《EV投資失敗で赤字転落》市場の変化に鈍感になったホンダ…2023年が「脱エンジン戦略」を見直す最後のチャンスだった
ホンダの競争力は低下している
ホンダとソニーグループ(ソニー)は3月下旬、共同出資会社によるEV「AFEELA(アフィーラ)1」の開発・発売中止を発表した。
ホンダは野心的な「脱エンジン戦略」を掲げたものの、欧米でのEV需要減退や開発コスト増が響き、2026年3月期には上場来初となる最終赤字に転落する見通しだ。
背景にあるのは、安さと早さを武器に世界市場を席巻するBYDやシャオミら中国勢の台頭だ。かつて日本経済を牽引したホンダとソニーは、激変する市場のスピードに追いつけていない。
前編記事〈ホンダ・ソニーの新 EV「開発中止」でお粗末な結果に…中国EV勢の安さと早さには敵わなかった〉で詳しく解説している。
今回のソニーとホンダのEV開発の中止は、わが国の産業界にとってもマイナスの影響が大きい。
自動車産業は輸出をけん引し、わが国の景気回復を支えた最重要産業だ。今回のEV開発中止によって、業績が厳しい日産に続いて、ホンダまでも競争力の低下に直面しつつあることが明らかになった。
それは、わが国自動車産業の競争力低下につながる可能性がある。
目先の収益を確保するため、ホンダは米国で販売奨励金を積み増さざるを得なくなる可能性が高い。一方、EV事業で協業していた、サプライヤー各社への補償費用はかさむだろう。
2月まで、同社の中国販売は前年割れが25カ月続いた。収益と財務の悪化懸念は高まり、3月、大手の信用格付け業者がホンダを格下げした。ホンダが追加の構造改革(リストラ)を発表する可能性もありそうだ。
日本の自動車産業に広く打撃か
当面、ホンダはエンジン車事業の再建などの事業戦略を最優先するだろう。
それは、経営再建中の日産にも影響を与える可能性がある。現在、日産の収益力の低下は深刻だ。ホンダは、日産と車載ソフトウェアの共通化、日産米国工場での共同生産、HV(ハイブリッド)車用エンジン供給を協議、検討してきた。
特に、米国で人気のピックアップトラックのHV化にホンダの技術が必要との見方は多い。その状況下で、ホンダが自社の業績立て直しに集中すると、日産との協業交渉はさらに遅れるだろう。
イラン戦争によって、世界的に物価上昇と景気減速の懸念は高まっている。
米国での需要減少、中国勢との価格競争に対応するため、ホンダも日産もコストをカットしつつ収益力の回復に取り組む必要がある。それは、追加の工場閉鎖や人員の削減など、かなりの痛みを伴うものになるかもしれない。
完成車メーカーをトップに、工作機械、電子部品、素材とすそ野の広い産業構造を形成する自動車関連分野への打撃が懸念される。
2023年がラストチャンスだった
現在、世界経済の環境変化は日増しに加速しており、過去の経験則が当てはまらなくなっている。
ホンダが、2040年に脱エンジンを目指すと発表した当時、確かに世界的にEVシフトは加速していた。しかし、その後、EV重視よりもエンジン車、HV、PHVを含む全方位型戦略の優位性が明らかになった。
そうした変化を感じて、米欧の自動車メーカーはEVシフトの修正を急いだ。2020年9月、GMはホンダとの提携を発表したが、その後の環境変化により、2023年10月、GMはホンダとの廉価版EV共同開発計画を撤回した。
そのタイミングでホンダが脱エンジン戦略を修正できていたら、事態はここまで悪化しなかったとの指摘もある。提携企業の事業戦略の変化に合わせ、自社の事業運営体制を虚心坦懐に見直す必要性は高かった。
わが国を代表する先端企業のソニーでさえ、世界のIT先端有力企業と本格的に競合することは難しいようだ。
ソニーは、プレイステーションなどのゲーム、映画、音楽などコンテンツ分野でのポートフォリオを拡充した。そのため、テレビ事業(ブラビア)を中国家電大手TCLとの合弁会社に移管した。この決定を機に、ソニーはイメージセンサ―など微細なモノづくりの力を磨き、コンテンツ分野を拡充するスピードを上げようとするだろう。
自動車や電機の分野で、わが国の企業が意思決定のスピードを引き上げることは急務といえる。中長期的なAI関連分野の成長の加速、米中対立先鋭化リスク、中東情勢など、世界経済の先行きは一段と見通しづらくなっている。その中で、中長期的に成長期待の高い分野で、しっかりとした事業運営体制を迅速に構築する必要性が高まっている。
ソニーとホンダの教訓を活かし、そうした取り組みを進める日本企業の増加は、わが国経済の回復に必要だ。
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