熱戦が繰り広げられているが…

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 3月27日に開幕したプロ野球公式戦。パ・リーグは2強の一角・日本ハムが開幕3連敗。セ・リーグでは、ダークホースとみられたDeNAが4連敗、中日が5連敗とつまずいた。それでも、シーズンはまだ始まったばかり。過去には開幕連敗スタートから、終わってみれば優勝というチームは少なくない。【久保田龍雄/ライター】

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下剋上を実現

 開幕3連敗から優勝したのは、1990年以降では93年のヤクルト、2002年の巨人、09年の日本ハム、21年のヤクルト、昨年のソフトバンクと意外に多い。93年、球団初の連覇を狙ったヤクルトは、開幕の広島戦で2連敗したあと阪神にも敗れ、開幕3連敗となった。その後は10試合で3勝7敗と調子が上がらず、4月は7勝9敗と負け越した。それでも、5月19日の広島戦で17対16の“スーパー乱打戦”を制するなど6連勝を記録したのをきっかけに首位浮上。9月から10月にかけては8連勝、11連勝と2つの大型連勝で突っ走り、2年連続で“混セ”を制した。

熱戦が繰り広げられているが…

 02年の巨人は打線の不振から開幕の阪神戦で連敗。4月2日の中日戦にも敗れ、3連敗スタートとなった。翌3日に初勝利を挙げると、4月下旬から5月上旬にかけて8連勝するなど本来の力を発揮。終わってみれば2位・ヤクルトに11ゲーム差のぶっちぎりVを飾った。日本シリーズでも西武を4タテと圧倒的な強さを見せつけた。

 09年の日本ハムは立ち直りが早かった。4月3日の開幕戦、楽天戦でダルビッシュ有が初回に3点を失い、1対3で黒星スタート。続く2、3戦目も先発投手が打ち込まれ、3連敗となった。次のロッテ戦に連勝すると、以後11試合で9勝2敗と猛チャージ。5月は16勝8敗1分の快進撃を見せた。9月以降の失速も大勢に影響はなく、2位・楽天に5.5ゲーム差で2年ぶりVを実現している。

 21年のヤクルトは、開幕の阪神戦で3連敗スタート。それでも次の中日戦を2勝1分と負けなしで乗り切り、4月20日からは1分を挟んで6連勝と波に乗った。打線では4番・村上宗隆とオスナ、サンタナの新外国人コンビが得点源となり、リリーフ陣の踏ん張りが支えとなって、2年連続最下位から日本一の下剋上を実現した。

 昨年のソフトバンクは、開幕カードのロッテ戦で投手陣が3試合計20失点と崩れ、3連敗スタート。さらに4月26日から5月1日にかけて5連敗したが、5月2日のロッテ戦で9回2死無走者から川瀬晃の逆転サヨナラタイムリーが飛び出し、連敗を止めた。6月以降は交流戦Vを飾るなど好調を維持し、終盤は日本ハムとの熾烈な首位争いを制して2年連続Vを達成した。

4連敗でも可能性は十分

 今季、日本ハムは開幕3連敗後、細野晴希のノーヒットノーランをきっかけに勢いづいたように、3連敗であれば比較的挽回は可能という印象が強い。では、4連敗、5連敗となるとどうか。開幕4連敗から優勝したのが、1979年の広島だ。

 開幕戦で阪神に敗れたあと、大洋に3タテを喫し、4月は6勝9敗と負け越し。5月以降も一進一退が続き、33勝32敗7分の4位で前半戦を終えた。

 8月1日の巨人戦を境にチームは劇的に変わる。この日も6回を終わって1対7と敗色濃厚。7回には三村敏之、萩原康弘、衣笠祥雄の3人が死球を受け、肩を骨折した衣笠は1974年から続けていた連続試合フルイニング出場が日本記録目前で途切れてしまう。

 死球騒動の乱闘が収まると、赤ヘルナインは怒りを闘志に変え、この回一挙6得点で7対7の同点。最終的に8対8で引き分けたものの、勝てなかったことへの悔しさをあらわにした。ここから8月中旬に6連勝を記録するなど、チームは一丸となって首位浮上。さらに同27日から9連勝とスパートをかけ、4年ぶり2度目のVを実現した。

 今季、開幕4連敗後も元気のないDeNAだが、広島のようにチームを結束させる“燃える試合”があれば、一変する可能性は十分にある。

あきらめずに白星を積み重ねれば

 開幕5連敗から優勝という広島以上の快挙を成し遂げたのが、2008年の巨人だ。同年はクルーン、ラミレスらの大型補強でリーグ連覇を狙ったが、開幕カードでヤクルトに3連敗といきなりつまずいた。さらに4月1日から中日にも2連敗し、球団ワーストの開幕5連敗となった。

 同3日の中日戦で、4点ビハインドの7回に3本塁打で逆転し、ようやくシーズン初勝利を挙げたが、前半戦は勝率5割前後でもたつき、首位・阪神に最大9.5ゲーム差。優勝は絶望的とみられていた。それでも、7月に16勝8敗と躍進して上昇気流に乗ると、9月に怒涛の12連勝で阪神に追いつき、シーズン残り2試合の10月10日に“メーク・ミラクルV”を実現した。

 今季の中日も開幕5連敗から低迷が続いているが、浮上のきっかけをつかめば、18年前の巨人に続く可能性はゼロではない。そして、タイトルにもある“泥沼の6連敗”から頂点に立った例がある。

 巨人の5連敗を上回る開幕6連敗から球団初Vを実現したのが、前年まで6年連続最下位の大洋だ。エース・秋山登の負傷離脱があり、開幕の中日戦から6連敗。5月終了時は借金3で大阪(阪神)と同率の5位と低迷し、「今年も最下位か」とみられていた。

 それでも、6月1日の巨人戦で鈴木隆がリーグ新の8者連続三振を記録し、1対0で勝利したのをきっかけに流れは一変する。6月下旬から8連勝で首位戦線に浮上。その後は三原脩監督の“三原魔術”でロースコアの試合を勝ち抜き、球団創設11年目で初の日本一に上りつめた。

 クライマックスシリーズ(CS)導入後は、2022年の阪神のように開幕9連敗からCS進出を果たしたチームがある。開幕から連敗地獄にはまり込んでも、あきらめずにひとつずつ白星を積み重ねていけば、栄冠はけっして不可能ではない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部