初代「リーフ」登場から15年以上が経過し、「ニッポンのEV」も多種多様なラインナップが揃った!

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メーカーの垣根を超えた「合同EV試乗会」が実施された理由とは

 世界初の量産BEV(バッテリーEV:電気自動車)である日産「リーフ」(初代)の登場から、すでに15年以上が経過しました。

 現在では国内外の様々な自動車メーカーから、多種多様なBEVが登場しています。

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 数年前は「BEVこそがカーボンニュートラル実現の最適解」と新聞・経済紙は騒ぎ立て、多くのメーカーはBEVシフトを声高らかに宣言しましたが、現実はそう甘くなく、直近ではメルセデス・ベンツ(2030年全車BEV化目標撤回)、ホンダ(ZEROサルーン/SUV・アフィーラ発売中止)などが、戦略の大幅見直しが行なわれています。

 そんな発表に、あれだけ「EV! イーブイ!」と大騒ぎしていた新聞・経済紙は「各自動車メーカー、BEV鈍化で苦戦」と手のひら返し。「あおった君たちも戦犯だ」と筆者(山本シンヤ)はひとり憤っているところでした。

 そんななか、メーカーの垣根を超えた「合同EV試乗会」が、日産自動車のテストコース「グランドライブ」(神奈川県横須賀市)で開催されました。

 ところで、“各自動車メーカーがBEV鈍化で苦戦”などといわれながらも、次世代に向けた“種まき”は必要です。

 実際、国産各メーカーからも、BEV/PHEV(プラグインハイブリッド車)といった電動車のラインアップは着実に増えています。

 ただ、メーカーは慈善事業ではないので、売れなければ次のステップには進めません。

 その悩みはどの自動車メーカーも同じで、「競争の前に協調でしょ」という日産の声掛けに、スズキ、ホンダ、マツダ、三菱、レクサスが賛同。今回のイベント開催に至ったそうです。

 今回出展されたのは、スズキ「eビターラ」、ホンダ「N-ONE e:」、マツダ「MX30 Rotary-EV」「CX-60 PHEV」、三菱「アウトランダーPHEV」、レクサス「RZ550e“F SPORT”」、日産「リーフ」「サクラ」「アリア」(アリアは展示のみ)でした。

 ちなみにトヨタとスバルが入っていないのは、「試乗会を行なったばかり(スバル)」、「試乗会を控えている(トヨタ)」といった事情だと思われます。

 一般的には「BEVはつまらない」「コモディティ化の象徴だ」などといわれがちですが、これまで筆者が紹介してきた各モデルの試乗レポート記事などを見ていただければ、そんな事はない事が解っていただけるはずです。

 その理由はいくつかあります。

 内燃機関は、圧縮比やボア×ストロークなどの基本設計の段階で特性が決まってしまいますが、モーターは制御技術を活かすことで自由自在な味付けが可能です。

 つまり、ハードを変えずに「エコ」にも「スポーツ」にも化ける事ができる、というわけです。

 これを活かせば、各メーカーが長きに渡り積み上げてきた「走りの味」や「独自の個性」を、内燃機関よりも緻密かつ忠実に反映させる事が可能となります。

 今回、合同試乗会に出展されたモデルのほとんどが、走りの特性を変更可能な「ドライブモード」を採用していますが、各モードの差が内燃機関モデルよりも大きいのは、そういう事です。

 さらにBEVは、クルマ自体の概念を変える要素も持っています。

 例えば、モーターは内燃機関よりも搭載位置の自由度が高く、極論をいえばどこにでも搭載可能となります。

 今回のモデルたちはまだそのレベルではありませんが、ステップ3と呼ばれるレクサス「LF-ZC」(2027年半ばに登場予定)やホンダ「ZEROサルーン」(こちらは販売中止ですが)は、内燃機関車では実現不可能なパッケージも実現しています。

 4WD化する際も、ガソリン車のように前後の車輪を機械的に繋ぐプロペラシャフトが不要で、前後のモーターを独立制御すればOKです。

 その制御もより緻密、より理想的に行なう事が可能で、走りのキャラクターも際立ちます。

 例えば、アウトランダーPHEVの「S-AWC(Super All Wheel Control:車両運動統合制御システム)」、レクサスRZの「DIRECT4(モーター駆動式4WD制御技術)」は、まるで運転が上手くなったかのような「意のままの走り」や、駆動方式の概念を超える「驚きの走り」を、いつも、誰でも、どこでも体感できます。

