「私、怖いですか?」ゴミ屋敷に住む女性の周辺で6人が“不審死”…『鳥取連続不審死事件』犯人・上田美由紀が刑務所で見せた素顔〉から続く

 凶悪な犯罪に手を染めた犯罪者たちは逮捕後、何を思いながら日々を過ごしているのか。

【写真】ゴミ屋敷に住みながらホステスをしていた上田美由紀をじっくり見る

 ノンフィクションライター・片岡健さんの新著『実録 死刑囚26人の素顔』(宝島社)から、6人の男性が不審死を遂げた「鳥取連続不審死事件」で逮捕された上田美由紀のケースをお届け。犯行当時、ゴミ屋敷に住んでいながら男性たちに取り入った上田の手口などを紹介する。


上田が収容されていた松江刑務所 ©片岡健

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上田が男性たちに取り入った「手口」

 取材を始めた当初に印象的だったのは、美由紀が人をよく褒めていたことだ。

 たとえば、捜査段階と裁判員裁判の国選弁護人を務めた鳥取の弁護士たちについて、美由紀は「逮捕された時から何百回も面会に来てくれ、今も感謝しています」と言ったり、松江刑務所の刑務官たちについて、「収容者一人一人の話をしっかり聞いて対応してくれるんです」と言ったりした。

 さらに美由紀は私のこともよく持ち上げた。

 私は最初に手紙で美由紀に取材を申し込んだ際、過去に雑誌に書いた事件関係の記事をコピーし、同封していたのだが、美由紀は手紙に「片岡さんの記事は何度読んでも、心にどっしりきます」と書いてきたり、面会中に「片岡さんと出会えて本当によかったです」と何度も口にしたりした。

 ここまで過剰な褒め言葉は噓くさくもあるが、褒められて悪い気はしないものだ。不審死した男性たちに対しても美由紀はこうやって心に入り込んだのだろうと思った。

 裁判では、美由紀は、交際相手の男・安東儀導(逮捕時46)と共謀して取り込み詐欺を繰り返したほか、2人の男性を殺害したと認定されていた。

 1人目の被害者は、元交際相手のトラック運転手の矢部和実さん(死亡時47)。美由紀は2009年4月4日、矢部さんから交際中に生じた借金270万円の返済を迫られたため、睡眠薬を飲ませ、海の中に引きずり込んで殺害したとされた。

 2人目の被害者は、電器店経営者の圓山秀樹さん(死亡時57)。美由紀は圓山さんから家電6点の代金約53万円の支払いを迫られたため、同年10月6日、やはり睡眠薬を飲ませ、川の浅瀬に引き入れて溺死させたとされた。

「私は誰も殺していない」と主張するも……

 こうした裁判の認定について、美由紀は「確かに詐欺はしました。それは反省しています」と言いつつ、「私は誰も殺していません」と言い切った。

――矢部さんには、けっこうな金額のお金を借りていたようですが?

「お金を借りていたんじゃありません。矢部さんは私に子供が5人いたので生活費を出してくれていたんです。私もそのぶん、矢部さんの家で洗濯や料理をしていました」

――圓山さんにも家電の代金の支払いは求められていなかったんですか?

「圓山さんには、受け取った家電の代金のうち40万円くらいは支払っていました。そして残りのお金も少しずつ支払うということで、納得してもらっていたんです」

殺人への反省意識は希薄だった

 美由紀は真顔でこのように主張したが、裁判資料をもとに検証すると全部噓だった。

 まず、矢部さんについては、亡くなる1カ月ほど前、美由紀との間で270万円の借用証書を作成していた。この借用証書は連帯保証人として美由紀の当時の交際相手の安東が設定されており、矢部さんが美由紀に対し、貸した金の返済を強く求めていたのは明らかだ。

 しかし、美由紀から矢部さんに金の返済はなく、借用証書の返済期限を4日過ぎた日、矢部さんは失踪し、その7日後に海で溺死体となって見つかったのだ。

 一方、圓山さんも亡くなる少し前、内妻の女性に「家電の代金を支払わない女性客がいる」とこぼしていた。失踪した日は朝、美由紀から電話をうけると、内妻の女性に「集金に行く」と言い残し、朝食も食べずに慌てた様子で外出したという。そして帰宅せず、翌日、川の浅瀬で溺死しているのが見つかったのだ。

 しかも矢部さん、圓山さん共に失踪当日、自分の車で美由紀と一緒に現場の海や川に向かっていたことがコンビニの防犯カメラ映像やカーナビの記録から判明していた。さらに2人の遺体からは睡眠薬が検出されたうえ、その成分は美由紀が事件前に知人の男性から入手した睡眠薬の成分と一致していた。

 美由紀が矢部さんと圓山さんに睡眠薬を飲ませ、海や川に引きずり込んで殺害したことは証拠上、動かし難かった。それでも美由紀は面会中、2人の死を本当に悲しんでいるような表情でこう言った。

「あの2人は私に対し、お金の返済を求めてくるような人たちではありませんでした。あの人たちが私にお金を求めていたように言われることも悔しくて……」

 美由紀からは、人の生命を奪ったことへの罪の意識は感じられなかった。

(片岡 健/Webオリジナル(外部転載))