいますが、言うまでもなく危険行為です。また、乗客に対して写真を向けてしまい、“俺のことを撮っただろ”と因縁をつけられることも。ホームで女性車掌の盗撮を行っている人もいるようですが、絶対にやめていただきたいですね」

騒音は様々なトラブルを招く

 現場で注意する鉄道会社の関係者の苦労も、並大抵のものではないと感じてしまう。そのほかにも多い様々なトラブルについて、JRグループの社員に話を聞いた。

 前出の通り、車内で「騒音」がトラブルになることは頻繁にあり、乗客同士で口論になることもしばしばだという。普通車以上にグリーン車で問題になりやすいのが、「高齢者の団体の話し声」や「子供の泣き声」だそうである。「グリーン車では静かに過ごしたいという要望が非常に多いため、話し声を嫌う人は特に多い」とのことだ。

 高齢者の話し声は利用者が注意することも多いというが、子連れの場合はそれもなかなか難しい。「グリーン車に子供を乗せるな」と批判的な意見もあるが、あくまでも公共交通機関と考え、音楽を聴くか、耳栓などで対策を講じるしかなさそうではある。なお、「しばし批判の対象になる外国人観光客は、グリーン車を利用することが比較的少ないため、問題になりにくい」そうである。

 また、近年多いのが、リモート会議を行う利用者だ。東海道新幹線などにはリモート会議ができる車両が設けられているものの、グリーン車でもそれを行う人がおり、やはりトラブルになりやすいようだ。筆者も遭遇したことがあるが、顧客の暗証番号を周囲の乗客に聞こえる音量で復唱していたため、個人情報が筒抜けになっていた。この企業のセキュリティ管理は大丈夫なのか、と不安になってしまった。

車内の“匂い”はどこまで許容できるか

 食べ物の「匂い」もトラブルになることが多い。新幹線車内の匂い問題といえば、大阪名物の有名な肉まんが思い浮かぶ人も多いかもしれないが、意外に問題になるのがハンバーガーなどのファストフード。車内で嗅ぐと、なかなか匂いがきつかったりするものだ。

 そして、肉や海鮮系が入っている駅弁も、人によっては匂いが不快に感じられるという。このあたりは賛否が分かれるところで、駅弁くらいなら旅情の一環として、許容してほしい気がするが……。

 匂いといえば、隣の人の香水の匂いや、おじさんの加齢臭の匂いもトラブルの種という。こればかりはどうすることもできないし、運が悪かったと思って諦めるしかなさそうだ。しかし、「中年男性に多いですが、靴を脱ぎ、さらに靴下まで脱ぎ、足を出してくつろぐ人がいる。その足の匂いがとんでもなく臭く、クレームが寄せられたことがある」と、JRグループの社員が言う。

「特に最悪なのが、靴を脱いで、前の座席と座席のすき間に足を延ばす人です。これをやる人は本当に多くて、普通車でも、グリーン車でも見かけます。前の座席に座っている人は臭くてたまりませんよ。どうか、こうした行為は自発的にやめてほしいものですが……」

 また、「キャリーケース」にまつわるトラブルも非常に多い。自由席ではキャリーケースを使って場所取りをする人がいるうえ、最近だと荷物棚に置かれていたキャリーケースが下に座っていた乗客に直撃、トラブルになった例もある。「駅構内でもキャリーケースのトラブルは後を絶ちません。移動中の人に当たって転倒させたりして、ケガの原因になりやすいのです」

東海道新幹線についに個室誕生

 さて、JR東海は、2026年10月1日から東海道新幹線に完全個室タイプの座席を導入すると発表した。個室は2003年以来、実に23年ぶりの復活となり、プライベート感が高い空間を求める利用者の要望に沿った形といえる。「1人用」と「2人用」の2タイプで、気になる料金だが、グリーン料金に5000〜1万円ほどの上乗せで利用できるそうだ。

 気兼ねなく移動できる個室の復活を、歓迎する人は多い。実際、筆者の周りの編集者も、個室を使いたいと話している。

「せっかく奮発してグリーン車をとっても、隣に苦手な雰囲気の人が来るなど、“座席ガチャ”に外れたときは損をした気持ちになる。個室ならそうした問題から解放されるので、精神的にも楽。グリーン車より5000〜1万円高い程度なら、使いますね」

 ところが、個室は1編成あたり「1人用」と「2人用」が各1室ずつ、合計2室のみの設置となる。おそらく需要は高そうであり、争奪戦が激しくなると、逆に予約の際にストレスにならないかと危惧してしまう。しかし、それでも「個室は何物にも代えがたい」と支持する声は大きいようだ。現代の新幹線に必要なのは、スピードよりもプライベート感なのかもしれない。

デイリー新潮編集部