 つまり、BEVはエコなだけでなく「Fun」でもあります。

気になるのは「現段階でBEVを選ぶべき」なのかどうか

 ただ、電動車ならではの制御を活かすためには、ハードも重要です。

 理想はリーフが採用しているBEV専用プラットフォームですが、現時点ではコスト的な兼ね合いもあり内燃機関モデルと共用するケースがほとんどとなっています。

 ただし、現在各メーカーが開発を進める最新のプラットフォームのほとんどは、BEVも視野に入れた構造(マルチパスウェイプラットフォーム)になっています。

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 BEVのエネルギー源となるバッテリーは重いため、運動性能に不利に感じますが、床下に搭載されるため低重心化が可能なのに加えて、重量物が車両中央に集まるため重量配分の適正化の観点から、内燃機関モデルより有利に働く点も多いです。

 今回のモデルはN-ONE:e以外は全高が高めのモデルですが、その走りはそれを感じさせないモノばかりです。

 バッテリー容量は、用途やキャラクターによってまちまちです。大きく分けると近距離主体のサクラやN-ONE:e、中距離のeビターラ、長距離のリーフ、レクサスRZといった感じです。

 ただ、どのモデルも闇雲にバッテリーを搭載しているわけではなく、他の部分、例えば空力や走行抵抗低減、緻密な電力マネージメントなどを含めた総合力で航続距離を実現しているのです。

 このように、BEVを技術的な側面で見ると、内燃機関にはない強みをたくさん持っています。

 ただ、多くの人が知りたいのは、「現時点で選ぶ価値があるのか?」という事でしょう。

 数年前のBEVと比べると航続距離はアップし、インフラもそれなりに充実していますが、それでも全てのユーザーに対して「YES」とは言えないのも事実です。

 ただ、下記のような考えを持っていれば、選ぶ価値はあると筆者は考えます。

 まず最も大事なのは「BEVを買う」ではなく、「欲しいクルマがBEVだった」と言うようなクルマを見つけられる事でしょう。

 クルマ選びで最も重要な事は、「ウィークポイントを超える魅力があるのか」です。デザイン、パフォーマンス、先進性など、要素は人それぞれだと思いますが、その気持ちがあることが大事です。

 より具体的、より現実的な話になると、以下のようなチェックポイントが挙げられます。

 自分の行動範囲や移動パターンと航続距離に大きなズレがないこと、自宅に充電器を設置出来る(できなければ、近くに充電スポットがある)こと、余裕を持って計画的な移動が出来ること、充電待ちでもイライラしないこと、そして「内燃機関と全く同じではない」を理解する広い心を持つことでしょう。

 もう少しハードルを下げるなら、多くの人にとっての最適解はPHEVかもしれません。

 日常は「ほぼBEV」として使える上に、長距離はHEVと一緒なので充電インフラの心配いらずという、現時点では最も万能な電動車と言えます。

 ただ、このような話をして必ず出てくる事は、「価格が高すぎて買えない」だと思います。

 BEVはバッテリーの値段が大きく影響するため、同クラスの内燃機関モデルと比べると高価なのは事実です。もちろん補助金を活用すれば逆転するケースもあります。

 それに対する筆者の考えは「買えないなら無理に買う必要はない」です。

 現在、日本ではBEV以外にも内燃機関(ガソリン/ディーゼル)、HEV(ハイブリッド)、PHEV、FCEV(燃料電池車)と選択肢は豊富です。

 今後BEVの比率は上がるでしょうが、直近の10年は複数のパワートレインが混在します。

 つまり、その中から自分のライフスタイルに合う最適なモノを選べば良いだけの話です。

 ただ、電動化は皆さんが想像している以上に、クルマをより楽しく、面白くする要素を持っている事は覚えておいてほしいです。

 古いクルマ好きは電動化を否定する人が多いように思えますが、まずは“食わず嫌い”にならずに試してみてほしいです。