世帯年収1,600万円の共働き夫婦、都心タワマンをフルローン購入。憧れの夜景に酔うも…住民説明会で発覚した〈想定外の問題〉
住宅購入が必ずしも安定した暮らしにつながるとは限りません。特に都心のタワーマンションでは、ローン返済に加え、管理費や修繕積立金といった継続的な負担が重くなりやすい傾向があります。購入時には見えにくいこれらの費用が、入居後の家計に影響を与えるケースも少なくありません。
「これで理想の暮らしが手に入る」フルローンで踏み切った決断
都内で働く会社員の健太さん(仮名・34歳)と妻の彩さん(仮名・32歳)は、世帯年収約1,600万円の共働き夫婦です。数年前、都心のタワーマンションをフルローンで購入しました。
「ずっとマンションを買うなら都心がいいと思っていました。資産価値も落ちにくいですし、何より生活が便利になると思って」
頭金はほとんど入れず、ローンを組む形で購入に踏み切りました。月々の返済は約28万円。ボーナス払いも併用していました。
「正直に言えば、少し背伸びしている感覚はありました。でも、今の収入があれば大丈夫だろうと考えていました」
引っ越し当初は、すべてが順調でした。高層階から見える夜景、駅直結の利便性、充実した共用施設。これまでの生活とはまったく違う環境に、夫婦とも満足していたといいます。
「仕事から帰ってきて、あの景色を見るだけで疲れが取れる気がしていました」
しかし、その暮らしの前提が揺らぎ始めたのは、入居から約1年後のことでした。マンションの住民説明会で、管理組合から今後の修繕計画について説明があったのです。
「そこで初めて、“こんなに上がるのか”と知りました」
提示されたのは、修繕積立金の段階的な値上げ案でした。現在の月2万円弱から、数年後には5万円近くまで引き上げる可能性があるという内容でした。
「正直、そこまで深く考えていませんでした。購入時には“多少は上がる”とは聞いていたんですが、具体的な金額まではイメージできていなくて」
さらに、管理費も人件費や光熱費の上昇を背景に見直しが検討されていました。
「ローン以外に、これだけ固定費が増えると、さすがに無視できないなと感じました」
国土交通省『マンション総合調査(令和3年度)』でも、修繕積立金が不足し、将来的に大幅な値上げが必要になるケースがあることが指摘されています。特に大規模マンションでは、共用部分の維持管理費が高額になりやすい傾向があります。
「それまでは“年収的に余裕がある”と思っていたんですが、固定費が積み上がると、話は別なんだと実感しました」
「想定していなかった出費」が家計を圧迫
説明会のあと、健太さんは改めて家計を見直しました。すると、これまで見過ごしていた支出が次々と浮かび上がってきたといいます。
「ローン返済に加えて、管理費と修繕積立金で月10万円近く。そこに駐車場代や光熱費も入れると、住居関連だけでかなりの金額になります」
高収入世帯であっても、固定費が増えれば可処分所得の圧迫は避けられません。
さらに、夫婦それぞれの働き方にも変化が出始めていました。彩さんは将来的に時短勤務を検討しており、収入が減る可能性もありました。
「今は何とか回っていますが、どちらかの収入が下がったら厳しくなると感じました」
それでも、すぐに住み替えるという選択は現実的ではありませんでした。
「売るにしてもタイミングがありますし、ローンも残っています。簡単に動ける話ではないんです」
ある夜、二人で今後の生活について話し合ったといいます。
「“このまま今の生活を維持できるのか”という話になりました。初めて、少し不安を感じました」
彩さんもこう話します。
「最初は“理想の暮らしを手に入れた”と思っていました。でも、その裏にある負担をきちんと理解できていなかったのかもしれません」
住宅購入は、一度決めると簡単にやり直せるものではありません。特にフルローンの場合、将来の収入や支出の変化を含めた長期的な視点が求められます。
「買うときは“いける”と思っても、その前提が変わることは普通にあるんですよね」
健太さんはそう振り返ります。
高収入であることと、将来にわたって余裕があることは、必ずしも同じではありません。今回の説明会で明らかになったのは、数字としての負担だけでなく、“見えていなかったリスク”でした。
購入時には見えにくかったコストが、後から現実として表れることもあります。夫婦は、その変化に直面しながら、今の住まいとどう向き合うかを考え始めています。
