イラクを率いるアーノルド監督。堅守速攻のスタイルでW杯での躍進を期す。(C)Getty Images

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 大陸間プレーオフの決勝で南米のボリビアを破り、北中米W杯の最後の切符を掴み取ったイラク代表。1986年メキシコ大会以来、実に40年ぶりとなる本大会の出場となる。

 イラク戦争で独裁政権が倒れるまで、政治に翻弄されてきた悲しい過去を持つが、育成年代から着実に強化を積み上げてきたことが、現在の繁栄に繋がっていることは間違いない。

 アジア枠が「8・5」まで拡大された今回の予選は、簡単な戦いではなかった。二次予選は6戦全勝で突破したが、三次予選は韓国、ヨルダンとの争いで一歩及ばず、四次予選に回る。

 二つに分かれたグループはそれぞれ、出場するサウジアラビアとカタールで集中開催という理不尽なレギュレーションで、イラクはサウジアラビア、インドネシアとの対戦に。サウジアラビアとはスコアレスドローで、インドネシアには1−0で勝利。ただ、同じく1勝1分けのサウジアラビアに得点数で下回り、悔しい結果に。

 アジア・プレーオフはUAEとホーム&アウェーで戦い、合計スコア3−2で大陸間プレーオフに進出。ボリビアとはメキシコのモンテレイで一発勝負となり、徹底した堅守とカウンターを駆使して、何とか勝利をモノにした。

 イラクを率いるオーストラリア人のグラハム・アーノルド監督は、オーストラリア代表でも前回の予選で大陸間プレーオフを経験。ペルーとのPK戦を制して予選突破を果たし、AFCの異なるチームで二大会連続、しかも南米勢を破る異色のキャリアを築き上げている。
 
 そのカタール大会では母国代表をベスト16へ導いた実績があり、イラク代表では短期間で規律と戦術的な整理をもたらした手腕はさすがだ。オーストラリア代表ではアンジェ・ポステコグルーの流れを汲み、ポゼッションスタイルを構築したが、イラクでは彼らの特長を活かした現実的な戦い方をチョイスしている。

 守備ブロックをコンパクトに保ちつつ、奪った後は素早く前線へ運ぶ、堅守速攻のスタイルだ。本大会のグループステージの相手がフランス、セネガル、ノルウェーと明らかな格上ばかりであることを考えても、その選択は正しいだろう。

 もちろん、ただ闇雲にボールを蹴るということではない。左サイドバックのメルカス・ドスキ(ヴィクトリア・プルゼニ)や左センターバックのアカム・ハシェム(アル・サウラー)を起点に、デンマークでプレーするボランチのアイマール・シェール(サルプルボルグ)やスウェーデン生まれのアミール・アル・アマリ(クラコヴィア)を経由して、サイドアタッカーのユセフ・アミン(AEKラナルカ)が積極的に仕掛けてクロスに持ち込むというパターンもある。

 ボリビア戦では出番がなかったが、中盤からクリエイティブにチャンスを作るジダン・イクバル(ユトレヒト)は世界の舞台で、勝利の鍵を握る存在だ。

 良い形でボールを奪うことができれば、イラクが誇る大型2トップがタイミング良く裏抜けして、相手GKと1対1に。アリ・アル=ハマディ(ルートン)はイングランドでフィニッシュワークを磨いており、力強くシンプルなポストプレーからゴールに向かうアタッカーだ。チームリーダーのアイメン・フセイン(アル・カルマ)は前線のターゲットマンでありながら、アクセントになる引き出しもある。
 
 4−4−2をベースとした守備を支えるのは、ハシェムとセンターバックのコンビを組むザイド・タシーン(パフタコール)だ。ボリビア戦でも多くの局面でゴール前を死守して、良い流れを引き寄せた。

 自陣での粘り強いディフェンスはイラクの強みだが、フランスのキリアン・エムバペ、セネガルのサディオ・マネ、ノルウェーのアーリング・ハーランドといったワールドクラスのFWが相手となる本大会で、無失点で乗り切ることは難しい。いかに守備のダメージを最小限に抑えて、少ないチャンスを仕留めるかがサプライズのカギになりそうだ。
 
 若手の注目株として取り上げたいのが、大型ウイングのマルコ・ファルジ(ヴェネツィア)。ノルウェー生まれのドリブラーで、恵まれたサイズからは想像しにくい柔軟なボールコントロールと緩急織り交ぜた仕掛けから、鋭いフィニッシュに持ち込める。

 ノルウェーとの開幕戦はベンチスタートかもしれないが、ゴールに直結する仕事ができれば、大きな話題を集めるだろう。

文●河治良幸

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